注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。

今回の"テレビ屋"は、テレビ朝日『池上彰のニュースそうだったのか!!』のゼネラルプロデューサー(GP)・演出を担当する保坂広司氏。ジャーナリストの池上彰氏をメインに据えた番組は各局で放送されているが、NHK退局後に先んじて起用したテレビ朝日の強みは、報道セクションではなく、バラエティ班が制作していることだという――。


保坂広司
1971年生まれ、熊本県出身。番組制作会社、フリーをへて、2007年テレビ朝日入社。『銭形金太郎』『ナニコレ珍百景』『日曜×芸人』などを手がけ、現在は『池上彰のニュースそうだったのか!!』『くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館』のゼネラルプロデューサー・演出を担当。

――当連載に前回登場したフジテレビの武内英樹さんが、『池上彰のニュースそうだったのか!!』が大好きだそうで、「タブーとされているような宗教的・民族的なテーマも取り上げて、結構ギリギリのところまで攻めてる感じが良いなと思っているので、そこに踏み込んでいくバランス感覚のスタンスを聞いてみたい」とおっしゃっていました。

僕の知ってる限りだと、他局さんの池上さんの番組は報道のチームが作ってるんですよね。一方、僕らはバラエティ班なので、視聴者の皆さんが面白いだろうと思うことをエンタテインメントとして作ってるんです。もちろん報道の人にチェックなりご協力いただいてますけど、タブーというのは普通の番組と一緒で、見てる人が不快になるかどうか、言い過ぎなのかどうかという部分を重視している感じです。

――取り上げるネタはどのような基準で選定してるんですか?

とにかく視聴者の皆さんが知りたいこと、池上さんが伝えたいこと、教えたいことですね。例えば、森友学園問題はワイドショーが散々やっているけど、みんな興味があることだと思うので、ワイドショーとは違う池上さんならではの切り口ができるんじゃないかと考えるんです。

また、注目を集めるニュースっていうのは暗いものが多いんです。それを家族みんなでご飯を食べている時間帯にやるのはどうなんだろうというのがあるので、殺人事件が話題になっている時に、悲壮感を避けて見せるには、罪を犯した人が逮捕されたらどうなるんだとか、北朝鮮がミサイルを発射したら、そもそも北朝鮮はなぜそのような国になってしまったのか、ミサイルとは何なのか、など、ニュースから実はみんなが深く理解できていない部分を抽出するんです。その上で、面白いところを目いっぱい伸ばすというバラエティの手法で作っていくので、見てくれる人が楽しみながらちょっと得した気分になれるというのを意識しています。そういう考えに基づいて取り上げるネタを決めて、池上さんと一緒に台本を作成していきます。

――あらためて、池上さんの魅力や支持される理由はどういったところにあると思いますか?

偉ぶっていないところですね。僕は、芸能人に対してはある程度構える部分があるんですけど、池上さんにはそういうことがないんです。もともとNHKの記者さんだったというのもありますけど、同じ制作者としてしゃべっているのかもしれないですね。だから、僕らのチームが、池上さんに変な意味で馴れ馴れしいと思います(笑)。偉い人が、僕らが池上さんとしゃべっているのを見たら、「お前ら失礼だな!」って思うんじゃないかな(笑)

――同志というか、信頼関係があるんですね。

池上さんはいつも全国や世界を飛び回てるんで、番組収録の時も出先から大きな荷物を持ってスタジオに来て、終わるとまたどこかへ行ってしまうんです。でも、僕はその荷物を持たないですからね(笑)。そんな気さくさ、親しみやすさが、画面を通してにじみ出てるのではないでしょうか。