JR東日本は19日より、東北新幹線「はやぶさ」で活躍中のE5系車両を「はやて」「やまびこ」にも導入する(詳細は本誌既報の通り)。これにともない、200系車両が東北新幹線から姿を消すという。今後もゆるやかに車両の交代が進められ、E5系が東北新幹線の標準になっていくことだろう。
時速320kmでの運転が可能なE5系車両は、先頭車両の独特の形状が特徴だ。また、グリーン / ホワイト / ピンクの帯という斬新な塗色で、遠くからでもすぐわかる。
このカラーリングは、「常盤グリーン」「飛雲ホワイト」「はやてピンク」と名付けられており、JR東日本の環境への思いが込められているという。
「常盤グリーン」は「ときわぐりーん」と読む。「常盤」という文字からJR常磐線をイメージする人がいるかもしれないが、字も由来も違うから要注意だ。
「常盤グリーン」のほうは、色の名前「常盤色(ときわいろ)」に由来している。「常盤色」は「常磐色」とも書き、JIS規格にも、規格番号JISZ8102「物体色の色名」で「常磐色」と登録されている。「常磐」の本来の意味は「つね(常)に変わらない」で、杉や松など、季節にかかわらずつねに緑色の木を「常磐木(ときわぎ)」という。その常磐木の葉の色から「常磐色(常盤色)」が生まれた。
一方、「常磐線」という路線名は、「常陸国」(現在の茨城県)と「磐城国」(現在の福島県東部)を結ぶ路線のため、地名を1つずつ取って名付けられた。もっとも、中距離電車を除く上野~取手間の快速電車や常磐緩行線では、常盤色に近いエメラルドグリーンをラインカラーにしているから、「常盤色」と「常磐線」はまったくの無関係とはいいきれないかもしれない。
過去も未来も「緑」が東北新幹線のシンボルに
E5系車両の車体色は、時速360kmでの運転をめざして作られた試験用車両「FASTECH 360 S(E954形)」を継承しているが、これはE5系とは異なる車両で、色もすべて同じというわけではない。当時の報道発表資料によると、「FASTECH 360 S」の塗色は車体の上半分が「イーストグリーン」、下半分は「パールホワイト」、そして帯は「シルバーメタリック」だった。
「イーストグリーン」の名はJR東日本のコーポレートカラーに由来し、これに銀色と白色を合わせて、「先進の矢羽根」のイメージとしていた。
これに対して、E5系は上半分が「常盤グリーン」、下半分が「飛雲ホワイト」で、帯は「はやてピンク」だ。「飛雲ホワイト」と「はやてピンク」は、E2系の東北新幹線用の編成と同じ色(E2系では、帯の色は「つつじピンク」と紹介されていた)。この2色を引き継ぐことで、E5系はE2系を継承する電車という意味合いを持たせたのだろう。
そして「イーストグリーン」を「常盤グリーン」としたところに、「企業の色というより自然を意識した名前を」という、環境への思いが感じ取れる。
E5系車両の拡大導入を受けて東北新幹線から引退する200系も、当初は窓枠に緑色をあしらっており、「雪解けの新芽の色」と報道されたこともある。今後、E5系車両が東北新幹線の標準となっていくことで、「緑」は再び東北新幹線のイメージカラーとして定着していくのだろう。
E5系と「初音ミク」の色は似ている!?
余談だが、「はやぶさ」としてデビューする前に、E5系車両を使う列車の愛称を公募したところ、2位に「はつね」が入ったという。E5系のカラーリングが「初音ミク」に酷似していたからと思われる。
同キャラクターの人気をうかがわせるエピソードともいえるが、実際のところ、「初音ミク」が世に出たのは2007年。これに対し、E5系車両の"前身"ともいえる「FASTECH 360 S」(E954形)が登場したのは2005年で、「初音ミク」より約2年も前のことだ。
本誌鉄道カテゴリでは、明日11月13日に松尾かずと氏の連載「昭和の残像 鉄道懐古写真」第34回を掲載予定です。東急電鉄のステンレスカーの歴史を、懐かしの写真とともにたどります。お楽しみに!