テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第74回は、7日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『新・日本男児と中居』(毎週金曜24:30~ ※一部地域除く)をピックアップする。

同番組は中居正広が「新しい常識で生きる男たち」=“新・日本男児”の人柄や生き方に迫るトークバラエティであり、令和になったばかりの5月3日にスタート。「中居が典型的な“旧・日本男児”の立場からトークを掘り下げていく」という構成で早くも話題を集めている。

「毎週ぶっ飛んだ一般人をフィーチャーする」という意味では、『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)を思い起こさせるが、どんな違いがあるのか? 多方面からとらえていきたい。


■穏やかに拒絶反応を示す中居

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『新・日本男児と中居』を放送する日本テレビ

番組は、「旧来の価値観が崩壊した現代、新常識で生きる男たち、通称・新・日本男児が急増している。そこで、彼らの新価値観により、頭お固めちょい古男児・中居氏らをアップデート」というコンセプトの説明ナレーションからスタート。

続いて、「現代の新カリスマ・菅田将暉に人生を捧げたら年収100万円を超した男(将暉)」「新カリスマ信者から見て、旧カリスマ・中居氏ってどう? その意外な評価とは? あなたの価値観もう一度見直して見ませんか?」と今回のゲストを紹介する映像が流された。番組名にもある通り、やはり“中居正広”というフィルターが肝である様子が伝わってくる。

スタジオに将暉が登場すると、中居は「大丈夫かな30分(持つのかな)…もうそっくりさんみたいだね。そんなになっちゃうの? 菅田くんみたいだね」と穏やかに拒絶反応を示した。しかし、サングラス姿の将暉は「たまに言われます。似てるって」「これ普通に素でやってます」と薄ら笑いをうかべるのみ。特に序盤は“新・日本男児”を際立たせるために、“旧・日本男児”との噛み合わないやり取りが重要なのだろう。

ここから将暉のエピソードラッシュ。「菅田将暉の名言を人生の道標にしている」「朝から菅田将暉と同じサングラスをかけている」「菅田系洋服に100万円以上かけた」「菅田将暉に心酔する男たちを“スダラー”と呼ぶが、なかでも将暉は“キング・オブ・スダラー”と呼ばれている」「SNSに毎日20回以上写真をアップしている」「アンチも含めて1年でフォロワーが1万人突破」「菅田将暉的写真集を自費出版した」。

どれも「ファンならありえるかも」と感じるレベルでインパクトは感じず…しかし、将暉の職業がホストと分かるとムード一変。「仕事に菅田名言を採り入れることで指名数ナンバーワンになった」ことが紹介され、さらに“旧・日本男児型ホスト”として城咲仁の映像が流されて、笑いを誘った。

オブジェにまたがり大声で盛り上げ、酒を飲みまくる城咲に対して、「菅田さんがお酒弱いから」と水を飲む将暉。ビッグマウスで女性を魅了した城咲に対して、カメラが拾えないほどの小声で接客する将暉。1晩100万円使う女性客が珍しくなかった旧世代と比べて、新世代は1万円程度という。しかし、将暉の年間指名数は1,500本以上であり、「将暉を指名するようになってから菅田将暉を意識するようになった」と話す女性もいた。

■「新番組に賭ける」中居の熱い思い

ただ、どんなに将暉が面白いエピソードを持ち、スタッフがそれを生かすための構成を立てても、最も際立っていたのは、ワンサイズ大きな笑いに変える中居のトーク力だった。

中居「ファンの人から悪口言われるの?」
将暉「『勝手に名乗ってんじゃねえブス』とか、『キモイからやめろ』とか言われる」
中居「それ聞いてどう思う?」
将暉「『だよね』と思う」

将暉「LINEのやりとりを1日100回、1000人以上している」
中居「僕、今日誰とも連絡取らないで終わります。携帯見ないもん。たぶん今週ないと思う。これが(スダラーならぬ)ナカラー(笑)」

将暉「中高のときも友だちそんなにいないし、彼女もいないし、コミュニケーションが下手でした。『菅田将暉さんに会いに行きたい』と思ったけどファンの98%が女の子で、むちゃくちゃ無理して会いに行ったら人生が広がった。それがなかったらいまだに女性とこういう…」
中居「(食い気味に)にしても、仕事がホストってすごいね」

