営業やサービス業など、他人と頻繁に会う職業に就いている人が気になる疾患の一つに口臭が挙げられるのではないだろうか。口から発せられる臭いがあまりに強烈だと、周囲とのコミュニケーションにも影響を及ぼしかねないし、仕事にも支障が出てくる可能性がある。

自分自身の口臭は気づきにくいが、面と向かって他人に「お口が臭いますよ」と指摘する人もそうそういない以上、セルフケアをしっかりとする必要がある。会社員が抱えがちな体の悩みを取り上げる本連載の2回目は、この口臭の原因や対策についてM.I.H.O.矯正歯科クリニック院長の今村美穂医師に解説してもらった。

  • 強烈な口臭は仕事に支障を及ぼす可能性がある

    強烈な口臭は仕事に支障を及ぼす可能性がある

舌苔の原因はストレスや加齢

口臭を対策するには、まず原因をきちんと理解しておかなければならない。大まかな口臭発生のメカニズムは以下の通りだ。

(1)口腔(こうくう)内の粘膜がはがれ落ちてきて、舌の上にたまっていく
(2)粘膜のほか、食べかすや細菌のかすなどもたまってきて舌の上で腐敗する
(3)これらの食べかすなどに含まれるたんぱく質が、口の中にいる細菌によって分解・発酵される過程でガスを出す。この独特の腐ったような臭いを出すガスが、口臭の素になる

舌を「あっかんべー」した状態で見て、白い部分が目立つ人は要注意。この白い部分が舌苔(ぜったい)である可能性が高いためだ。

この舌苔は、上記(2)における粘膜や食べかすなどが腐敗したもので、舌苔が厚くたまっている人は、口臭をそれだけ出しやすい口腔環境にあると言える。舌苔ができる原因は「唾液量分泌不足」「口呼吸」「雑な歯磨き」「喫煙」「加齢」「ストレス」など、多岐にわたる。

口の中から玉ねぎが腐った臭いが出る恐怖

そして(3)で出されるガスの種類には、玉ねぎが腐ったような臭いの「メチルメルカプタン」、卵が腐ったような臭いの「硫化水素」、キャベツが腐ったような臭いの「ジメチルサルファイド」などがある。

口の中から玉ねぎや卵が腐った臭いが発せられるとしたら、それがどれだけ周囲の人にとってきついかは、想像に難くない。そのような状態では、いくらいい商品やサービスを取引先に提案しても、好印象を抱いてもらいにくいのが普通だろう。

さらにこれらのガスは「揮発性硫黄化合物」と呼ばれ、強力な生体毒性がある。その毒性により歯周組織が破壊されたり、がんの原因である活性酸素を増やしたりすることも明らかになっている。口臭は他人だけではなく、本人にとってもマイナスになるのだ。