鉄道路線は起点から終点までが1つのまとまり。1本の路線について1つの路線名が与えられる。ところが、もともと1つにまとまっていたにもかかわらず、3つに分断される路線がある。JR東日本の信越本線だ。北陸新幹線が開業すると、約70kmずつ離れた3つの区間になってしまう。どうしてこうなった?
信越本線は群馬県の高崎駅を起点とし、長野駅など経由して新潟駅に至る鉄道路線だった。信州と越州を結ぶから信越本線というわけだ。高崎~直江津間は国が建設し、直江津~新潟間は北越鉄道が建設した区間を買収した。全線開業は1907(明治40)年である。
しかし1997年、長野新幹線(北陸新幹線)が高崎駅から長野駅まで開業したとき、峠の難所として知られた横川~軽井沢間が廃止された。軽井沢~篠ノ井間も並行在来線としてJR東日本から経営分離され、しなの鉄道が発足した。これが1回目の分離である。横川駅と篠ノ井駅との間は営業キロで76.8kmも離れている。
次の分断は2015年3月14日に行われる。北陸新幹線の金沢延伸開業によって、長野~直江津間が並行在来線として経営分離されるからだ。長野~妙高高原間はしなの鉄道北しなの線、妙高高原~直江津間はえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインとなる。長野駅と直江津駅は営業キロで75.0kmも離れている。
こうして来年3月14日以降、信越本線は高崎~横川間(29.7km)、篠ノ井~長野間(9.3km)、直江津~新潟間(136.3km)の3区間に別れ、離れた場所で同じ路線名を名乗ることになる。東西線や南北線のように、各地の地下鉄で同じ路線名になる事例は多いけれど、もともと1つの路線が分離独立する例は珍しい。
JRの路線だと、他に鹿児島本線の門司港~八代間と川内~鹿児島間、東北新幹線全通前の東北本線などが似たような経緯だった。どちらも並行在来線分離の結果である。新ルート建設によって分断された筑肥線のような事例もある。
信越本線に話を戻すと、高崎~横川間はもはや信州も越州も通らないから、高崎線に含めるか、新しい路線名にしたほうが良さそうだ。篠ノ井~長野間も篠ノ井線に含めてしまったほうがすっきりしそう。直江津~新潟間は北陸本線に含めたら……、と思ったけど、北陸本線も金沢駅から直江津駅までJR西日本から経営分離されてしまう。
しかし、信州を通らないのに信越本線という名前も変だ。「越州線」とでもして、3区間とも実態に沿った名前にしたらいいのに。もっとも、手続きが面倒だろうし、看板掛け替えなどのコストがかかるだけだから、当分はこのままだろうか。