JR東日本の東海道線の普通列車は、ときどきレアな電車が走っている。いつも東海道線で東京・横浜方面へ通勤するアナタ、「あれ、いつもと同じ電車に乗ったつもりだけど、なんだか雰囲気が違うな」と、軽い違和感を覚えた経験はないだろうか。それは決して気のせいではないかもしれない。じつはその電車、横須賀線用の車両かもしれないのだ。
東海道線の普通列車には、おもに2種類の電車が使われている。E231系と211系だ。211系は国鉄時代末期から製造された形式で、JR東日本、JR東海などに継承された。E231系はJR東日本が開発した車両で、東海道線だけではなく、中央・総武線、山手線、常磐線など広く使われている。ちなみに型式名の最初の「E」は、JR東日本の「East」に由来する。
外観は異なるが、211系もE231系も車両の編成はほぼ同じ。10両編成と5両編成があり、10両編成の中間に2階建てグリーン車がある。E231系の普通車はロングシートがメインで、先頭車など一部車両がセミクロスシートに。211系もロングシート車が増えたが、セミクロスシートの車両も健在だ。どちらの車両も、「湘南色」と呼ばれるオレンジとグリーンの帯を巻いている。いまや東海道線のみならず、湘南新宿ラインや宇都宮線、高崎線のトレードマークとなった。
東海道線では、この2種類の電車に乗る機会が多いだろう。しかしオレンジとグリーンの帯を巻いているにもかかわらず、211系でも、E231系でもない電車が少しだけ走っている。
たとえば、もともと横須賀線用に製造されたE217系だ。普段と同じオレンジとグリーンの帯の電車に乗ったけど、ちょっと雰囲気が違う……、そう感じたら、それはきっとE217系に乗ったせいかもしれない。
湘南色のE217系、きっかけは「湘南新宿ライン」
E217系は、横須賀・総武快速線の113系電車を置き換えるために作られた形式だ。特徴は前面運転台中央にある貫通扉。横須賀・総武快速線は品川~錦糸町間で地下トンネル区間があるため、緊急時の非常脱出口として扉が設置された(後に、デザインは変えずに貫通扉を廃止したタイプも登場)。
この貫通扉のおかげで、E217系は長らく横須賀・総武快速線の専用電車として認知されていた。しかし2006年に転機が訪れる。E217系のうち、15両編成3本が東海道線に「転勤」となった。その理由は湘南新宿ラインの増発だった。
湘南新宿ラインは、新宿を経由して宇都宮・高崎方面から東海道線、横須賀線を直通する列車として設定され、開業当初はさまざまな形式が使われていた。その後、増発にともない普通列車と快速列車の車両型式をE231系に統一した。横須賀線の一部区間にもE231系が乗り入れたことで、E217系は余った。一方、東海道線はE231系の一部が湘南新宿ラインに移ってしまったため、車両不足になった。
そこで、E217系を東海道線に移籍させて調整したというわけだ。E217系は11両編成と4両編成の組み合わせで15両編成となっていたが、東海道線に移籍する際、10両編成と5両編成に組み替えられた。
東海道線に移ったE217系は、後に2編成が横須賀線に戻された。いまや東海道線のE217系はたった1編成の"レア車両"となっている。窓や座席の配置が211系やE231系と微妙に異なるため、正面を見なくても違いに気づく利用者がいるかもしれない。
東海道線の"レア車両"といえばもうひとつ、E233系も存在する。
E233系は京浜東北線や中央線快速などに導入された車両で、E231系の改良版ともいえる存在。東海道線には現在2編成が投入されている。こちらはE217系のような「転勤」ではなく、初めから東海道線用に製造された。
東海道線のE233系は今後も増備されていくようだ。E233系が増えれば、国鉄時代からの211系が置き換えられていく可能性もある。ひょっとしたら、将来、211系を珍しいと思うときが来るのかもしれない。