中居「人見知りを脱却するために…ザキヤマ(山崎弘也)になったらもっと克服できそうな気がするんだけど?」
将暉「そもそも憧れてないので」

中居「将暉くんから見て、僕のことはどう思いますか?」
将暉「小さいころから見ている人で、見る番組ぜんぶ面白いので会いたいなと思う反面、緊張がすごくてゲロを吐きそうになって…」
中居「じゃあ、俺の写真集(も買ってよ)……あっ、オレ写真集ないや」

中居の反応は、どの番組よりも早く的確だった。かねて中居は「収録前に台本を読んで頭の中でシミュレーションする」と公言しているだけに、これほどの高打率を見ると、新番組に賭ける熱い思いを感じてしまう。

そもそもこの番組のトーク相手は、百戦錬磨の中居ですら組み立てが浮かばないほどの未知数な存在。MCを極めつつある中居にとっても、大きなチャレンジの番組であり、だからこそ今までの真価が問われることを理解した上で、十分な準備をして臨んでいるのではないか。

■『激レアさん。』との2つの違い

冒頭に挙げた『激レアさんを連れてきた。』との違いは、2点が考えられる。

1つ目は、視聴者が理解できるかできないか。「ぶっ飛んだ一般人をフィーチャーする」「突き抜けたおバカぶりが笑える」ところは同じだが、『激レアさんを連れてきた。』は「予想できないが理解できるエピソード」、『新・日本男児と中居』は「予想できるが理解できない生き方」をフィーチャーしている。将暉のような違和感だらけの生き方を前面に押し出した番組なのだ。

ここまで登場した“新・日本男児”を振り返ってみても、「ネットで嫁を募集し、初対面で結婚した男」「体内にICチップを埋め込むサイボーグ願望男」「食費150万!? 超グルメ男の新型・注文法?」「大手企業を退職し自由なサーファー生活男児」「月収150万円!? 着た服をライブ配信で売る男」「菅田将暉に人生を捧げ月収100万円を稼ぐ男」。さらに次回は「食事の時間は無駄! 1食15秒で済ませる男」をフィーチャーするという。どれも「違和感だらけで理解できない」と感じるのではないか。

2つ目の違いは、進行役の立ち位置。『激レアさんを連れてきた。』の弘中綾香アナは、ナビゲーターとして“激レアさん”のエピソードをひたすら紹介していくが、『新・日本男児と中居』の中居は“新・日本男児”の生き方を掘り下げながら“旧・日本男児”の生き方をオーバーラップさせていく。つまり、“旧・日本男児”の筆頭である“中居正広イジリ”を使うことで、生き方の幅を見せているのだ。

最後にもう1つ特筆すべきは、スタジオゲストの顔ぶれ。これまで貴乃花光司、前田裕二、高橋大輔、市川右團次、松丸亮吾、明石ガクト、吉田鋼太郎、成田緑夢が出演したが、「彼らも“新・日本男児”ではないか?」と思わせるほどのパンチがある。

中居としては、「スタジオゲストもイジリたい」と思うほどの顔ぶれだが、あくまでイジるべきメインは“新・日本男児”であり、準メインは中居正広のため、MCとしてのさじかげんが難しい。

そう、この番組は、MCスキルという観点から見ても、“中居正広イジリ”を追求しているのだ。

■次の“贔屓”は…“後発キャスター・中居”に注目! 『中居正広のニュースな会』

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『中居正広のニュースな会』を放送するテレビ朝日

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、15日に放送されるテレビ朝日系ニュースバラエティ番組『中居正広のニュースな会』(毎週土曜12:00~ ※一部地域除く)。

今回ピックアップした『新・日本男児と中居』とともに今春スタートした中居正広が司会を務める新番組であり、「ついに中居までニュース番組をやるのか?」と人々を驚かせている。

土曜昼というニュース番組のない時間帯に、どんな内容で勝負しているのか。今やジャニーズとニュース番組の組み合わせは当然のようなムードになっているが、後発キャスターと言える中居はどんなスタンスで番組に挑んでいるのか。

また、今回の『新・日本男児と中居』と合わせて、2つの新番組を見た上で、中居の現在地点を探っていきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。