2020年も残りわずか。コロナ禍による"ステイホームな年末年始"は今年限りにしてほしいが、こういう逆境を少しでもプラスに捉えられる余裕があるのであれば、徹底的に楽しんだほうがいい。NETFLIXやHuluなど動画配信サービスは数多あるが、ごく日本的な年末年始の過ごし方として、改めて地上波放送を観ることをお勧めしたい。(ちなみに本稿はテレビ情報誌に掲載されている番組表をもとに書かれていて、急な変更もありうることはご承知おき頂きたい…わざと違う情報を情報誌側に出すような意地悪は無いと思いたいが(笑)。

まずは「大みそか」である。大みそかと言えば、国民的番組と言っても過言ではない『NHK紅白歌合戦』、そしてその対抗馬として着実に地歩を固めてきた日本テレビ『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 大晦日スペシャル』が真っ先に思い出されるだろう。その裏には一時期紅白超えも期待されたフジテレビの格闘技中継があり、テレビ朝日は『ザワつく! 大晦日 一茂良純ちさ子の会』の浸透を急いでいる。ちなみにテレビ東京は、50回以上の歴史を誇る『年忘れにっぽんの歌』だ。

『バナナマンのせっかくグルメ!!』で勝負するTBS

バナナマンの設楽統(左)と日村勇紀

そんな中で新たな動きを見せているのがTBS。このコラムで以前、大みそか編成に触れた際にはまだタイムテーブルが明らかになっていなかったが、TBSは午後7時から『バナナマンのせっかくグルメ!!』を放送する。意外に思われるかもしれないが、『せっかくグルメ』は日曜夜8時という激戦区にもかかわらず好調を維持している。それは多分、今年日本で一番観られたテレビコンテンツ=『半沢直樹』の直前に編成され、その気楽に観られる面白さにお茶の間の人が気付いたということも理由なのかもしれない。

大みそかも日曜夜8時と同じくらいのし烈極める戦場だと思うが、勝算はあるだろう。何よりも他の番組と中身のかぶりが無い。『せっかくグルメ』はその名の通りグルメであるから、裏番組とのすみ分けはしっかりできている。そして、1つの料理が出てくるまでにそれほどの尺を要さないことに加えて、素人との絡みなど街ブラ風のやりとりも楽しめる。『ガキの使い』とも十分戦えるのではないだろうか。 大みそか編成から見えるのが各局のその年の総決算だとすれば、年始の編成はその年の展望にあたるだろう。元日はいつもとそれほど変わらない顔ぶれとなるが、注目したいのは2日と3日だ。

2日と3日午前帯から昼にかけては、いかに日テレ『箱根駅伝』と渡り合うかというところだが、TBSがさすがだ。2日は『逃げるは恥だが役に立つ』の一挙放送、3日はその『逃げ恥』の星野源つながりで『MIU404』の一挙放送だ。お金をかけて新たなコンテンツを生み出して戦いを挑むのではなく、過去のドラマを再活用しカウンター的に放送し、さらに2日についてはファン待望の『逃げ恥』スペシャルにつなげるというあざとさ。ある意味、『箱根駅伝』から逃げてはいるが、十分役に立っているのである。まさに逃げ恥! TBSの編成陣に拍手を贈りたいくらいだ。

3日のゴールデン・プライム帯は激戦

と、ここまでTBSを持ち上げてきたが、そう簡単に事が運ばないのは激戦中の激戦、死闘となることが容易に想像される3日のゴールデン・プライム帯だろう。 そもそも日曜日のゴールデンは先述の通り"激戦区"なのだが、そこで結果を残しているレギュラー番組のスペシャル版が2本編成されている。『世界の果てまで行ってQ!』と『ポツンと一軒家』だが、そこにTBSはおなじみ『関口宏の東京フレンドパーク』を投入。長瀬智也ら新ドラマ出演陣がゲーム対決を繰り広げる流れだと思うが、何とフジテレビが同じくゲームバラエティーを編成。しかも、それが『VS嵐』の後継番組で、相葉雅紀がメインの『VS魂』だ。我らがテレ東も『緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦』を持ってくるなど、ここはもう"死のグループ"(テレビのタイムテーブルだから"死のゴールデン"か?)と言われてもおかしくない。

その死臭を引きずるように午後9時台も恐ろしい。日テレ『行列のできる法律相談所』、TBS『マツコの知らない世界』のスペシャルが編成される中で、フジは前年に引き続き木村拓哉主演のドラマ『教場II』、テレ朝もまた前年に引き続き新海誠監督作品で映画『天気の子』。何もここまで削りあいをしなくても…と心配になってしまう時間帯だ。

というわけで、ここに挙げた番組を観たくなったアナタ、久しぶりにテレビを満喫しながら、各局編成の背景にも思いをはせてみてはいかがだろうか。