映画『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が21日に全国公開される。同作品では、1964(昭和39)年の東京オリンピック開催前後の出来事が描かれるという。
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズといえば、当時の鉄道に関する描写も緻密で鉄道ファンをうならせる。1作目では上野駅に到着するC62形蒸気機関車が、2作目は151系ビジネス特急「こだま」が登場した。新作ではいよいよ東海道新幹線0系が走り出す。
東海道新幹線の開業は、東京オリンピック開会式9日前の10月1日。『ALWAYS 三丁目の夕日'64』にも新幹線が登場する。その最後尾が12号車になっているところに注目だ。そう、開業当時の新幹線は12両編成だった。同作品の制作会社「ROBOT」は、映画『RAILWAYS』シリーズも手がけているだけに、鉄道の時代考証もしっかりしている。
「ひかり」16両、「こだま」12両だった時代も
東海道新幹線は1964年に東京~新大阪間で開業した。0系は当時12両編成で、1号車から6号車までが2等車、7号車と8号車が1等車、9号車から12号車までが2等車だった。ちなみに1等車は現在のグリーン車、2等車は現在の普通車である。当時はまだ食堂車はなく、6号車と9号車にビュッフェ(軽食喫茶風の施設)がついていた。食堂車の登場は1975年、山陽新幹線の博多開業時だ。
1964年当時のダイヤは、「ひかり」「こだま」が1時間あたり1本ずつ。毎時0分が「ひかり」、毎時30分が「こだま」だった。当時の最高速度は時速210km。東京~新大阪間の所要時間は「ひかり」が4時間、「こだま」が5時間だった。
東海道新幹線が16両編成となったきっかけは1970年の大阪万博だったという。その後、「ひかり」に人気が集中し、「こだま」の利用者が減ってきたため、1980年代にこだま用編成は12両に短縮される。しかし「ひかり」「こだま」の運用を統一するため、1989年、東海道新幹線のすべての車両が16両編成に統一された。
現在の東海道新幹線は16両編成で、運転間隔は最短で3分。最高速度は時速270km。所要時間は「のぞみ1号」の場合で2時間25分となっている。到達時間が早くなったこともあり、食堂車は廃止されている。そんな現代から開業当時を振り返ると、当時の「夢の超特急」も、意外にのんびりしていたように感じられる。
さて、映画『ALWAYS 三丁目の夕日'64』に登場する新幹線は「ひかり」か「こだま」か? 登場人物の誰が乗るのか? その目的地はどこか? 当時の世相を振り返ると、ああ、あそこだろうな、と予想がつく。ちなみに映画に登場する12号車は、運転席窓に製造会社の記号も記されている。東海道新幹線の開業以降、0系は製造会社ごとに記号が振られていて、汽車製造が「K」、近畿車輛が「S」、川崎車輛が「R」、日本車輌が「N」、日立製作所が「H」、東急車輛製造が「T」だった。映画に登場する0系はどの記号か、スクリーンで確かめてみてはいかがだろうか?
本誌鉄道カテゴリでは、明日1月15日に松尾かずと氏の連載「昭和の残像 鉄道懐古写真」第42回を掲載予定です。鶴見線から引退する直前の旧型国電73形を特集します。お楽しみに