JRの路線には、「●●本線」のように「本線」が付く路線名と付かない路線名がある。幹線が「本線」で、「本線」が付かない路線は「支線」。本線と支線は主従関係にある。たとえば東海道本線と伊東線、鹿児島本線と指宿枕崎線などだ。これは前回も紹介したように、国鉄時代に国が通達した「路線のグループ分け」で決められ、現在に継承されている。

特急「しおかぜ」は「予讃線」経由で運転される

ところで、時刻表の路線図を見ると、JR各社の中でJR四国だけは「本線」がない。「予讃線」「土讃線」「高徳線」「徳島線」「牟岐線」「予土線」「内子線」「鳴門線」となっている。このうち予讃線・土讃線・高徳線・徳島線は特急列車の運行頻度も多く、本線の風格もしっかりある。それでも「本線」は付かない。JR四国の路線はすべて支線だろうか? そうだとすると、JR四国の本線はどこにあるのだろう?

JR四国の発足後、「本線」が消えた

じつはJR四国の路線にも「本線」はあった。1909(明治42)年に鉄道院が制定した路線の分類によると、予讃線は「予讃本線」で、支線として内子線や予土線、本四備讃線(瀬戸大橋)が従属していた。土讃線は「土讃本線」で中村線が従属。高徳線は「高徳本線」で鳴門線が従属。徳島線は「徳島本線」として牟岐線が従属していた。これらは国鉄に継承されたから、当時の時刻表には、四国に4つの「本線」が記載されていた。

ところが、国鉄が分割民営化された翌年、1988(昭和63)年6月1日に、JR四国は「本線」の呼び方を廃止してしまった。その結果として、JR四国には「本線」が付く路線名がなくなった。「本線」廃止の理由は、もともと路線数が少なく、本線と支線のグループ分けに意味がなかったからだという。

その2カ月前の1988年4月1日、中村線が土佐くろしお鉄道に転換されたことも関係しているだろう。中村線が切り離されたため、土讃本線に支線がなくなった。支線を持たない本線には意味がない。そこで本線と支線の関係を見直して、すべて平等に扱おう、となったようだ。

JR四国は新造した車両の形式番号に、「2000系」「8000系」など大手私鉄風の4桁の形式名を使ったり、独自のICカード乗車券を持たずにJR西日本のICOCAを採用したりするなど、JRグループの中では独特の企業文化を持っているようだ。それがフィギュアメーカーとタイアップした「海洋堂ホビートレイン」や、気動車を0系新幹線そっくりに改造した「鉄道ホビートレイン」の運行など、ユニークな施策につながっているかもしれない。