JR京葉線舞浜駅といえば、東京ディズニーリゾートの最寄り駅。休日はもちろん、平日も楽しげな家族連れでにぎわっている。2014年度のJR東日本の乗車人員ランキングは57位で、1日平均7万7,029人だ。この数は降車客を含まないので、実際にはほぼ倍の15万人くらいが乗降しているといえそうだ。
舞浜駅は駅舎のデザインなども東京ディズニーリゾートの雰囲気に合わせている。その舞浜駅の駅名の由来は所在地の舞浜である。ここまではよくある話。しかし、その舞浜の地名の由来がおもしろい。米国フロリダ州のマイアミビーチだ。舞浜駅がある浦安市の公式サイトに説明があった。
第1期海面埋立事業で昭和50年11月29日誕生。字名(地区名)「舞浜」は、この地区に大規模レジャーランド(東京ディズニーランド)が建設されるため、米国フロリダ州のディズニー・ワールドの近くにあるマイアミビーチにちなんで命名されました。
舞浜はもともと埋め立て地で、地名がなかった。地名を考案しているときに東京ディズニーランドの候補地となった。そこで、マイアミビーチから「マイ」の音をいただいて「舞」とし「ビーチ」は日本語訳の「浜」として「舞浜」と名づけられた。なにやら楽しそうな地名である。
東京ディズニーランド設置の正式決定は1977(昭和52)年で、開園は1983(昭和58)年だった。舞浜駅の開業は東京ディズニーランド開業から5年後の1988年だ。京葉線のルートはもともと京成電鉄が新線として構想しており、浦安の海岸を埋め立てて大規模に開発する計画だった。東京ディズニーランドは京成電鉄の沿線開発の一環であり、運営主体のオリエンタルランドは京成グループの企業である。
しかし京成グループは経営危機に陥り、ディズニーランド誘致成功を待たずに新路線計画から撤退する。その後、国鉄は千葉臨海地域と武蔵野線方面を連絡し、さらに東京・汐留貨物駅を結ぶ貨物路線を計画した。これを旅客用に転じて開業した路線が京葉線だ。1986年に千葉港(現・千葉みなと)~西船橋間が開業。1988年に新木場駅まで延伸した。このときに舞浜駅も開業している。京葉線東京~蘇我間の全線開通は1990年だった。
舞浜駅は、京葉線建設計画では西浦安駅とされていた。駅名の決定にあたり、ディズニーランドの最寄り駅であることから、ディズニーランド前駅にしたいという要望があったという。しかし、ウォルト・ディズニー・カンパニーの許諾が得られなかったそうだ。駅は街のランドマークである。ディズニー側が駅周辺に「ディズニーランド前」という駅名を関したマンションや商店が現れることを嫌ったとか、鉄道事故でディズニーの名がついた駅名を報道されたくなかった、などという説があるようだ。いまとなってはどれも噂の域を出ないけれど、結果として、地名がそのまま駅名になった。
それにしても「マイアミ・ビーチ」を「舞浜」とは中途半端な気がする。「アミ」はどうした。千葉県には大網駅もあることだし、「舞網駅」や「舞網浜駅」でも良さそうなものだ。そこまでそっくりいただいてしまうことには抵抗があったのだろうか。そもそも「ディズニー・ワールドの近くにあるマイアミビーチ」というけれど、地図を見たら約300kmも離れている。ちっとも近くない(笑)。
ところで、テレビドラマ好きにとってマイアミといえば、ディズニー・ワールドというより、刑事ドラマの『マイアミ・バイス』だ。もしかしたら……と検索してみたら、やっぱりあった『マイハマ・バイス』。2009年に「ATTENTION, PLEASE!」という演劇ユニットが笹塚(東京都渋谷区)の劇場で公演していた。舞浜駅のロッカーが爆発した事件を捜査する刑事が主人公で、「ダンスあり、笑いあり、涙ありの」物語。「魔法を守る為のマイハマの王国」が登場したようで、ちょっと危なっかしいけれど観てみたかった。