夏休みの宿題といえば自由研究だ。他の宿題は先延ばしできても、こればかりは時間も手間もかかる。始業式前日の夜に徹夜して……とはいかない。後で慌てないためにも、早くテーマを決めたほうがいい。そこで駅をテーマにした自由研究を提案する。鉄道趣味に限らない。駅ができた経緯を調べれば、地域の歴史について発見があるし、駅の立地を調べると、地理の発見があるかもしれない。
こんなアイデアはどうだろう。「赤坂駅」と「五十崎駅」の共通点に注目し、同じ共通点を持つ駅を探してみる。ヒントは「山陰本線の飯井駅も仲間」だ。これは地理でも歴史でもなく、国語の研究かもしれない。
赤坂駅は全国に4駅ある。東京近郊に住む人々とっては、東京メトロ千代田線の赤坂駅(東京都)が有名だ。東京放送(TBS)の最寄り駅でもある。戦後は銀座と並ぶ高級歓楽街で、現在も高級料亭が残っている。北関東にも上毛電鉄の赤坂駅(群馬県)がある。単線でホーム1面の無人駅。富士急行の赤坂駅(山梨県)も単線の無人駅。福岡市営地下鉄の赤坂駅(福岡県)は2本の線路が1面のホームを挟む。同じ赤坂駅でも立地や状況はかなり違う。共通点は「赤坂」という駅名だけ。
その赤坂駅と同じ特徴を持つ駅がJR四国の内子線にある五十崎駅(愛媛県)だ。駅名は「いかざき」と読む。単線でホーム1面の無人駅。ローカルな雰囲気だけど、こちらは特急列車が頻繁に通過する。内子線は新谷~内子間を結び、内子駅から向井原駅へ、新谷駅から伊予大洲駅へ予讃線が延びている。このルートは予讃線伊予大洲~向井原間を短絡するルートとして整備され、海沿いの大回りに対して山間部を直進している。
山陰本線の飯井駅(山口県)も単線でホーム1面の無人駅。ただし高架駅だから見晴らしが良いそうだ。ホームから漁港と日本海を一望できるという。
「赤坂駅」「五十崎駅」「飯井駅」の共通点とは難しい問題だ。しかし、中学受験に出そうな問題でもある。固い頭を柔らかくして考えてみて。
正解は「ローマ字で書いたときに回文になる駅名」だ。赤坂は「AKASAKA」、五十崎は「IKAZAKI」、飯井は「II」。逆から読んでも同じ読みになる。
回文とは「逆から読んでも同じ」になる文章だ。駅名では漢字の回文駅名となる「西葛西」(東京メトロ東西線)、「志布志」(JR日南線)、「瀬戸瀬」(JR石北本線)が有名だ。でも、これはひと目でわかってしまうから、クイズとしては難易度低め。「赤坂」「五十崎」のように「いったんローマ字にする」は、なかなか気づかない。
ちなみに、ローマ字にすると回文になるという駅名は他にもある。探してみよう。