テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第230回は、25日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『まっちゃんねる』(21:00~)をピックアップする。

「松本人志が面白いと思うことを実験していく」というコンセプトの特番で、これまで『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』(Amazonプライム・ビデオ)の女性版「女子メンタル」やイケメン版「イケメンタル」などが放送されてきた。

第3弾となる今回は、女性限定で行われる「IPPON女子グランプリ」を放送。女性限定のネタコンテスト『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)がレベルや開催意義を問題視されがちな中、「IPPON女子グランプリ」は、その難題をクリアできたのか。

  • 「IPPON女子グランプリ」“タレント編”に出場した(左から)王林、渋谷凪咲、神田愛花、滝沢カレン

    「IPPON女子グランプリ」“タレント編”に出場した(左から)王林、渋谷凪咲、神田愛花、滝沢カレン

■「270人中決勝出場者0人」の衝撃

オープニングは今回も、松本人志のソロトークから。「今までとはまったく違う実験に試みました。いやあ、ちょっとまたえらいことになりましたね。これはぜひ本当に見てほしいな」と、これまで以上に自信満々な口ぶりだった。

続いて「『IPPONグランプリ』27回の出場者は延べ270人。その中で女性芸人はたったの7人。決勝出場者は0人。はたして女性は大喜利が苦手なのか」というナレーションが流れ、さらに松本が「いや~みなさんすごいですよ。侮ってはいけないということを痛感しました。ぜひご覧ください」とコメント。

「本当に面白くなるの?」「無理だろう」と疑っていた人々も、松本のコメントで一気に期待感が高まったのではないか。その説得力は、ストーリーテラーとして最高峰の存在であることをあらためて感じさせられる。

次に、麒麟・川島明、バカリズム、千鳥・大悟の『IPPONグランプリ』王者をそろえた審査員と、“女芸人編”のハリセンボン・箕輪はるか、Aマッソ・加納、蛙亭・イワクラ、3時のヒロイン・福田麻貴が登場。どちらも納得の人選であり、最初から笑いが期待できそうだ。

最初のお題は「あなたがおっさんと体が入れ替わったとき、相手に伝えておく注意事項とは?」で、加納、はるか、イワクラ、福田の順で次々に回答していった。IPPONの確率こそ高いとは言えないものの、瞬発力と手数の多さは決して通常版に負けていない。

ここでは、はるかが「しのごの言わずに楽しめよ」「年に一度きれいな花火を見せてあげてください」「ブラの代わりにベーコンを巻くだけでも問題ないです」とたたみかけて3本を連取。結局、はるか:3本、福田:2本、加納:1本、イワクラ:0本で終わった。

2つ目のお題は、「写真で一言ルーレット」で、はるか:5本、加納:4本、福田:3本、イワクラ:0本。3本目のお題は、「そんなこと5・7・5で伝えるな! 何?」で、はるか:8本、福田:5本、加納:4本、イワクラ:4本。ここまで0本だったイワクラが4本を獲得したが、はるかの強さが際立っている。

4本目のお題は、お題に対して1位に当てはまる芸能人の名前を答えるドラムロール大喜利で、「夜遅くマネージャーに電話してきて、込み入った夢を語ってそうな芸能人第1位は?」。早押しを制して2度の回答権を得たイワクラが「桐谷健太」「misono」とたたみかけてIPPONを獲得し、はるか:8本、福田:5本、イワクラ:5本、加納:4本。ただ、川島の「大体のドラムロール大喜利、misonoでいける説」というコメントがさらなるIPPONだった。

■ホリケンもザコシも空気を読んでいた

5本目のお題は、「下着売り場で言ったことのないセリフを言ってください」。イワクラの連取で1本差まで迫られたはるかが「いい下着がひとつもないですね…手ブラで帰らせてもらいます」でIPPON獲得。川島が「師匠みたいな笑いの取り方」、松本が「今のすごいよね」とコメントしたように、圧倒的な力の差を見せつけた感があった。

はるかは、さらに「布袋モデルも着てみていいですか?」と答えて、思わず大悟が「何モデル買いに来てん!」とツッコミ。審査員から高速のツッコミを入れられるほど面白いという事実を証明するように優勝を果たした。最終結果は、はるか:10本、イワクラ:8本、加納:6本、福田:6本。

“女芸人編”はバカリズムの「やっぱ女の子がゼロポイントで恥ずかしそうにしているの、たまんないですね」というコメントで終了したが、これが続く“タレント編”への“振り”になるのではないか……という期待感が広がった。

出場者は、王林、渋谷凪咲、神田愛花、滝沢カレンの4人。川島が「場合によっては(カットされまくって)スーパーダイジェストの可能性もある」とコメントするほど未知数の戦いであり、それは「見てみたい」という単純な視聴動機に直結する。シンプルだが「見たことのないものを見せる」ことの重要性を感じさせられた。

1問目のお題は、「壁ドン以上のキュンキュンを教えてください」で、渋谷が「尻もぎ」でいきなりIPPON。続いて神田が「ポルシェ、フェラーリ、ブガッティ」で4点に終わり、審査員たちから「ルール全然わかってない」と失笑を受ける。さらに、神田が「麻布にあるあのマンションのココ」と回答すると、松本が戦いを一時ストップ。審査員たちは「最初はまだ4文字くらいから入ったほうがいい」などの暗黙のルールを説明したが、神田はさらに「イスにおしぼり」という謎回答で再びストップをかけられてしまった。

神田の暴走によって、「通常版で堀内健、ハリウッドザコシショウ、くっきー!らが場を荒らしているように見えて、実はルールに乗った上で暴れていた」ことが視聴者にも伝わったのではないか。最初のお題は、王林:3本、渋谷:2本、神田:2本、カレン:2本で終わった。

2問目のお題は、「写真で一言ルーレット」で、王林:4本、渋谷:4本、神田:4本、カレン:3本。

3問目のお題は、「コンパで横の席になったケンタウロスを褒めてあげてください」。ここでも神田の回答に、川島が「ある意味深いんですけど、まだ早い」、松本が「毎回(ストップをかけて説明を)言っていられないし、他の人の邪魔にもなっちゃうし」とコメントするなど、視聴者にとっては、大喜利のルールや『IPPONグランプリ』の見方を知る貴重な機会となっていた。ここまで、王林:7本、渋谷:7本、神田:5本、カレン:6本。