テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第166回は、27日に放送されたTBS系バラエティ特番『オールスター感謝祭’21春』『オールスター後夜祭』をピックアップする。
1991年秋の第1回放送から放送30年目のアニバーサリーを迎えているが、コロナ禍の制限があるのがつらいところ。また、同日深夜には『オールスター後夜祭』も2年ぶりに復活した。
計7時間半の生放送で、視聴者を盛り上げるべく、どんなコーナーを用意していたのか。
■スタジオ32人、別室22人の54人が参加
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、スタジオの参加者32人と、別スタジオからのリモート出演22人の計54人がクイズに参加。放送開始直後に、出演者が検温や消毒する様子を映すなど、「安心して見てもらおう」「批判を受けないように」という思いが伝わってきた。
出演者の中心は、やはり新ドラマの俳優たち。『ドラゴン桜』の阿部寛、『着飾る恋には理由があって』の川口春奈と横浜流星、『リコカツ』の北川景子と永山瑛太ら主演級の俳優が次々に紹介され、朝の新番組『ラヴィット!』の麒麟・川島明もピックアップされた。「お祭り」というより「番宣」のムードが濃いが、これほど豪華なメンバーなら視聴者にとって何の問題もないだろう。
次にアナウンスされたのは、総額300万円と超レア商品が当たる視聴者プレゼント。40問以上正解に10万円×10名、30問以上で5万円×20名、15問以上で3万円×20名、5問以上で1万円×40名のQUOカードが贈られ、さらに出演俳優陣のサイン入りグッズなども当たるという。一方、芸能人たちの賞金は、1位100万円、2位50万円、3位30万円と意外に安め。この番組における芸能人たちの目的はお金ではないということか。
第1ピリオドの1問目は、リンゴとナシを見分ける写真クイズ。2問目は『劇場版 鬼滅の刃』の興行収入にちなんで、387億の数字表記を当てるクイズ。3~7問目は正しい順に並べるランキングクイズを放送。「18時台はシンプルなクイズでウォーミングアップ」という感があった。
次は目玉企画の1つ「豪華俳優陣対抗プレッシャーアーチェリー!」。阿部寛、田中圭、永山瑛太、横浜流星の4人が参加して永山が優勝したが、これは女性視聴者向けのいわゆる「眼福」コーナーだろう。ただ、『ドラゴン桜』で出演の阿部がかつて『下町ロケット』で出演したときに放った「発射!」のボケをかましたほか、最高点と最低点を叩き出すなど笑いをプラス。それだけに、何度もCMをはさむテンポの悪い進行がもったいなかった。
■超激辛麻婆豆腐を食べたのはまさかの山下美月
その後は、「ヒット曲歌詞かくれんぼクイズ」のようなファミリー向けのオーソドックスなクイズコーナーと、「ギャグ攻撃に耐えろ! 豪華女優陣VS人気芸人!」のようなゲームコーナーをランダムに放送。
クイズコーナーは、「すゑひろがりずが和風変換したのはどっちクイズ」「身近な2択ピリオド」「10年前にあった? なかった? クイズ」「仲間外れピリオド」「ランキングピリオド」。ゲームコーナーは、「感謝祭ミニマラソン」「人気芸人『ドラゴン桜』or大型ネタ番組への出演。どちらを選ぶ?」「演技力でダマせ! 超激辛麻婆豆腐を食べているのは誰?」「新番組『ラヴィット!』の決めポーズを考えて!とお願いしたらどちらが多く出せるのか?」が放送された。
5時間半もの長尺だからか1つ1つのゲームコーナーは長く、もはや通常の30分バラエティ1本分と言っていいほどではなかったか。生放送らしく、ミニマラソンで東京五輪代表の陸上選手が今田耕司も名前を読めない無名の落語家に負けたり、千原ジュニアが大根芝居と断言した山下美月が実は超激辛麻婆豆腐を食べて耐えていたりなど、臨場感たっぷりのシーンもあった。だからこそ、それぞれが長い上にゲームの数が多いため、裏番組へのザッピングを促してしまった感もある。
