最も安く新幹線に乗る方法として、JR西日本の博多南線やJR東日本のガーラ湯沢駅などが知られている。鉄道雑学にとどまらず、テレビなどでお茶の間の話題として紹介される機会も増えてきたようだ。
博多南線博多~博多南間の料金は300円。内訳は乗車券が200円、自由席特急券が100円だ。上越新幹線の越後湯沢~ガーラ湯沢間の料金は240円。内訳は乗車券が140円、自由席特急券が100円だ。スキーシーズンの臨時運行区間だけとはいえ、この240円が新幹線の最低料金となる。ただし、これらはたしかに新幹線車両に乗れるけれど、路線の扱いとしては在来線だ。じつは新幹線ではない。
ところが、7月1日に新幹線の最低運賃記録が更新された。しかも在来線扱いの新幹線ではなく、正真正銘の新幹線だ。ただし、日本ではなく台湾の新幹線である。最低料金は35元、日本円に換算すると約115円になる。区間は台北~南港間で、営業距離は約9.2km。所要時間は8分。台湾高鉄のウェブサイトによると、35元は自由席だという。指定席は40元、ビジネスクラスは205元が設定されているけれど、実際には販売していない。
台湾新幹線こと台湾高速鉄道、略して台湾高鉄は、台湾の中心都市の台北市と、台湾本島南部で台湾第2の都市、高雄市を結んでいる。最速列車の所要時間は約90分。最高時速は300kmだ。料金は自由席が1,445元、指定席が1490元、ビジネスクラスが1,950元。
7月1日に開業した南港駅は高雄駅とは反対側だ。つまり、台湾高鉄の北側の始発・終着駅は台北駅から南港駅に移った。ちなみに南港駅は台北駅より東側にあり、緯度としてはちょっとだけ北にある。台北の北に南港があるとは、品川駅の南に北品川駅があるみたいで、ちょっとややこしい。
なぜ、台北駅から至近距離に隣の駅が作られたか。台湾在住のライターCAM(キャム)さんによると、台北駅の混雑緩和などが理由にあるという。さらに調べてみると、もともと南港駅付近に台湾高鉄の車両基地を作る予定があり、のちに旅客駅も設置できるように工事計画を変更したようだ。この経緯は博多南線に似ている。
CAMさんは台北~南港間の開業初日に乗車し、ブログで報告している。10時台の列車に乗ったところ、なんとガラガラ。乗客はCAMさん1人きりだったそうだ。南港駅は在来線や地下鉄と乗換え可能で便利な駅というけれど、まだまだ周知が足りないのかもしれない。それにしても100円ちょっとで新幹線。乗ってみたい。
(※文中の日本円表記は執筆時の為替レートによる)