香川県といえば讃岐うどん。このイメージもすっかり定着した印象があります。当の香川県も、「私たちはうどん県です」と宣言するほど。香川県を代表する駅で、四国の玄関口として栄えた高松駅も、今年から「さぬき高松うどん駅」の愛称が付けられました。
7月11日には、「かけうどん」「ぶっかけうどん」「釜あげうどん」「釜玉うどん」「ざるうどん」をデザインした5種類の記念入場券も発売されました。ちなみに毎月11日は、全国製麺協同組合連合会(全麺連)が定めた「めんの日」だそうです。
今年のゴールデンウィークに岡山を旅行した際、筆者は瀬戸大橋を渡って高松も訪れました。日中ほぼ30分間隔で運転されている快速「マリンライナー」に乗れば、岡山駅から高松駅まで1時間足らず。電車から降り、ふとホームの駅名標を見ると、一番下に「さぬきうどん駅」と書かれ、「き」と「う」の間に印鑑で押したような「高松」の文字が。現在の愛称に落ち着くまでの経緯が、少しだけ垣間見えた気がしました。
1988年に瀬戸大橋が開業し、宇高連絡船が廃止されるまでの高松駅は、名実ともに「四国の玄関口」だったといえます。かつての駅ビルは地上5階建ての重厚な雰囲気の建物で、連絡船から国鉄へ乗り換える人々でにぎわったそう。駅構内も、連絡船を介して本州から四国へ向かう貨物列車や、四国の各都市を結ぶ優等列車が多数行き来していたとのこと。
「連絡船の甲板で、瀬戸内海を見ながら食べるうどんは最高にうまかったな」、昔の職場で、宇高連絡船の現役時代を知る大先輩が話したのを覚えています。「いまも高松駅に『連絡船うどん』っていう店があるはずだから、四国を旅行するなら行ってみな」。
現在の駅舎は2001年5月に開業したもので、重厚さは薄れたものの、現代的で明るくおしゃれな建物に生まれ変わりました。ホームから改札口、駅前広場まで段差がなく、バリアフリーも意識した設計となっています。そんな駅舎のすぐ近くに、「連絡船うどん」の店舗がありました。ホームだけでなく、駅の外からも注文できる構造になっていました。
この日はちょっとだけ奮発して「じゃこ天うどん」(470円)を注文。宇高連絡船で売られていたうどんを受け継いだ味とのことで、「あの大先輩が食べたのも、こんな味だったんだろうか……」と考えつつ、麺をすすりました。味の評価は食べる人によって分かれるところですが、駅の立食いうどんとしては抜群にうまいし、宇高連絡船の現役時代に思いをはせることで、さらに特別な味になるように感じられました。
高松駅はいまも、寝台特急「サンライズ瀬戸」、特急「いしづち」「しまんと」「うずしお」、快速「マリンライナー」などが発着し、JR四国の駅では最多の乗車人員(昨年度は1日平均1万2,154人)を誇る一大ターミナル駅です。四国の玄関口として繁栄してきた同駅は今後、「うどん県。それだけじゃない香川県」を代表する駅「さぬき高松うどん駅」としても、さまざまな話題を振りまいていくことでしょう。