「特急列車同士の追い越し」は珍しい現象のように思えるけれど、実は新幹線では当たり前の現象だ。新幹線の列車はすべて「特急」だから、東海道・山陽新幹線では「のぞみ」と「ひかり」、「こだま」の追い越しが日常茶飯事である。東北新幹線でも最速の「はやて」が他の列車を追い越していく。上越新幹線や長野新幹線でも、臨時列車のなかには定期列車に追い越される列車がある。
ところが、JRの在来線ではとても珍しい現象になる。在来線では特急が「王様」で、すべての列車に優先される。新幹線網の整備により在来線の特急も減っているため、特急同士が競合するダイヤも少なくなった。それでも特急同士が追い越す場面がある。それは、機関車が客車を牽引する「寝台特急」を、最新式の電車特急が追い越す場合だ。
客車特急が電車特急に追い越される
例えば、大阪と札幌を結ぶ寝台特急「トワイライトエクスプレス」の場合、下り札幌行きは鯖江駅で特急「サンダーバード21号」に追い越される。上り大阪行きは北海道内でディーゼル特急「スーパー北斗16号」、本州で「サンダーバード14号」「雷鳥16号」「サンダーバード18号」と、なんと4本の特急に追い越されてしまう。
大阪と青森を結ぶ寝台特急「日本海」の場合、下り札幌行きは「サンダーバード41号」(注)「サンダーバード43号」に追い越される。上り大阪行きは「しらさぎ54号」「サンダーバード6号」「雷鳥8号」に追い越される。
※注: 2009年9月30日までは「雷鳥41号」
寝台特急が電車特急に追い越される理由は、機関車が客車を牽引するタイプの列車が電車特急よりも遅いため、進路を譲る必要があるからだ。また、機関車を受け持ち区間ごとに交換するため、停車時間が長くなるという理由も。さらに寝台特急の場合、目的地に朝早く着きすぎても不便なため、時間調整のため停車することもある。
過去の例としては、九州行き寝台特急も九州内で電車特急に追い越されていた。また、JR北海道では、昼間の特急同士が追い越しを行うという例もあった。札幌と旭川を結ぶ臨時特急「旭山動物園号」が、後続の稚内行き「スーパー宗谷1号」に抜かれた。しかし、2009年10月1日のダイヤ改正で「スーパー宗谷1号」の発車時刻が繰り上がったため、この珍現象は解消された。
このほかにも、臨時特急が設定される場合、混雑した区間では定期列車に追い越されるダイヤになる場合もある。新しい時刻表が発売されるたびに珍現象を探す、というのも鉄道ファンの楽しみのひとつだ。