けっきょく5時間半の激闘を制したのは、乃木坂46・山下美月で、2位は3時のヒロイン・福田麻貴、3位はチョコレートプラネット・松尾駿。しかし、この結果発表も人数が少ないため、さほど盛り上がらないまま番組は終了してしまった。
■『後夜祭』参加者5分の1も旧満州クイズは健在
約1時間後、2年ぶり4回目の放送となる『後夜祭』がスタート。こちらはスタジオの32人のみで別スタジオからのリモート参加がないため、あっという間に全滅、または優勝者が決まってしまうケースが目立った。人数が5分の1のため、賞金も5分の1の1万円とスケールダウン。唯一いいほうに転んでいたのは、「最下位は番組から永久追放」というルールのシビアさが増したことだった。
「目指せぴったり30万 うろ覚え所持金チャレンジ」「アクリル大相撲 赤坂ご時世場所」「芸能界消毒王No.1決定戦」というゲームコーナーもあったが、こちらの中心はクイズコーナー。相変わらずの悪意と悪ふざけで笑わせてくれたほか、恒例の旧満州クイズなども健在で、予備問題も使うほどテンポよく出題されていった。
ただ、コロナ禍のご時世を踏まえてか、ゲームコーナーの過激さはなく、ザ・グレート・カブキと水着美女の見せ場も少なめ。過去の放送と比べると、「もう少しゲームコーナーで盛り上げてほしかった」という感がある。2つの番組を通して見た結果、『感謝祭』がゲーム中心で、『後夜祭』がクイズ中心であることがわかったが、もしかしたら逆にしたほうがよかったのかもしれない。
また、もう1つ気がかりだったのは、あの有吉弘行が拾い切れないまま終わるほどスベリ続ける芸人が続出したこと。クイズで優勝したニューヨークの屋敷裕政も、最下位で永久追放されたトム・ブラウンのみちおもボケが決まらず、CM前の「キューカット選手権」もドラを鳴らしただけのハリウッドザコシショウが優勝してしまった。すでに「感謝祭より後夜祭のほうが面白い」という声が多いだけに、笑いの質をどう保っていくかが今後の課題なのではないか。
最後に両番組のコロナ感染予防対策にふれておくと、「現在スタジオは換気をしております」などのテロップ、日比麻音子アナらがマスク姿で中継車から出演、アーチェリーのセット全体をアクリル板で覆うなど、随所に努力の跡が見られた。
そんな苦労を思いつつも、そもそもがスケールメリットをベースにした特番だけに、人数減を埋められていたとは言い難い。また、「ぬるぬる」系の企画や、ザ・グレート・カブキの毒霧(口からの発射)など、この特番ならではのバカバカしさが消えていることに寂しさを感じてしまった。やはり、コロナ禍が収まるのを耐えて待つしかないのだろうか。
■次の“贔屓”は…二宮和也と櫻井翔が大みそか以来のテレビ共演!『ニノさんSP』
今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、4月3日に放送される日本テレビ系バラエティ特番『ニノさんSP』(21:00~22:54)。
日曜午前の通常放送に加えて、今回は土曜夜にも2時間特番を放送。「ドリームダービー」と題して芸能人やアナウンサーたちがオリジナル競技で熱戦を繰り広げるという。
日テレアナウンサーの「フラッシュ早口ダービー」、レジェントアスリートの「神業ショットダービー」、力自慢アスリートの「異種格闘技衝撃力ダービー」、人気モデルの「モデルの1日のカロリーダービー」、ドッキリ常連芸能人の「ドッキリ中毒者ダービー」などの多彩なゲームが予告されている。
ただそれと同等以上に注目を集めそうなのは、二宮和也と櫻井翔の共演。昨年大みそかの『NHK紅白歌合戦』と配信ライブ以来のテレビ共演となる上に、菅田将暉、広瀬すず、神木隆之介、仲野太賀ら新ドラマの俳優陣も集結する、改編期らしい華のある特番になりそうだ。