注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。
今回の“テレビ屋”は、今年1月にスタートしたフジテレビ系バラエティ番組『アオハルTV』(毎週日曜21:00~)総合演出のマイアミ啓太氏で、『人生のパイセンTV』(15~17年)を担当していた当時以来、当連載史上初となる2回目の登場。それから約3年が経ち、“大人”になって日曜ゴールデンタイムという激戦区に挑んでいる――。
■激戦区に置いてくれた編成に感謝
――当連載に前回登場したテレビ朝日の貴島彩理さんが「『人生のパイセンTV』があまりに好きすぎて、フジテレビのマイアミ啓太さんを勝手に尊敬しています(笑)。あの番組は、攻めててぶっ飛んでるし、本当にいろいろ面白かったんですけど、マイアミさんやスタッフさんが一番楽しそうに作っているのが素敵だなぁと思って。取材対象者のことも、イジってるけど全力で愛している感じがとても好きでした」とお話ししていました。
楽しさが伝わればいいなと思って作っていた番組なので、うれしいですね。僕がフジテレビに憧れたのって、スタッフルームが出てきたりタレントクロークで「やべっち寿司」(『めちゃ×2イケてるッ!』)があったり、テレビの裏側が分かって、スタッフが楽しそうに“大人の文化祭”をやってんだろうなぁっていうのが好きだったんですよ。僕もそういうのをやりたいという思いがあったんです。貴島さんは今年の『新春テレビ放談』(NHK)でも、僕の名前が出たときに反応してくださって、うれしかったです。
――『アオハルTV』がスタートしましたが、日曜ゴールデンという放送枠を聞いたときはいかがでしたか?
『人生のパイセンTV』も日曜日だったんですけど、次の日が月曜日で憂鬱に思ってる方に笑ってもらえればという思いで作っていたんです。今回も日曜日の夜で、しかも家族がそろってテレビを見られる時間にやらせてもらえるというのは、うれしかったですね。
――ただ、『行列のできる法律相談所』『日曜劇場』『NHKスペシャル』と強力番組が並ぶ激戦区ですから、プレッシャーもあるのではないでしょうか?
そりゃものすごくありますよ! 日曜9時ってなかなか視聴率が残っていない枠じゃないですか。そこで、数字の取れそうな番組をやるというわけでもなく、「こいつにやらせてみよう」とこの番組を置いてくれたフジテレビの編成がすごいと思いますし、感謝しています。藤井健太郎さん(TBS『水曜日のダウンタウン』演出など)も、『クイズ☆タレント名鑑』を日曜ゴールデンに放送したり、『芸人キャノンボール』を元日のゴールデンに放送したりしたときに、これを置いてくれる編成がすごいとおっしゃってましたけど、僕も同じ思いです。フジテレビが変わろうとしてるんだという思いを感じていて、その期待に応えたいという気持ちがすごくありますね。営業の方など、部署を超えていろんな方から「全力でバックアップするから頑張れ」と声をかけていただくので、会社のために頑張りたいという思いしかないです。
――齋藤翼編成部長に取材した際、今回の編成についてマイアミさんとじっくり話し合ったと伺いました。
この時代にこういう“総合バラエティ”をやるというのは、編成部長にとって、正直なかなか難しい挑戦だと思うんです。でも、もしこれが当たったら奇跡が起きるんじゃないかというみんなの思いをすごく感じるんですよね。そういう一致団結感が、今フジテレビの社内にあるんです。『パイセンTV』のときは僕も生意気で反抗ばかりしてたんですが(笑)、今では皆さんからLINEでメッセージをいただいたり、飲みに誘ってくれたりするので、すごく気づきが多くて。昔の自分は、クソガキだったなって思います(笑)
■大人が青春する楽しさを教えたい…ヒロミの思い
――レギュラーが始まって、ヒロミさんからはアドバイスをもらいましたか?
収録の前後、ヒロミさんとはいっぱい話をさせてもらっています! ヒロミさんがこの番組で伝えたいのは、「青春というのは若い人のだけのものじゃない。大人が青春する楽しさを教えたいんだ」ということなんです。初回放送でも、朝から深夜まで10時間以上かけて洞窟ロケに行っていただいて、しんどい中でも笑顔でヒロミさんから「アオハルしてるね」という言葉が出た瞬間がすごく輝いて見えたので、これをどんどん映し出して伝えていきたいですね。
――2回目の収録で、ヒロミさんが締めコメントで「青春は若い人のものだけじゃない」と話していましたが、台本を見ると書いていない言葉だったので驚きました。
そうなんです。まさにヒロミさんの思いなんですよ。ヒロミさんは、一般の人が汗をかいてるから、自分も汗をかくし、他の演者も汗をかくし、スタッフも汗をかいて番組のみんなが何かに熱中していることが一番大事だと常におっしゃっているので、そこは遠慮せずに演者の皆さんにもお願いすることはお願いしていきたいなと思います。
――『とんねるずのみなさんのおかげでした』で師匠だった演出のマッコイ斉藤さんからは、何か言われましたか?
「いろんな人がいろんなことを言ってくると思うけど、おまえのやりたいことをちゃんとやれ。総合演出は常に孤独だから、曲げるなよ」とメッセージをいただきました。単発の一発目のときは「おまえ何置きにいってるんだボケ!」って怒られましたけど、これから何とかヒロミさんにもマッコイさんにも納得してもらえる内容にしていきたいです。