新幹線に乗車するには、乗車券の他に新幹線特急券が必要だ。新幹線は長距離輸送が主な目的だから、隣の駅まで乗ったとしても、乗車券と新幹線特急券の合計はそれなりの金額になる。ちなみに、最も短い駅間は東北新幹線の東京 - 上野間3.6kmだ。乗車券は160円、新幹線の特急券は自由席の特別料金で840円と設定されており、合計1,000円かかる。これが新幹線の最低料金だ。しかし、九州には290円で新幹線車両に乗れる区間があるという。

沿線市民の要望で誕生した「博多南線」だ

290円で新幹線に乗れる区間、それは山陽新幹線の博多駅から博多南駅までの区間だ。時刻表の地図を見ると、博多から博多南までの短い路線が描かれている。在来線と同じ黒い実線となっているけれど、実はこの路線は新幹線車両で運行されている。路線名は「博多南線」で、正式には新幹線区間ではなく、在来線の扱いになっている。これが表題を「新幹線に乗車できる」ではなく、「新幹線『車両』に乗車できる」とした理由である。

山陽新幹線博多駅コンコースの「博多南線」案内

乗車券+特急券で290円

博多駅から博多南線に乗るには、8.5km分の乗車券190円と、この区間に特別に設定された特急料金の100円が必要だ。合計290円。これで新幹線車両に乗れる。使用する車両は山陽新幹線の「こだま」や「ひかりレールスター」で使われる車両だ。山陽新幹線で博多に着くと、「博多行」の表示が「博多南行」に変わる。在来線扱いでひと駅だけ走るけれど、新幹線車両を使用するので特急料金が設定されているらしい。

博多南駅は簡素な駅舎

車両基地の片隅に造られたホーム

博多南駅と博多南線は、博多南駅周辺の人々の要望で設置された。もともと博多南駅には山陽新幹線の車両基地がある。ここに駅があれば、博多駅まで一直線で行ける。そこで沿線住民の要望を叶える形で、車両基地の片隅に博多南駅が設置された。博多南線ができるまでは、この地区から博多までクルマで1時間ほどかかった。それが博多南線では約10分である。運行間隔は通勤時間帯はほぼ30分おき、日中はほぼ1時間おきとなっている。

ちなみに、上越新幹線の越後湯沢からガーラ湯沢までの区間も同様に在来線(上越線支線)の扱いで、乗車券は140円、特急料金は100円、合計240円で乗車できる。ただしガーラ湯沢駅はスキーシーズンのみ利用できる臨時駅で、夏期は乗車できない。