午前6時前、清々しい面持ちでフジテレビ入り。カメラを前に「レインボーブリッジからみた景色が綺麗で、初めて写真を…」。そして、本番5分前にスタジオ入りするシーン。5646回目のオープニングを飾ったのは、最終回に臨むメインMC・小倉智昭氏の番組直前の姿だった。
『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ系)が今朝終了した。1月半ばの番組内での終了発表から筆者はほぼ毎日チェックしてきたが、小倉氏はそれからずっとスッキリ(裏番組の名前だが)した印象だった。最終回に向かいOAされた22年間を振り返るカウントダウン企画にいたっては、もう卒業生を見送る先生のよう。番組スタッフの多くが後番組『めざまし8』に残るのだから、卒業するのは小倉氏のはずなのだが。
日々のニュースや芸能情報を扱う情報番組で、最終回をどう展開するかは結構悩みどころだ。簡単に番組のこれまでを振り返ればいいというわけにはいかない。情報番組なので、コンテンツに"情報性"が必要だからだ。はっきり言って、振り返りだけに情報性はない。自己満足という批判を招く恐れもある。22年間やってきて番組自体がコンテンツ化しているから、いいではないかという論もあるだろうが、そうであれば振り返る特番をどこかで編成すればいい。その日のその時間に放送すべきニュースはたくさんあるはずだからだ。
そういった観点からすると、テレビマンの端くれの筆者としては、『とくダネ!』最終回は絶妙な振り返り具合だったと思う。8時から9時50分までの放送時間の中で、振り返りが始まったのは8時31分。番組の大半を振り返りにあてるような形なので、多すぎな感じもあるが、そこはさすがの『とくダネ!』。小倉氏の人脈がモノを言う。
大黒摩季さん、コブクロのサプライズ生歌に、番組でのインタビューをきっかけに交友を深めたという同年齢の寺尾聰氏のサプライズ出演(すりガラス越しに登場する、極めて昭和な登場方法が笑えた)。単なる振り返りにとどまらず、番組ゆかりの大物を出すことで最終回のスペシャル感の演出に奏功した。おそらく小倉氏には前半のコロナ関連ニュースのところまでしか台本を渡していないだろう。あとは「最後にコメントもらいますから」くらいの簡単な説明で、きょうの本番に臨んだのではないだろうか。22年間もやってきた番組スタッフとの阿吽の呼吸で。
そんな中で思うのは、番組スタッフの企みは成功しただろうかということだ。例えば、小倉氏の妻からの手紙を読み上げるくだり。小倉氏が「初めて妻の気持ちを知った」などと感想を述べたが、スタッフが目論んでいたのは小倉氏が泣く姿だったのではないか。最後にふさわしい涙を見たかったのではないか。他にも、寺尾氏をサプライズ出演させるのはいいが、もっと寺尾氏と小倉氏のやりとりを展開することはできなかったのか。詰め込みすぎたのか、そこは残念なポイントだった。あとは、年表をもとに振り返る企画で、失言騒動の際に「(小倉氏が)謝っているようで謝っていない」と佐々木恭子アナが言い切ってしまうとか、そういったある意味でサプライズ発言があったが、もうちょっと深く見せることはできたような印象がある。
『とくダネ!』本当の最終回を!
そこで私は提案したい――『とくダネ!』最終回の延長戦、あるいは本当の最終回をどこかのタイミングで放送してはいかがだろうか。なんだかんだ言って、色々あった22年だったが、『とくダネ!』という名前はブランド化しているはず。そのネームバリューをみすみす捨てるのは勿体ない。浸透しているのだから先ほど提案した最終回の延長戦ほか、『とくダネ! 朝のヒットスタジオ』とか、改めてスピンオフの番組を作るのもアリではないだろうか。地上波がダメならBSはどうだろう。BSフジ亀山社長、いかがでしょうか! ちなみに最終回前日の3月25日放送のエンディングでは、コメンテーターの社会学者・古市憲寿氏が「コロナの中で終わりって不完全燃焼」としつつも、「やりきっちゃうとその後がなくなってしまう。これくらいの不完全燃焼でいいのかな」と述べていた。だからこその最終回延長戦、アリではないか。
さて『とくダネ!』を終えた小倉氏は、今後どのような活動をするのだろうか。東京五輪の取材証も持っているということなので、またすぐ何らかの形でテレビに出てくるだろう。小倉氏は最終回でも「色々言われているが、始まってしまえばきっと良い五輪だったと言えるものになる」と期待を述べていた。オリンピック取材は実に8回。フジテレビも小倉氏とともに何らかの仕掛けを考えているだろう。そういう意味では『とくダネ! スポーツ千一夜』という番組もアリではないか。まだまだ小倉氏が騒ぐ姿を見たいというのが、テレビマンとしての率直な思いだ。