東京駅には東海道新幹線のホームが3本ある。このうち、16・17番ホームと18・19番ホームは直線的な構造で、北側は丸の内中央ビルに突き当たる。しかし、14・15番ホームの北側は西へ曲がっていて、地図を見ると東北新幹線の22・23番ホームに沿っている。どうしてこんな形になっているのだろうか。
国鉄時代の計画がJR移行後に消滅
実はこれ、東海道新幹線と東北新幹線の直通計画の名残なのだ。14番・15番ホームは本来、東北新幹線用のホームとして使われる予定だったという。ホームが曲がっている理由は、もともと北側に線路を敷いて、東北新幹線方面の列車を発着させるためだった。また、将来は東海道新幹線との直通も視野に入れていたといわれている。
しかし、東北新幹線の建設が遅れた。一方、東海道新幹線は乗客数が増え続け、既存の16~19番ホームだけでは足りなくなった。そこで1975年、当時の国鉄は、東北新幹線に予定していた14番・15番ホームを東海道新幹線に振り分けた。この後、1982年に国鉄の分割民営化の方針が打ち出され、1987年に東海道新幹線はJR東海の管轄となった。
1991年に東北新幹線がようやく東京駅に延伸する。しかし、このとき既に東海道新幹線の運行本数は上限となっていた。東海道新幹線と東北新幹線とでは管轄会社がJR東日本とJR東海にわかれてしまったこともあり、14番・15番ホームはそのまま東海道新幹線が使うこととなった。このためJR東日本は在来線の12・13番ホームを改造して東北新幹線に対応し、増発に対応するために9・10番ホームも東北新幹線に改造した。そのためにわざわざ中央線の新ホームを高架に新設して、在来線ホームを2つずつスライドさせた。
南北の新幹線直通計画は、東京駅のホームの形を決めただけではなかった。直通運転に対応するための試験車両も作られた。それが国鉄時代の1973年に製造された961形試験車だ。東海道新幹線と東北新幹線は交流方式で電化されている。しかし、日本の交流電力は東日本が50Hz、西日本が60Hzとなっており、東海道新幹線は西日本の区間が長いため60Hz、東北新幹線は東日本の50Hzになっている。つまり、線路の幅が同じというだけでは直通できない。そこで両方の周波数と信号方式に対応する試作車として961形が作られた。
961形は、山陽新幹線と東北新幹線で試験走行を実施したのち、1990年に廃車となった。現在は先頭車両のみ仙台にある新幹線総合車両センターで保存されている。塗装は東北新幹線の色になっているが、製造時から引退までは東海道新幹線の白と青の塗装だったという。
なお、現在、北陸(長野)新幹線は長野駅側が60Hzで電化されており、軽井沢駅 - 佐久平駅間に50Hzと60Hzの切り替え地点がある。「あさま」に使用されている車両は50Hzと60Hzの両方の区間を走行できるため、961形の試験結果がいかされている。現在、技術的には東海道新幹線と東北新幹線の直通運転は可能となっている。
※東京駅(Googleマップ)