テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第199回は、13日に放送されたテレビ朝日系バラエティ番組『電脳ワールドワイ動ショー』(毎週土曜22:25~)をピックアップする。
深夜帯に放送されていた『ブイ子のバズっちゃいな!』をリニューアルする形で今年10月にスタート。メインキャスター役のバイきんぐ・小峠英二、個性あふれるコメンテーター、忖度なしのバーチャルコメンテーターらが、「世界のローカル動画から“今”を読み解いていく」というコンセプトで放送されている。
ショート動画を軸に据えた番組は多いが、『電脳ワールドワイ動ショー』は、それらのどれとも異なるムード。動画の内容も、笑いや社会性の織り交ぜ方も、よくある衝撃映像系の番組とは一線を画すものがある。
■社会派番組だから無理にハジけない
番組は「世界の動画を見てみんなで語り合う『電脳ワールドワイ動ショー』。今週も世界ではいろいろなことが起きています、本日最初に語り合う動画はこちら」という定型のナレーションからスタート。
最初のテーマは「迫り来るロボット社会」。ニュージーランドの牧羊犬ロボットが登場すると、すかさず小峠が「うわーすげえ。これ怖いなー」とつぶやきながらフェードイン。『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日本テレビ系)といいこの番組といい、最近の小峠は視聴者心理を代弁しながら笑いを取る話術が冴えまくっている。多くの動画にさまざまな反応を見せなければいけないこの番組のMCには、最適な人材ではないか。
さらに、番組はインドの看護師ロボットと中国の消防ロボットを紹介。「世界ではさまざまな場所でロボットが活躍し、身近な存在になっています。迫り来るロボット社会について、世界の危険地帯を数多く取材してきた丸山ゴンザレスさんと、ハイテクとは真逆の超節電生活を送る稲垣えみ子さんと考えましょう」というナレーションを経て、“世界のハイテクマシン&最先端ロボ5選”というコーナーが始まった。
ピックアップされたのは、ギリシャの「超ハイテク 荷物仕分けロボット」、中国の「1時間で5700個! ゴミ分別ロボット」、フィンランドの「林業の救世主! 高性能伐採マシーン」、スイスの「これぞ無限列車! ロボットが作る永久線路」、アメリカの「抜群のバランス 綱渡りロボット」の5つ。
この中でトークが盛り上がったのは、「人工知能を搭載し、自動で郵便番号を取得し、重量を測定でき、荷物を仕分けられ、最大15kg、1日16万8千個の仕分けが可能」という荷物仕分けロボット。小峠が「こうなっちゃうと人いらないよな」と反応すると、バーチャルコメンテーターのロボフェッサーが「賢い上にほぼ休みなく働き続け、文句を言ったりサボったりしない。やっぱりロボットって優秀ですよね~」とまくし立てて、小峠の「何テンション上がってんだよ!」というツッコミを引き出した。
純喫茶の店主・マスターも含めてバーチャルコメンテーターは「忖度なし」という設定だけに、もっとハジけさせることも可能なはずだが、小峠いわく「社会派」番組だからか、ここまでは抑えを効かせた印象。「今後いざとなれば思い切って変えられる」という点での含みを感じさせられる。
■ハードボイルド風のエンディング
「普段ニュースや新聞で目にするスラム街。そのディープな世界をご案内」というナレーションから次のテーマに突入。まずは、ベネズエラで行われたスラム街のハロウィンイベントを丸山が解説した。
ここは殺人発生率で世界ワースト3に入るスラム街で、バイクに乗って犯罪行為をする人が多いため、偏見の目で見られないためにバイクパフォーマンスで「僕はただバイクを乗っているだけだ。犯罪者でも泥棒でもない」と訴えているという。
丸山は「悪人ではないけど怖いですよね。あんなにバイクで徒党を組んで来られたら嫌」とバッサリ斬りながらも、「貧しい人もいるし、犯罪者もいっぱいいますから、そこに行って誰と出会うかだけだと思うんですよね。運とタイミングというか。悪い人にもいい人にもいっぱい会うので、僕にとってはアミューズメントパークみたいな感じなんですけど」と理解を示した。
その他でも、銃声が聞こえたときの対処法や、スラム街で命を狙われた理由、映画『スラムドッグ$ミリオネア』の後日談など、丸山のトークはいつもと同様にキレキレ。今後もこの番組が頼りにしていくべきコメンテーターの一人だろう。
エンディングは竹原ピストルの「せいぜい胸を張ってやるさ」が流れる中、「今日はどんな気づきがありましたか?」というナレーションのあと、印象深いコメントをピックアップ。
小峠はロボットバンドの写真に「そいつらから出るメッセージなんかは心に響くのかね。刺さるのかね。不思議だね、オレは」。稲垣は針の穴に糸を通す写真に「開発されればされるほど人を幸せにしてるのか、そうじゃないのかが微妙な領域ね」。丸山はスラム街の写真に「悪い人にもいい人にもいっぱい会うので、いろんな人がいる街だと思っているんですよね。僕にとってはアミューズメントパークみたいな感じなんです」というコメントが紹介された。
さらに、「救いようのない人間にしか 救いようのない人間もいるだろうよ」という歌詞が映し出されて番組は終了。一連の映像に笑いを誘う要素はなく、それぞれのテーマについて問題提起するような社会派番組らしいエンディングだった。