暮れも押し迫る2019年12月22日、中山競馬場で「第64回有馬記念」が開催された。ファンのみならず、日本中の注目を集めた競馬の祭典に足を運ぶと、そこではレースだけにとどまらない、競馬場にまつわるさまざまな魅力を存分に体験することができた。
徹夜組が1,090人!? 場所取り合戦も熾烈
毎年、有馬記念が近づくとテレビなどが取り上げる機会も増えるので、普段は競馬に縁がない人でも、1度くらいはその名を耳にしたことがあるだろう。
有馬記念は、ファンの投票によって出走馬が決まる(上位10頭に優先出走権)というファン参加型のドリームレースだ。オールドファンにとっては1年の競馬を締めくくるレースとして感慨深いものがあり、テンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスによるTTG対決(1977年)は、JRA(日本中央競馬会)屈指の名勝負として今も語り継がれている。
有馬記念を最後に引退した名馬も多い。これまでに、オグリキャップやディープインパクト、キタサンブラックといった名馬が当レースを最後にターフに別れを告げた。
11頭のG1馬が顔をそろえ、レース前には過去最高メンバーとの呼び声も聞かれた2019年も、6頭が有馬記念での引退を表明済みだった。その最後の勇姿を一目見ようと、1,090人が夜を徹して並び、開門時間の7時30分にはすでに、中山競馬場前に4,840人が列をなしていたという。
今回は、さまざまな思いが渦巻く有馬記念当日の中山競馬場を訪れ、場内を散策してみることにした。まず向かったのは内馬場だ。
ディープインパクトを発見!?
中山競馬場の内馬場は大きく2つに分けられる。スタンドを背にして左側には、子供向け遊具が設置してある“うまキッズ広場”やポニーに乗馬できる“ポニーリンク”などがあり、家族サービスにもってこいの場所となっている。この日も、子供たちが元気に遊具で遊んでいた。
右側の馬場内「UMAMI PARK」は、有馬記念当日など、特定日のみオープンするイベント会場だ。
この日のUMAMI PARKには、特製ロゴや出走馬名が書かれた巨大フォトスポットが登場。思い出のためなのかSNS投稿のためなのかは分からないが、家族連れやカップルなどが撮影の順番を待っていた。
地下道を通ってスタンドに戻ると、地下1階42番柱付近に「KEIBA GALLERY」なるものを発見した。
さっそく足を踏み入れてみる。外から見えた馬影の正体は、2006年の有馬記念優勝馬ディープインパクトの像だった。
どうやら有馬記念の特別展が開催されていたようで、ギャラリー内では過去のレース映像やパネル展示を見ることができた。
「KEIBA GALLERY」を出てスタンド1階に移動すると、何やら神社のような鳥居が目に入った。
JRAによれば、「ターフィー神社」とは“はずれ馬券”の供養と中山競馬場の安全を見守るお社だそう。“はずれ馬券”の供養とは、実に競馬場らしいアイデアだ。馬券が外れてしまっても、しっかりと供養すれば次は当たるかもしれないので、捨ててしまわず供養に訪れよう。
のどが乾いたら有馬記念オリジナルカクテルを!
休むことなく歩き回ったおかげ(?)で、少々疲れてきた。乾いた喉も潤したい。とにかく、どこかで休みたい。何か、いいものはないかと思っていたら、スタンド2階の「BAR SATSUKI」が目に止まった。
どうせなら数量限定の「第63回優勝馬『ブラストワンピース』デザインオリジナルカップ」でいただきたいが、まだ残っているだろうか。「がぶりチキン」の悲劇(第3回参照)が脳裏に浮かぶ。不安が入り混じる中、注文するとまだオリジナルカップは残っていた。セーフ。
オリジナルカクテルは、近代競馬発祥の地である英国生まれの“タンカレー ロンドンドライジン”をベースに、ざくろシロップとトニックウォーターで味を整え、最後に甘酸っぱいラズベリーをトッピングした見目麗しい1杯だ。
その味はというと、口の中でざくろの風味が感じられる、フルーティーなカクテルだった。さっぱりとした口当たりで飲みやすく、乾いた喉を潤すのにぴったりだ。
オリジナルカクテルで一息入れると、時計の針はちょうど昼時に。なんだか、お腹も空いてきた。後編では、競馬場グルメから白熱の有馬記念観戦までを怒涛の勢いでお届けする。