夜行列車といえば、眠っている間に移動でき、時間を有効に使える便利な列車だ。しかし、新幹線の整備や低料金のビジネスホテル、夜行バスの普及により、JRの夜行列車は減っていく一方だ。そんなご時世の中、夜行列車を走らせる私鉄がある。
その夜行列車は「尾瀬夜行23:55(ニイサンゴーゴー)」「スノーパル23:55(ニイサンゴーゴー)」だ。運行会社は東武鉄道で、どちらも東武浅草駅を23:55に出発する。この出発時刻が列車名の由来になっている。
「尾瀬夜行23:55」は、尾瀬散策の観光客向けの列車だ。運行期間は6月から10月までの金曜日で、土曜日に走る日もある。浅草駅を23時55分に出発した後、北千住駅、新越谷駅、春日部駅に停車し、東武日光線・鬼怒川線で新藤原駅へ。ここから野岩鉄道に乗り入れて、翌日早朝の3時18分に会津高原尾瀬口駅に着く。ここから列車利用者専用のバスに乗り継ぎ、6時10分に尾瀬国立公園の沼山峠に着く。
「スノーパル23:55」は会津高原に向かうスキーヤー向けの列車だ。運行期間はおもに12月から3月までの週末である。浅草駅を23時55分に出発した後、新藤原駅までは「尾瀬夜行23:55」とほぼ同じ。ただし、「スノーパル23:55」は新藤原駅でしばらく停車して仮眠時間を設けた後、5時33分に会津高原尾瀬口駅に着く。ここからスキー場への専用バスに乗り換える。
使用車両は東武鉄道の300系電車だ。かつて急行「りょうもう」で使われていた1800系を改造した車両で、リクライニング機能はないけれど乗り心地はまずまず。なお、「尾瀬夜行23:55」「スノーパル23:55」ともに下りのみ設定されており、上り列車はない。
これらの東武鉄道の夜行列車に乗るには、東武鉄道と東武トラベルが募集するツアーに参加する必要がある。つまり、現地のバスやスキー場などのクーポン券をセットで購入する必要があり、列車のきっぷだけを購入することはできない。
乗車時間が短いため、目的地までぐっすり眠って……、とはいかないかもしれない。しかし、「到着地で1日をフルに使える」という夜行列車のメリットが生かされている。