テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第215回は、13日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『ガチャガチャの言う通り!!~丸投げナインティナイン~』(20:00~)をピックアップする。
ナインティナインがMCのロケ企画であること以外は、「誰と、どこへ行き、何をするのか」が決まっておらず、「旅のすべてをガチャガチャで決める」という。
ガチャガチャを使った演出は、果たしてどれくらい盛り上がるのか。視聴者にどれくらいガチンコ感を抱かせられるのか。それとも、ゆるさを全面に押し出したものになるのか。
■山田孝之がロケに行けず30分で帰宅
2月某日の朝7時、湾岸スタジオに「ナインティナインとロケに行くかもしれない」という10人が集結。その顔ぶれは、梅沢富美男、狩野英孝、具志堅用高、高地優吾(SixTONES)、小芝風花、錦鯉、本間朋晃、松下洸平、山田孝之と各界の人気者がそろい、日曜夜の特番にふさわしい豪華さを感じさせられる。
まずは、旅先を決めるガチャからスタート。何らかの「日本一」がある全国50カ所の中から、「茨城県神栖市・ピーマンの生産量日本一」が選ばれた。あまりに東京から近く、ロケがしやすい旅先になったことから……「この番組は本当にガチャのガチンコなのか?」と、いきなり疑念を抱いた人がいるのではないか。ただ、もしガチンコではないとしたら、「近場になったことで人気者が選ばれやすい」という状況になったのは間違いない。
結局ガチャで選ばれたのは、狩野英孝と、『スクール革命』(日本テレビ)でおなじみの高地優吾。いかにもバラエティらしい新鮮味に欠けるメンバーとなったが、それがガチンコということなのだろうか。
「岡村隆史と矢部浩之がガチャを上下に振ってカプセルを動かす」「選ばれなかった人はその場でマイクを外され見送られて帰る」などのガチンコ感を高める演出はあったが、小芝風花、松下洸平、山田孝之のロケを期待してチャンネルを合わせた多くの人々にしてみれば、ただテンションが下がっただけに見えてしまった。
ロケのルートは、「日本一のピーマンと出会える場所」「神栖市一番の繁華街」「神栖市の名物グルメ」の3つ。一行は温室ピーマン畑で収穫を楽しむと、焼きたてのピーマン、神栖メンチ、ピーマンの天ぷら、ピーマン餃子を食べたあと、再びガチャが登場した。
ロケ先の農家さんに向けた“お礼ガチャ”が行われることになり、その内容は「ピーマンで謎かけ」「ピーマン嫌いの子どもへピーマンの魅力をPR」「ピーマンのテーマソングを歌え」の3つ。ガチャで選ばれたのはテーマソングで、歌い手もガチャで岡村に決まり、即興ソングを歌ったが特に笑いは起きず……。即興ソングこそ狩野の出番だっただけに、ここではガチンコ感が漂っていた。
ここで唐突にロケ車から松下洸平に電話。少し話したあと舞台の番宣が流された。退場した人が多すぎたため、「一度で番宣するのは難しく、少しずつしていこう」ということなのか。
■ゲスト交替ガチャでアイドルが即退場
ここで一行は街頭で、かまいたちの2人と遭遇し、突然“ゲスト交替ガチャ”が行われ、高地が退場。狩野が残ってアイドルが退場したからか、「かつてないガチ番組です。」というテロップが表示された。しかし、だからといってナインティナインが対象外だったことから分かるように、このガチャがハラハラドキドキを生んでいたわけでもない。
一行は地元名物のハンバーガー食べたあと、雑貨店に入り、1日カツラをかぶり続ける人を選ぶ“かつらガチャ”で矢部が選ばれた。ふつうのカツラで笑いは薄かったが、このくだりが後半に効いてくるのなら面白そうだ。
さらに一行は駄菓子屋に入って、「当たりが出るまで駄菓子を買え」「子ども全員に好きなだけ駄菓子を」「子どもを大爆笑させろ」「子どもが思い出に残るプレゼントを」のガチャが実行された。しかし、「思い出に残るプレゼントを」が選ばれ、濱家隆一が子どもにおもちゃの飛行機をプレゼントしただけで終了。ある意味、「撮れ高ごくわずか」なのもガチンコとして放送するということなのか。
最後は地元の飲食店に入り、355種類のメニューすべてをガチャに入れるという。まず“飲み物ガチャ”から、矢部がフレッシュバナナジュース抹茶、岡村が紅茶、山内がレモンスカッシュ、濱家がウーロン茶、狩野がエスプレッソを出した。続いて“食べ物ガチャ”から矢部が「豆腐ステーキ」「海老と大葉のクリームジェノベーゼパスタ」、山内が「蒸し鶏のごまソース掛け」「岩のりと牡蠣のクリームパスタ」、狩野が「焼きそば」「お新香盛り合わせ」、岡村が「珍味三点盛り」「トマトと生モッツアレラチーズのカプレーゼ」、濱家が「海老のトマトクリームパスタ」「シーザーサラダ」を獲得。
さらに、店名物のローストビーフを賭けたガチャで、濱家以外の4人が食べられることになった。撮れ高の少なそうな駄菓子屋の子どもプレゼントをあえてオンエアしたのは、「また濱家か」というここにつながる振りだったことになる。
最後に“お会計ガチャ”を行った結果、53,310円を矢部が支払って神栖市のロケは終了。金額的な安さがあるとしても、終始「絶対に払いたくない」というくだりはなく、淡々としていたのは、「ゆるい番組として見てもらいたい」ということなのかもしれない。