クルマを運転中、カーナビで「あと400mで交差点を右折」などと言われても、400mの距離感がイマイチよくわからない。海で「5mの波」って言われても、どのくらいの高さだろう。そんなとき、身近な鉄道に関する長さを覚えておくとわかりやすい。「1円玉の直径は2cm」を知っていると便利なように、鉄道に関するサイズを知っておくと便利かもしれない。

ほとんどの学校にあるプールの長さは25m。これは競泳用の規格で「短水用」に分類される。でも卒業してしまうと、「25mプールってどのくらいの長さだっけ?」となるだろう。そんなときは東海道新幹線を思い浮かべよう。東海道新幹線の車両は1両の長さが25mだ。2両で50mだから、運動会の50m走は東海道新幹線の2両分の距離になる。ちなみに東北新幹線も同じ規格だけど、在来線に直通する「つばさ」「こまち」は在来線に合わせて約20mとなる。

東海道新幹線の1両の長さは25m

在来線電車の1両の長さは20m

東海道新幹線は16両編成だから、1編成は25m×16両で400mだ。実際には先頭車が約2m長いので約400mとなる。東京タワーの高さ(333m)より長い。カーナビで「あと400m」と言われたら、東海道新幹線の1編成ぶんだと思えばわかりやすい。ちなみに東急池上線の五反田~大崎広小路間は約300mだから、新幹線1編成よりも短い駅間距離である。

「1,067」「1,435」「1,372」線路幅がどれも中途半端な理由

壁や樹木の「高さ5m」は、簡単に想像できるだろうか。「僕の身長は170cmだから、えーと、身長の高さの約3倍かな」と考える人も多いだろう。鉄道の施設では、電車に電気を送る架線の高さが、「レール上面から4.7m」という基準だ。だから線路際の道から架線を見上げると、そこがだいたい5mの高さと言える。もっとも、架線は地下鉄や古いトンネルではちょっと低い場合があるという。それでも「だいたい5m」の範囲といえる。

ホームの高さは、都心の電車専用ホームだと1.1m。新幹線は1.25m。地方の古いホームだと0.92m。だいたい1mくらいだろうか。ホームから線路に物を落とした時は、傘では絶対に届かない。危険だから、すみやかに駅員さんを呼ぼう。専用のマジックハンドで拾ってくれる。

ほかに目安になりそうな長さを挙げると、山手線など多くの在来線電車1両の長さは20m。山手線は11両編成で220m。京浜東北線や中央線は10両編成で200m。ただし、京浜急行や地下鉄日比谷線など、ちょっと短めな電車は18m。地下鉄銀座線はさらに短くて16mだ。

京急の線路幅は1,435mm

都電荒川線の線路幅は1,372mm

線路の幅は、JR在来線などほとんどの路線では1,067mm。中途半端だけど、これはヤード・ポンド法の3フィート6インチに由来する。新幹線や関西の私鉄、京浜急行、京成電鉄の線路幅は1,435mm。これは国際標準とされる幅で、由来は19世紀の馬車。馬車の轍が4フィート8インチで、鉄道では曲線を通過するために0.5インチ広げた。これが1,435mmである。京王電鉄の京王線、都電荒川線など路面電車のレールの間隔は1,372mmで、これはヤード・ポンド法の4フィート6インチ。馬車鉄道時代から続くサイズという。

身近なところでは、SuicaなどIC乗車券は長辺が8.6cm、短辺が5.4cm。クレジットカードなどと共通だけど、ちょっと中途半端だ。自動販売機で買える乗車券は、長辺が5.75cmで、これも中途半端。ただし短辺は約3cmで、こちらは覚えておくと便利かもしれない。ロールケーキやようかんを切るとき、乗車券の短辺の長さを思い出しながら切ってみてはいかがだろうか?

マイコミジャーナルでは、「鉄道トリビア」でおなじみ杉山淳一氏執筆「いまさら聞けない『鉄道ニッチ用語』(その1) 列車の愛称・俗称編」を近日掲載予定です。乞うご期待!