テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第167回は、3日に放送された日本テレビ系バラエティ特番『ニノさんSP』をピックアップする。

日曜午前の通常放送に加えて、今回は土曜夜にも2時間特番を放送。「ドリームダービー」と題して芸能人やアナウンサーたちがオリジナル競技で熱戦を繰り広げるという。

それと同等以上に注目を集めそうなのは、二宮和也と櫻井翔の共演。昨年大みそかの『NHK紅白歌合戦』と配信ライブ以来となる上に、菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀、櫻井翔、広瀬すず、大島優子と新ドラマの俳優陣も集結する改編期らしい華のある特番になった。

日本テレビ

■自局アナを一番手起用するPRの巧さ

今回の企画は『コントが始まる』『ネメシス』『ニノさん』各チームの番組対抗戦で、「優勝チームは豪華獲得ゲームに挑戦できる」というもの。『ニノさん』チームの菊池風磨、陣内智則、フワちゃんも含め、オープニングからスタジオには華やかなムードが漂っていた。

第1レースは「人気アナウンサー滑舌ダービー」で、徳島えりかアナ、水卜麻美アナ、桝太一アナが登場。自局番組の新MCとなる人気アナ3人をそろえて番宣に絡める日テレの抜け目なさを感じてしまう。このダービーを一番手にもってきた目的は、全日帯視聴率の獲得か。

早口言葉に挑む企画で、まずスタジオの菅田将暉、神木隆之介が挑戦し、あえなく失敗して愛きょうを見せたあとの本番では、最も後輩の徳島アナが圧勝。最後に広瀬が最難問の早口言葉に挑み、瞬殺されて笑いを取ったが、こんな細かいオチを作る編集こそ日テレバラエティらしさかもしれない。

第2レースはバレーボール・狩野舞子、サッカー・丸山桂里奈、ゴルフ・古閑美保による「神業ショットダービー」で古閑が勝利。スーパーアスリートたちによる企画であるにもかかわらず、あっさり終わらせて次に向かうハイテンポな構成が心地よい。思わず「もしTBSやフジだったら倍の長さで放送していたのではないか」と思ってしまった。

第3レースはダービーを一旦休んで「二宮に勝てばポイントゲットできる」というボーナスステージ。トイレットペーパーのリフティングに挑んだが、二宮が3回、菅田が3回、櫻井が2回、菊池が2回と、「イケメンが全員ダサい」という失笑のみで終わった。

■新ドラマに忖度せずホストが逆転勝利

再びダービーに戻った第4~6レースは、「勝手に『ネメシス』ダービー」。ドラマ出演者が八景島シーパラダイスをめぐる中で、「かわいい」と言った回数、見つめ合った回数、魚を早く釣る人を当てるクイズだった。とりわけ目を引いたのは、このタイミングでドラマの新キャスト・橋本環奈を情報解禁したこと。二宮と櫻井の共演、人気アナのバトルに続いて、ネットニュースに直結しそうなトピックスを番宣番組に絡める頭脳的なPR戦略と言えよう。

第7レースは那須川天心、本並健治、山崎武司による「異種格闘技! 衝撃力ダービー」で山崎の勝利。第8レースは人気モデルの香川沙耶、香音、近藤千尋による「1日の食事・総カロリーダービー」で、最も摂取カロリーが高かった香川の勝利。第9レースは小島よしお、菊地亜美、上島竜兵による「ドッキリ中毒者ダービー」で、バレバレのドッキリを最初にコンプリートした菊地の勝利。アスリート、モデル、芸人とキャラクターやビジュアルの異なる3組を立て続けに見せて飽きさせなかった。

最終10レースは10人の出演者で6番から10番にスタジオ入りした人を当てる「一発逆転!記憶力ダービー」。菊池が「ニノさんぽい」とつぶやいた斜め目線の企画で、それまで0ポイントだった『ニノさん』チームが2つの番宣チームを差し置いて大逆転優勝してしまった。「局を挙げた番宣だからと言って手加減せず全力で勝ちに行く」というスタンスは、予定調和や忖度を嫌う現在の視聴者嗜好に合っている。

最後は『ニノさん』チームが出演者たちのリクエストした商品を獲得できるバスケットボールのフリースローゲームに挑戦。このくだりは『関口宏の東京フレンドパーク』(TBS系)のダーツによる「ビッグチャレンジ」とほぼ同じだが、賞品のスケールが小さいためか、ほとんど盛り上がらなかった。けっきょく『ニノさん』チームは、広瀬すず希望のレッグウォーマー、陣内智則希望の電動自転車、菅田将暉希望のめちゃうまいエビを獲得して番組は終了した。

■軽めの勝負をハイテンポで見せていく

ちなみに翌日午前のレギュラー版では、小島よしお、杉浦太陽、塚田僚一による「勝手に健康自慢タレントダービー」を放送。筋肉自慢の3人が、消費カロリー、鏡のチラ見回数、軽トラ押し30m走の3種目で競い、「誰が勝つかを当てる」という企画だった。

さらに次週11日には、櫻井、広瀬、橋本の素顔を暴く「勝手にダービー」と、桝アナ、水卜アナ、徳島アナの「原稿きっかりダービー」が放送されるという。つまり、今回の2時間特番だけでなく、レギュラー放送分の収録もしていたわけだが、1週間後にも番宣の後押しができることになり、つくづく効率がいい。

あらためてそれぞれのダービーを振り返ると、企画・出演者ともにバラエティに富んでいるため、映像的な強弱のバランスがよかった反面、「勝負」という意味での軽さは否めなかった。「誰が勝つのか」というハラハラドキドキや、「絶対に負けたくない」という意地のぶつかり合いがないため、見ごたえとしては微妙……。しかし、それよりも10レースをぎっしり詰め込んでテンポを上げ、クイズと笑いの数を増やすことを優先させたのだろう。

もともと日曜午前のまったりとした時間帯に放送されている番組だが、「ゴールデンタイムだから」とハードルを上げた対決を用意しなかったところは一本筋が通っていた。「いつも通り手軽な対決をサクサクと見せながら、その中で番宣を散りばめる」という方針は理にかなっている上、俳優たちも参加しやすいだけに、今後も改編期特番として機能するのではないか。

そもそも、多彩なゲーム企画に視聴者も楽しめるクイズ要素を加えた構成は、かつて放送されていた『さんまのナンでもダービー』(テレビ朝日系)や『珍種目N0.1は誰だ!? ピラミッドダービー』(TBS系)に似ているバラエティの定番。爆発力こそないが、番宣などのミッションを消化するには最適のフォーマットなのかもしれない。

■次の“贔屓”は…早くも2度目のゴールデン特番!『中居大輔と本田翼の夜な夜なラブ子さん』

宮川大輔(左)と本田翼

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、9日に放送されるTBS系バラエティ特番『中居大輔と本田翼と夜な夜なラブ子さん』(20:57~22:54)。

木曜深夜に放送されている恋愛バラエティのゴールデン特番第2弾。「彼氏大好きな“ラブ子さん”の恋愛話を掘り下げる」というコンセプトの番組だが、今回はレギュラーラブ子さんカップルのプロポーズ企画のほか、新たに3人のラブ子さんが登場する。

このところ民放各局が視聴ターゲット層の若返りを図り、その流れを受けて恋愛バラエティの注目度が急上昇。実際この番組も昨年11月、今年4月と立て続けにゴールデン特番が放送されることになる。一方で昨年、不幸な事態を招いた『テラスハウス』(フジ)は今なお騒動が収束していないだけに、どんな構成・演出で放送されているのか気になるところだ。