線路1本。ホーム1面。駅舎のない無人駅は、鉄道ファンに「棒線駅」と呼ばれる。バスや路面電車の停留所を一回り大きくしただけだが、そのわびしさ、はかなさが魅力でもある。そんな棒線駅に遊び心を加えたユニークな駅がある。なんと、外から見ると音符の形をしていて、「棒線駅」というより「音符駅」だ。いったいなぜこんな形になったのだろうか?

駅の名は「ハーモニーホール」

音符型の駅の名は、福井鉄道福武線ハーモニーホール駅。この近くに福井県立音楽堂があり、その愛称が「ハーモニーホール」だ。ハーモニーホール駅はこの施設に行く人のために設置された。ハーモニーホールがオープンしたのは1997年9月23日、ハーモニーホール駅の開業はその3日前の9月20日に開業した。

4分音符を倒したような、あるいはフラットのような形の駅が実在する

駅名にもト音記号が(2009年当時)。奥の建物は福井県立音楽堂ハーモニーホール

音楽堂への最寄り駅ということで、音楽にちなんだデザインとした。待合所の屋根が涙型で、音楽記号のフラットがモチーフだそうだけど、棒線のホームと合わせると4分音符を横にしたようにも見える。音楽用語でいうと、待合所が符頭(たま)、ホームが符幹(ぼう)だ。音楽に縁のある駅らしく、駅名標も音楽をテーマとしたデザインになっている。

もっとも、待合所の丸い屋根は遊び心だけではなく、積雪を防ぐためでもあるとのこと。間もなく訪れる雪の季節に、音楽ファンを守る頼もしいデザインというわけだ。

ちなみに、福井鉄道ではハーモニーホールのコンサートチケットを持っている場合、同社のどの駅からでも片道運賃が大人200円、小児100円になる。また、ハーモニーホールの駐車場を利用したパークアンドライド制度もある。鉄道と音楽ホールで、サービスも"ハーモニー"を奏でているようだ。