テレビ解説者の木村隆志が、今週注目した"贔屓"のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第12回は、20日に放送された『10周年だよ! にじいろジーン 世界で大変身SP!!』 (カンテレ・フジテレビ系21:00~22:48)をピックアップする。
同番組は、毎週土曜朝に放送されている定番情報バラエティだが、放送10周年のお祝いとしてゴールデンタイムに初進出。「ロス在住8年 桃井かおりの豪邸をぐっさんが訪問」「アンガールズ・田中卓志といとうあさこが最新美容で奇跡の大変身」「闇を抱えた芸能人が心の大変身」「日本じゃありえない! 世界各地のびっくリフォーム」「もう一度見てみたい! ミラクルチェンジBEST3」というゴージャス版だった。
抑えたテンションはゴールデンでも健在
確かに、掛け値なしのゴージャス版だった。「ぐっさんと行くならこんなトコ!」は、東京の街ブラから大女優のロス豪邸探訪にスケールアップ。「Happyミラクルチェンジ」は、ふだん一般人の変身をサポートしている田中卓志といとうあさこが美男美女に変身する特別編。
「こだわリフォーム」は、日本を飛び出してアメリカやオーストラリアなどのユニーク住宅を紹介。「ニッポン開運 福めぐり」は、悩みを抱える、かたせ梨乃、佐藤仁美、中村昌也、岡副麻希らタレントと世界遺産を訪れる旅になっていた。
よく見ると、スタジオのセットには、特大サイズのジーンちゃんも。さすが「カンテレ開局60周年特別番組」というお金のかけ方が清々しい。
ただ、もともと同番組の売りは、土曜朝の放送らしいゆるさ。中高年層狙いで堅い印象の裏番組と比べれば、ターゲット層のゆるさは明白だ。特定層に絞らない分、どの年齢層もフラッと見てしまう。そんなゆるさは、ゴールデンタイム仕様のゴージャス版でもしっかり感じられた。
ゆるさを体現しているのが、山口智充をはじめ、ガレッジセール、アンガールズ、いとうあさこ、はるな愛、飯豊まりえら出演タレントたち。基本的にハイテンションでは暑苦しいため、土曜朝の放送は、ゴールデンタイムよりも2段階くらいテンションを抑えているのが分かる。毎週のゲストも番宣絡みの俳優ばかりでローテンションなのだが、それくらいがちょうどいい。細かいところは気にしないし、爆笑を狙う必要もなし。おおらかな気持ちで見られる番組だ。
番組の体現者は、ジーンちゃんと竹上アナ
現在ゴールデンタイムには、世界を旅する番組があふれている。しかも、ギュっと詰め込まれた過編集の番組が多い。それだけに今回の「世界で大変身SP!!」は、映像としての鮮度こそなかったが、土曜朝のゆるさをそのまま持ち込んだことは新鮮だった。
たとえるなら、かつて『なるほど!ザ・ワールド』(フジテレビ系)を見ていたころのゆったりとした感覚……「80年代の旅バラエティって、こんなゆるさがあったな」と感じたのだ。「機材が大きく経費が高額な分、多くの映像を詰め込めなかった」のだが、それくらいのほうが、むしろ心地よかったのかもしれない。
ただ1つ気になったのは、ジーンちゃんが数秒しか登場しなかったこと。「ジーンちゃんが世界のごちそう いただきます♪」のコーナーがカットされていたのだ。ジーンちゃんは、"タレント経費削減人形"であるとともに、番組コンセプトである、ゆるさの象徴。ジーンちゃんにゴージャス版のごちそうを食べさせるシュールな映像が見たかった。
さらにもう1人、番組コンセプトを象徴しているのは、番組終盤の生中継コーナーを担当する竹上萌奈アナ。失礼ながら美人アナではないのだが、好感度や明朗さの点では、ふだんよりテンションの低いタレントたちよりも間違いなく上回っている。「最もゆるい笑いを提供する」というポジションであるにもかかわらず、晴れ舞台での出番がほぼなかったのは残念だ。
「ジーンちゃんと竹上アナはゴールデンタイムにふさわしくないってこと?」「2人こそ『にじいろジーン』の体現者なのに」。グチっぽくなってしまったが、「土曜のレギュラー版を見ればいい」ことに変わりはない。何せ初ゴールデンなのだから、多少のよそ行き感が出てしまっても仕方がないだろう。
同じ生放送の裏番組『朝だ!生です旅サラダ』(ABC・テレビ朝日系)は、まもなく放送25年を超える。同じく在阪テレビ局制作の『にじいろジーン』も、「20年、30年……、ゆるゆると永遠に続くのではないか」と感じてしまう。「猛烈に好き」ではないけど、「ずっとそこにいてほしい」と思わせる番組だ。
来週の贔屓は…コマツバーラが1年ぶりにスタジオ登場! 『笑ってコラえて! 桜満開SP』
来週放送の番組からピックアップする"贔屓"は、28日(19:00~20:54)に放送される『笑ってコラえて! 桜満開SP』(日本テレビ系)。同番組は、放送22年の歴史を持ち、「日本列島ダーツの旅」「朝までハシゴの旅」などのコーナーで知られる、日本テレビの看板バラエティ番組だ。
今回の目玉は、「世界一周! 1年間ロケしっぱなしの旅」に出ていた小松原ディレクター(コマツバーラ)のスタジオ出演。総移動距離6万5000km、14カ国をめぐる旅の完結編という。「朝までハシゴの旅」は、戸田恵梨香と小峠英二が鶯谷へ。さらに、新コーナー「笑ってコラえて砲 スクープ探しの旅!」がスタートする。どんな一般人が登場し、どう笑わせてくれるのか。スペシャルらしいハジけっぷりを期待している。
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。