JR東日本は3月17日のダイヤ改正でE5系を4編成追加投入した。4月27日からさらに1編成を追加し、合計11編成となった。デビュー当初、E5系は「はやぶさ」専用だったが、現在は「はやて」「なすの」「やまびこ」でも活躍中だ。「はやぶさ」と「はやて」は列車名が似ており、「はやて」のE5系投入で乗り間違える人が増えるのではないかと心配だ。

東北新幹線E5系は順調に増殖中

そういえば、かつては「他の列車と間違えやすい」という理由で消滅した列車名があった。上越新幹線の「あさひ」だ。長野新幹線「あさま」と間違えやすいという理由で廃止になっている。

「あさま」デビューから5年後、「あさひ」消滅

「あさひ」は1982年の上越新幹線開業と同時に走り始めた。当時は速達タイプの列車が「あさひ」で、新幹線の各駅に停車するのが「とき」だった。「あさひ」の名前の由来は、朝いちばんの太陽が持つ力強さのイメージから。東海道・山陽新幹線と同様、「光系」「音系」の名前を付けたいという意向があったようだ。列車名は公募されたが、じつは「あさひ」は18位だったという。1位は「とき」だったが、2位以下は選考委員からことごとく反対意見が出た。ランク外の「つばめ」も検討されたものの、新潟県につばめは飛来しないとわかって取りやめとなったという。

「あさひ」の"受難"の始まりは15年後。1997年の長野新幹線(北陸新幹線)の開業で、「あさま」が走り始めてからだ。「あさま」はもともと在来線の長野行の特急列車で、そのまま新幹線列車に格上げとなった。これは自然の流れだ。ところが、東京~高崎間の駅の新幹線ホームに「あさひ」「あさま」が停車するようになると、乗り間違える利用者が増えてしまった。

誤乗対策のひとつとして、たとえば発車案内のLED表示の色を変え、「あさひ」は赤色、「あさま」は黄色とするなどの工夫も行われた。それでも乗り間違える客が後を絶たず、2002年に「あさひ」の名称は消滅し、「とき」となった。

「はやぶさ」「はやて」は行き先が同じだからOK!?

「あさひ」「あさま」のような乗り間違いは、「はやぶさ」「はやて」では起きていないのだろうか? どちらも上から2文字まで同じで、「はやぶさ」の愛称が決まったときは心配する声もあったようだ。しかし、いまのところ苦情が多いという報道はあまり聞かない。「はやぶさ」は4文字、「はやて」は3文字で間違えにくいから? それとも全車指定席のため、乗客がきっぷをよく確認するからだろうか?

「あさひ」「あさま」の場合は、行先が新潟と長野で別方向だった。列車名に続く番号が違っても、自由席に飛び乗る客は数字まで気にしなかったかもしれない。乗り間違えて高崎を過ぎれば、長野に行くつもりが新潟方面、新潟に行くつもりが長野方面になってしまう。

一方、「はやぶさ」「はやて」はどちらも東北方面へ向かう列車だ。全車指定席だから発車前に気づく場合も多いし、万が一乗り間違えたとしても、停車駅や特急料金に多少差がある程度。こちらが心配するほど乗り間違いは起きにくいし、間違えたとしてもクレームを入れるほど困らないから……、ということなのかもしれない。