4月22日、新潟県佐渡市で放鳥したトキのペアから雛鳥が誕生したと報じられた。自然界で36年ぶりという。ところで、「とき」といえば上越新幹線の列車名にもなっている。「とき」という列車名も一度"絶滅"し、復活した列車名だ。
「とき」という列車名の誕生は1962年。上野~新潟間を上越線経由で結ぶ特急列車だった。所要時間は4時間40分。使用車両は161系で、151系「こだま形」の勾配区間用だった。161系は後に151系とともに181系へ改造されている。命名の由来はもちろん、新潟県に生息する天然記念物のトキだった。当時はまだ、佐渡島でわずかに生息が確認されていた。在来線時代の特急「とき」はその後、約20年間にわたって上越線を走り続けた。
1982年に上越新幹線が開業する際、愛称名の公募が実施された。このとき堂々の1位になった名前が「とき」だった。20年間の実績があるから当然だ。しかし、新幹線の"花形"ともいえる速達タイプの列車に「とき」の名は採用されず、「あさひ」となった。当時すでに野生のトキは絶滅寸前であった。新しい列車名としては縁起が悪かったともいわれている。
列車名の「とき」が"絶滅"したのは1997年10月のダイヤ改正だった。従来の新幹線の愛称は速達タイプと新幹線の各駅に停車するタイプで分けられていた。だがこのときのダイヤ改正をきっかけに、列車名は運転区間を基準とするように改められた。東京~新潟間の列車名は「あさひ」が受け継ぎ、東京~越後湯沢間の列車は「たにがわ」になった。新潟に行かない列車を「とき」とは呼べないという判断だったのだろう。
ちなみにこのとき、東北新幹線「あおば」も消滅している。各駅停車タイプの「あおば」だったが、仙台より北に向かう列車は「やまびこ」が継承した。「あおば」は仙台の青葉城にちなんだ名前だけに、仙台に届かず途中駅で折り返す列車には使えなかった。
さて、いったん消滅した「とき」だが、2002年に復活している。その理由は前回も紹介した通り、長野新幹線「あさま」と「あさひ」の乗り間違いを解消するため。「あさひ」の名を「とき」に変更したというわけだ。列車名の由来となったトキが自然界で復活したこともあり、上越新幹線「とき」もしばらく安泰だろう。どちらも今後に期待したい。