二人の子供に恵まれ幸せな夫婦生活を送るリンダに、ある日突然襲いかかる夫の死。これが1日目、DAY1。
そして、DAY2の文字─―。翌朝、目覚めると誰もいないベッドの隣。しかし、シャワールームからはなぜか音が。覗いてみると……死んだはずの夫が平然と、いつものようにシャワーを浴びている!
いきなり混乱のルツボに叩き込んでくれる予告編、まずはご覧ください。
配給のクロックワークスによると「サンドラ・ブロック演じる主人公・リンダの視点から見ていただけると、混乱に陥ったリンダに自分が重なり、より臨場感を感じていただけると思います」というように、観客は主人公であるリンダと同様、混乱の真っ只中に放り込まれます。一体、何!? 何が起こってるの?? とても印象的で、好奇心をそそるオープニングの予告編です。
寝て、朝起きるたびに夫が死んだり、生きていたり……。何かが狂っている、と感じるリンダに、「ただの夢だよ」となだめる夫。しかし、やがて並べ替えられたカードのようにバラバラな順序で日々が訪れているという事実に気づくのです。
この予告編は日本で制作されたもの。何パターンかの候補から選んだのではなく、制作されたひとつの予告編映像に、足したり引いたりしてブラッシュアップを行って出来上がったというこの予告編、アメリカのオリジナル版とのもっとも判りやすい違いは、オリジナル版では入っていないDAY1、DAY2という言葉が挿入されたという点。
「作品での"一週間が入れ替わり立ち替わり訪れる"という部分にスポットを当てて、シャッフル感が判るように意識して制作しました」(前出・クロックワークス宣伝)。
なるほど、DAY1、DAY2……といった挿入文字だけでなく日本版は全体的に、入り組んだ日々の混乱がはっきりと見て取れます。
原題は「Premonition」で「予兆、予感」の意。つながりのない明日を過ごした翌日に、つながりのない昨日に戻るというシャッフルされた一週間は、まるで予知夢を見るような感覚をリンダに植え付け、不穏な未来を象徴するような暗示が主人公の身に次々と降りかかります。
主演は『スピード』(1994)でキアヌ・リーブスと共演し、一躍スターダムに上り詰めたサンドラ・ブロック。不可解な現象に混乱し、精神的に不安定になるヒロインをリアルに好演していますが、それもそのはず。本作での撮影は出来る限り物語の進行と同じ順番で進められたそうで、本人も「撮影中は頭がずっと混乱していた」と語っているほど。
メガホンを取ったドイツ映画界の期待の新星メナン・ヤポ監督は、本編の中で6~7回あるヒロインがベッドで目覚めるシーンを一度にまとめて撮影せずに、あくまでもリンダの過ごす時間軸に沿って撮影。
また、リンダが不可解な出来事を体験している時にはハンディ・カメラを使ったりと、出演者のリアルな混乱を観客が疑似体験できるような撮影手段や仕掛けを随所に散りばめて、観客の共感を見事に獲得しています。
ただの斬新なサスペンス・スリラーと侮るなかれ。この作品で注目すべきは「変えたかった運命が、なんだったのか」ということ。目覚めるたびに、日々が何かの力によって並び替えられて訪れることに気づくリンダは、そこで「もしも過去に引き返すチャンスがあって、何かをやり直せるとしたら一体何をやり直したいか」という問いを、知らず知らずのうちに突きつけられているのです。この問いかけが背景にあることで、ストーリーはより深みを増して、全ての事象が意味深いものになるのです。
予告編を観て、見事に沢山の「?」が飛び交ったあなた、「変えたかった運命がなんだったのか」という疑問を胸に、劇場で答えを手に入れてください。
2009年1月31日(土)より新宿バルト9他にて全国ロードショー。
かつらの予告編★ジャッジ
内容バレバレ度 | ☆☆☆ |
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本編との共鳴度 | ☆☆☆☆☆ |
オロオロ混乱度 | ☆☆☆ |
(C)2007 Premonition Pictures,Inc.All Rights Reserved.
春錵かつら(はるにえ・かつら)
映画予告編評論家 / ライター
CMのデータ会社にて年間15,000本を超える東京キー5局で放送される全てのCMの編集業務に3年ほど携わる傍ら、映画のTVCMについてのコラムを某有名メールマガジンにて連載。2004年よりフリーライターとして映画評論や取材記事を主とした様々なテーマを執筆しながらも大手コンピュータ会社の映画コンテンツのディレクターを務めたのち、ライター業に専念、現在に至る