寝台特急「北斗星」は3月13日出発、翌14日到着で定期運行を終了した。一部マスコミで「トワイライトエクスプレス」と同様、「北斗星」も運行終了と報じられているけれど、細かく言うとちょっと違う。「北斗星」は「定期列車としての運行終了」で、臨時列車としては8月まで運行予定となっている。定期列車って何? 臨時列車って何? 「北斗星」にはどんな変化がある? 情報を整理しておこう。

寝台特急「北斗星」が臨時列車化され、運行日だけではなく時刻や車両編成も変わる(写真はイメージ)

「定期列車」といわれて、「定期券で乗れる列車」と思った人もいるかもしれない。ここは「定期」の意味の原点に戻ろう。「定期」は、一定の期間全体、一定の期限を示す言葉だ。定期券の他に「定期預金」「定期検査」などの言葉がある。「定期券」は1カ月、3カ月、6カ月など、定まった期間に指定された区間に乗れる乗車券となる。

そうなると、「定期列車」の意味はちょっと変だ。定まった期間ではなく、いつも走っている。鉄道で運行期間を定めた列車といえば、むしろ臨時列車や季節列車だろう。しかし実際は、「定期列車」といえば期間を定めず、いつも走っている列車を指す。なぜこう呼ぶかはわかっていない。もしかしたら、定期というより「定期的」の意味かもしれない。毎日、同じ時刻に「定期的」に出発する列車だ。もしかしたら、この場合の「定期」は24時間かも!?

でも、正しい日本語としては「定例列車」だろうか? いずれにしても、現状では「いつも走っている列車」という意味で「定期列車」と呼ばれている。ちなみに、定期列車は毎日走る列車だけではない。平日のみ、土曜休日のみなど、該当日は必ず走る列車も定期列車だ。

これに対して「臨時列車」はわかりやすい。運行する日や時刻が決まっていない。条件によって運行日の変わる列車が「臨時列車」だ。「不定期列車」でもある。乗客が増えそうな時期を選んで運行する列車である。この臨時列車にも種類があって、「予定臨時列車」と「(真の意味の)臨時列車」に分かれる。違いは運行計画(列車ダイヤ)を作るときの扱いだ。

「(真の意味の)臨時列車」を走らせる場合、その列車の前後の運行時刻を変更する場合が多い。普段のスケジュールに列車を追加するから、臨時特急列車を走らせる場合は先行する定期普通列車をどこかで長時間停車させ、追い越しを設定する。単線の場合はすれ違う駅を変更する必要もある。さらに、運行に支障がある列車の時刻をすべて変更したり、運休させたりする場合もある。

一方、「予定臨時列車」はダイヤ改正のときにあらかじめ運行計画に含んでおき、必要なときだけ走らせる。予定臨時列車が走るという前提で普段の定期列車も設定しているから、臨時特急列車を走らせるときも他の列車の調整は不要。追い越しもすれ違いも、あらかじめ決めた通り。ただし、逆に予定臨時列車が走らないときは、普通列車がなぜか長時間停車する。その日に走っていない列車のために停車しているわけだ。

「予定臨時列車」と「(真の意味の)臨時列車」は時刻表である程度見分けられる。臨時列車の運行日に、その前後やすれ違う列車の時刻を見て変更がなければ「予定臨時列車」。変更が発生すれば「(真の意味の)臨時列車」といえそうだ。ただし、もともと列車の本数が少ない路線など、見分けがつかない場合もある。

国鉄時代は列車番号である程度区別できた。4桁の列車番号のうち、千の位が「9」「8」の場合は「(真の意味の)臨時列車」で、「7」「6」の場合は「予定臨時列車」だった。このしくみはJRでも継承されたけれど、最近は厳密に区分していないようにも見受けられる。

「北斗星」は4月から臨時列車で運転、何が変わる?

寝台特急「北斗星」は、定期列車から臨時列車になって何が変わるだろうか? まず運行日が変わる。定期列車は毎日運転されていた。臨時列車になると、上野発は4月2日から、札幌発は4月3日から、ともに8月下旬までほぼ隔日運転となる。「ほぼ」という理由は、連続して3日間以上走らない日もあるからだ。たとえば5月の連休中は走らない。観光シーズンだけど、この時期に青函トンネルで北海道新幹線に関する作業が行われるという。

発車時刻も変わる。定期列車の「北斗星」は下りが上野駅19時3分発、上りが札幌駅17時12分発だった。臨時列車になると、下りは上野駅16時20分発、上りは札幌駅16時12分発となる。発車時刻が繰り上がるので、定期列車時代に乗り慣れた人は要注意だ。もちろん途中停車駅の時刻も変わる。

この臨時列車の時刻は、もうひとつの寝台特急「カシオペア」と同じだ。いままで「カシオペア」は上り・下りともに週3回、多客期には隔日運行だった。「カシオペア」はデビューから現在まで、ずっと臨時列車として運行されている。臨時列車「北斗星」は「カシオペア」が走らない日に、「カシオペア」の時刻で運行されることになった。

臨時列車「北斗星」では、時刻だけではなく客車も変わる。電源車1両、客車11両という編成は同じ。しかし車内が変わる。

定期列車時代は開放B寝台車が3両、B寝台2人用個室「デュエット」が2両、B寝台個室「ソロ」が1両、B寝台個室「ソロ」+「ロビー・シャワー室」が1両、A寝台2人用個室「ツインデラックス」が1両、A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「ソロ」が1両、A寝台個室「ロイヤル」+B寝台2人用個室「デュエット」が1両、そして食堂車1両だった。

臨時列車になると、開放B寝台車が3両、A寝台2人用個室「ツインデラックス」が2両、A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「ソロ」が2両、A寝台個室「ロイヤル」+B寝台2人用個室「デュエット」が2両、そしてロビーカーが1両と食堂車1両になる。

「北斗星」編成の変化

号車番号 定期列車 臨時列車
1号車 開放B寝台車 開放B寝台車
2号車 開放B寝台車 A寝台個室「ツインデラックス」
3号車 B寝台個室「デュエット」 A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「ソロ」
4号車 B寝台個室「デュエット」 A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「デュエット」
5号車 B寝台個室「ソロ」 開放B寝台車
6号車 B寝台個室「ソロ」+ロビー+シャワー ロビー+シャワー
7号車 食堂車 食堂車
8号車 A寝台個室「ツインデラックス」 A寝台個室「ツインデラックス」
9号車 A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「ソロ」 A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「ソロ」
10号車 A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「デュエット」 A寝台個室「ロイヤル」+B寝台個室「デュエット」
11号車 開放B寝台車 開放B寝台車
  電源車 電源車

つまり、B寝台個室「ソロ」専用車とB寝台2人用個室「デュエット」が消えて、A寝台2人用個室「ツインデラックス」専用車が1両増え、A寝台個室「ロイヤル」を装備した車両が2両増える。ロビーは定期列車時代は半室だったけれど、臨時列車になると1両まるごとロビーカーになる。この車両は「北斗星」が2往復だった時代に、「北斗星3・4号」に使われていたという。

B寝台車が減り、A寝台車が増えるため、臨時列車の「北斗星」は定期列車時代よりもちょっぴりゴージャスになるといえそうだ。ただし定員も減るから、チケットを取りづらくなるかもしれない。

※写真は本文とは関係ありません。