テレビ解説者の木村隆志が、今週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第24回は、13日に放送された『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系、毎週水曜21:00~)をピックアップする。

同番組は各界のユニークな専門家たちが、思わず「ホンマでっか!?」とツッコミたくなるような情報を披露するトークバラエティ。「専門家たちを大量起用し、バラエティタレント化した先駆け」と言っても過言ではないだろう。

今回の放送では、「年代別!今まさにやっておくベき事」と題して、美容・教育・人間関係に関する情報を紹介していく。今年で放送10年目になるが、番組としての勤続疲労はないのか? 定点観測的な視点から見ていく。

すべての情報に「!?」をつけてエンタメに

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『ホンマでっか!?TV』MCの明石家さんま(左)と加藤綾子

今回もおなじみの専門家たちが、計18本ものさまざまな情報を披露。

美容では、「肌の老化スピードの8割は浴びた紫外線の量で決まる!?」「10代の美肌にはしらたきが効果的!?」「20代の美肌には赤ピーマンが効果的!?」「30代の美肌にはレバーが効果的!?」「40代の美肌にはちりめんじゃこが効果的!?」「コラーゲンを食べることはやっぱり美肌に効果アリと判明!?」「50代の美肌には納豆が効果的!?」「50代から発症するアレルギーは治りにくい!?」「化粧落としは40秒以内。あとは残ったままでも大丈夫!?」「思春期のダイエットで過度な脂質制限はNG!?」「60代で無理にタバコは止めない方が良い!?」の11本。

教育では、「5歳でしりとりをすると大学受験に成功する可能性がUP!?」「7歳までに英語を教えると脳に逆効果!?」「5歳までに初恋をすると言葉を早く覚える!?」「7歳から父親とキャッチボールすると問題行動のない子に育つ!?」の4本。

人間関係では、「50代になったら余分な人と交流し始めた方が良い!?」「高齢者の孤独にはボランティア活動が効果的!?」「世代ごとにリアクションを変えると好印象を与えられる!?」の3本。3ジャンル計18本が披露された。

番組後半では、「離婚弁護士が見たドロ沼離婚裁判」のベスト5を発表。5位は「男が交際相手の女性を婚約破棄で訴え、彼女にかけた通話料金を請求!?」、4位は「妻がマザコン夫に三行半!! 離婚決定のマザコン行為は母のパンツを履く!?」、3位は「ケチ夫が妻の浪費癖を証明する為に生活費の統計グラフを持ってきた!?」、2位は「バレない完全不倫!! 今どき不倫は子どもを利用!?」。

そして1位は「外国人男性からのメールが妻の浮気の決定的証拠に!!『I’m sorry I have Chlamydia(クラミジア)』!?」だった。シモ、ケチ、ゲスなど、ネタは多彩だが、どれもタブロイド紙っぽいのが、当番組の後半パートらしい。

ここまで読んできて、すべての情報に必ず「!?」がついていることに、気づいた人も少なくないだろう。しかも番組で「!?」は、すべて注意を促すべく赤字になっている。『ホンマでっか!?TV』という番組名にも「!?」があるように、それぞれの情報も「あくまで説の1つ」「エンタメ番組として見て」というスタンスなのだ。

専門家の大量出演は時代にフィット

生物学の池田清彦、脳科学の澤口俊之、心理の植木理恵、教育の尾木直樹、印象の重太みゆきなど専門家たちの顔ぶれは、番組スタート当初からあまり変わっていない。番組としては、新たなレギュラー候補を登場させているが、知識・話術・キャラのすべてを兼ね備えた現メンバーを超えるのは至難の業だろう。

実際、当番組が成功を収めた2010年代前半、民放各局で「ウチでも『ホンマでっか!?TV』みたいな番組をやろう」という声が飛び交い、徐々に増えていった。それまで専門家のテレビ出演は情報・報道番組が大半を占めていただけに、大きな影響を及ぼしたと言っていいのではないか。しかし、当番組の専門家に匹敵するバラエティ対応力を持つ人材は、なかなかお目にかかれない。

専門家の大量出演は、何かと権威付けをほしがる日本人の嗜好、不確実な情報の多いネットが普及した、タレントよりもギャラが抑えられるなど、いかにも時代にフィットした戦略と言える。私自身も、ときどきいくつかの番組から声がかかるくらいだから、「いかにテレビ業界が専門家をキャスティングしているか」が分かるのではないか。

もう1つ当番組を語る上で忘れてはいけないのは、圧倒的なやかましさ。決してMCを務める明石家さんまのことを言っているのではなく、番組全体がいい意味でやかましい。

バラエティ最速レベルのツッコミラッシュ

今回の放送で象徴的だったのは、さんまがゲストの山本美月に「帰国子女?」と尋ねたシーン。山本が「違います」と返事すると、さんまが「そういう風に見えるのってすごいな」と持ち上げた。

その瞬間、ギャル曽根が「今、口説くのやめてもらっていいですか?」、ブラックマヨネーズ・小杉竜一が「無理無理。さんまさん、それ我慢できへんねん」、マツコ・デラックスが「いいと思ってた女が立て続けにIT(社長)とかとくっついてるからショックなのよ」と集中砲火。特にレギュラーのブラマヨ、マツコ、磯野貴理子、島崎和歌子のツッコミテンポとラッシュは、数多あるバラエティの中でも最速レベルだろう。

その他では、専門家たちが連打する“チンベル”の音、情報が披露されるたびに流れる効果音なども、いちいちボリュームが大きい。「1つ1つのパートをセンセーショナルに見せよう」という演出意図は、番組スタート当初から変わっていないのだ。

ただ、上記に挙げた今回の18本も、改めて見直してみると……それほど新奇性や意外性の高いものはない。そのことは、「ネットメディアに当番組を扱う記事が少ない」ことが裏付けとなっている。

テレビマンたちにとってはクレームやコンプライアンスが気がかりな時代だが、ギリギリのラインを攻めようとしているのは間違いない。今後は、新たなスター専門家の登場を待ちつつ、いかにセンセーショナルな情報を盛り込んでいくのか。フジテレビは長寿番組がごっそり終了してしまったあとだけに、『ホンマでっか!?TV』が背負っているものは大きい。

来週の"贔屓"は…「スポーツドキュメンタリーのTBS」を物語る『壮絶人生ドキュメント プロ野球選手の妻たち』

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『壮絶人生ドキュメント プロ野球選手の妻たち』に出演する谷亮子(左)と佳知夫妻 (C)TBS

来週の放送からピックアップする“贔屓”の番組は、20日(19:00~21:57)に放送される『壮絶人生ドキュメント プロ野球選手の妻たち』(TBS系)。同番組は、過酷な野球界で戦う夫を支える妻にスポットをあてたドキュメンタリー。2011年から毎年この時期に放送され、年に一度の風物詩となっている。

今回は、「元フジ女子アナ妻と一流選手の夫が教育方針で対立」「ヤワラちゃんと結婚したプロ野球選手の夫は幸せだったのか」「別居をしながら成功を目指す身重の妻の献身愛」「超一流選手、3階建6LDKの豪邸公開」「プロ野球選手の妻がドローン界の第一人者に」を放送。3時間をたっぷり使った多彩な内容が予定されている。

『バース・デイ』『プロ野球戦力外通告』なども含め、「なぜTBSはスポーツドキュメンタリーが得意なのか」の理由を探っていきたい。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。