日本一の競馬場・東京競馬場を訪れた今回の「競馬場の歩き方」。前編では、「戸松」の和風テイストなフライドチキン「鳥もも」に舌鼓を打ったところまでお届けした。後編ではまず、喉の渇きを潤すドリンク探しから探訪をスタートさせた。
競馬場にバー? しかも限定カクテル?
「鳥もも」の肉汁だけでは喉の渇きを抑えることができず、飲み物を探して東京競馬場を右往左往していると、行列とともに、ある看板が目に飛び込んできた。
パッと見た感じ、競馬場にあるとは思えないおしゃれな造りの「Bar 2400@TOKYO」。注文の前に、少し話を聞いてみた。
――天皇賞にちなんだ限定カクテルがあるそうですが……。
「はい、ございます。今年の天皇賞・秋は紫がキービジュアルですので、その色合いのカクテルを販売しています。カクテルはジンベースなんですが、カシスとレモンの甘酸っぱさとジンジャーエールのすっきりとした味わいが感じられる1杯になっています」
――こういった限定カクテルはレースの開催ごとに提供しているんですか?
「全てのレースではないですが、G1に合わせて用意することが多いですね。昨年はレース当日のみの提供でしたが、今年は開催期間を延ばしています。今年だとオークス、日本ダービー(第2回開催)で2種類提供しました。次回はジャパンカップに合わせて実施(第5開催)します」
――先ほどからすごい行列ですが、今日は限定カクテルをどれくらい販売されていますか?
「大変ご好評いただいており、お昼の時点で230杯以上売り上げております」
注文したカクテルを受けとると、カシスのおかげか、確かに天皇賞・秋のキービジュアルと同じ紫色をしている。ひと口いただいてみると、喉が渇きすぎていたせいか、ジンジャーの刺激が喉にくる。とはいえ、口当たりは甘く、後味もスッキリしているので、年齢や性別を問わず、飲みやすい1杯なのではないだろうか。次回の限定カクテルも期待できそうだ。
店内には競馬ワードにちなんだ商品がいっぱい!
さて、天皇賞・秋の発走が迫り、本命か大穴かと頭を悩ませていたところ、ある店舗の前で足が止まった。店頭のラインアップを見ると「本命ドーナツ」(360円)と「大穴ドーナツ」(200円)なる文字が見える。なんとも競馬場らしく、迷える子羊の背中を押してくれそうなスイーツではないか。
――「本命ドーナツ」と「大穴ドーナツ」、面白いネーミングですね。
「競馬場にちなんだ名前をということで……。本命は二重丸にしてあって、大穴は円を大きくしてあるでしょ? だから大穴。どちらも同じ生地を使っているので、本命ドーナツの方が少しお得ですね」
――どんな味なんですか?
「オーソドックスで、昔ながらの味ですよ。昭和のおじさんが食べて、“なんだよ、昔を思い出すな”みたいな」
――懐かしい感じなんですね。1日でどれくらい売れるんですか?
「日本ダービーの時なんかは、1,200個ぐらい売れますよ。ただね、1回に9個しか作れないんです。だから、そういう日はもう、朝から3人ぐらいが付きっきりで揚げてますよ」
――なんだが、食べたら競馬も当たりそうな気がしますね。
「これを買ったから当たるってわけではないけどね。まあ、それでも運試しで食べてもらって、当たる気になってもらえれば」
――縁起物ですね。よく見れば、「今週の!!三連単」(310円)というサンドイッチもありますが。
「それは、3つの餡を週替わりで使うあんぱん。ほかにも、『直線一気』っていうパウンドケーキとか、まあ、いろいろと考えながらやっていますよ(笑)。みんな、競馬をやったことないんだけど」
最後にまさかの一言が飛び出したが、何はともあれ「本命ドーナツ」と「大穴ドーナツ」を購入した。
天皇賞を予想する前に、さっそく2つのドーナツを実食してみる。同じ生地を使っているだけあって、当たり前だが味は同じだ。奇をてらうでもない、昔ながらの味に心がホッとする。東京競馬場のお土産に買って帰るのもよさそうだ。
1頭だけ別次元! 天皇賞・秋の栄冠を奪取したのは?
第160回を数える今年の天皇賞・秋(G1)は、「天皇陛下御即位慶祝 天皇賞・秋」として開催された。令和最初の天皇賞馬の名誉をかけて、全16頭のうち実に10頭がG1馬という豪華メンバーが集結。3歳馬から6歳馬まで、いずれも実力確かな顔ぶれに、さながら国内最強馬決定戦の様相を呈していた。
そうした中、令和初の天皇賞馬に最も近いと見られていたのがアーモンドアイだ。春の安田記念(G1)では、スタート直後の不利もあってよもやの3着に敗れたが、その強さを信じて疑わないファンは、単勝1.6倍という圧倒的な支持を表明した。
10万人を超す大観衆が固唾を呑む、15時40分。天皇賞・秋のスタートが切られた。心配されたスタートで不利を受けるどころか、抜群の反応を見せたアーモンドアイは少し下げて中段インコースを追走。先頭を行くアエロリッテが1,000m59秒0のタイムでレースを引っ張り、そのまま最後の直線へ。
3番人気のダノンプレミアムが先頭に立ったあたりで、ぽっかりと空いた最内を突いてアーモンドアイが一気の伸び脚を見せる。そのまま並ぶ間もなく突き抜け、2着のダノンプレミアムに3馬身差を付けて快勝を収めたアーモンドアイは、見事、天皇賞馬の栄光をつかみ取った。
異次元の強さで「天皇陛下御即位慶祝 天皇賞・秋」を制し、歴史に名を刻んだアーモンドアイ。令和初の天皇賞馬が牝馬であったことは、もしかするとそのうち、「令和=女性の時代」を象徴する結果だったと語られる日がくるかもしれない。そんな気さえ覚えさせる圧勝劇だった。
11月24日(日)には、東京競馬場で今年最後のレースとなる第39回ジャパンカップ(G1)が控える。日本初の国際招待レースとして、世界に追いつくことを目的に創設された歴史あるG1レースだが、今年は初めて、外国馬の出走なしで開催されることになった。
しかし、マカヒキ、レイデオロ、ワグネリアンと3世代のダービー馬がそろった出走馬の顔ぶれを見ると、熱戦を期待しないわけにはいかない。競馬とは縁がなかったという方も、グルメを味わいながら現地でレースを観戦すれば、一気に競馬の魅力に取り付かれてしまうかもしれない。