投資信託(以下、投信)には数多くの商品が存在しますが、ある基準に沿って大まかに分けることができます。たとえば、投資する地域や資産の種類などによる分類です。その他にも、「どのような運用スタイルを取っているか」という視点で商品を見ることも可能です。運用手法によって投資信託を分けると、どのようなタイプがあるのでしょうか。
インデックス型とアクティブ型の違いとは
<インデックス型>
投信を運用スタイルによって大別すると、まず、「インデックス型」と「アクティブ型」に分類できます。インデックス型とは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった指数(インデックス)と連動する値動きになるよう運用するものです。指数に連動させればいいため、信託報酬などの運用コストが安くなっています。
<アクティブ型>
一方、アクティブ型とは、指数を上回る運用成果を目指して運用していく投信です。運用のプロであるファンドマネージャーが、有望な資産や銘柄を選び、投信に組み入れていきます。アクティブ型は、様々な会社や市場を分析し、株価が上がりそうな銘柄を探す手間がかかっているため、インデックス型と比べて手数料が高く設定されています。
アクティブフファンドの銘柄の選び方
インデックス型とアクティブ型のうち、アクティブファンドでは、ファンドマネージャーが何らかの基準によって、組み入れるものを決めていきます。株式で運用する投信の場合は、どのような株式を入れるかでその投信がハイリスク・ハイリターンになるのか、ローリスク・ローリターンになるのかが決まります。通常、その会社の規模や成長性によって投信に入れる会社を選びます。
<会社の規模で選ぶ>
株式を発行している会社の規模で選ぶ場合、一般的に、時価総額(その会社が発行する株式数に株価をかけたもの)と流動性(売り買いのしやすさ)を基準とし、大型、中型、小型に分けられます。
- 大型株
大型株は、東証一部に上場している企業の中で、時価総額が大きく流動性の高い100銘柄を指しています。世間でよく知られた企業が含まれ、すでに事業規模や経営面で成熟期に入って安定した場合が多く、株価の変動は比較的小さい傾向にあります。一方で、後述する中小型株ほどの大きな成長は期待できないといった面も持ち合わせています。
- 中小型株
中型株は、時価総額が中規模で上位400社、小型株は、大型株や中型株に含まれない時価総額の小さな会社を指します。大型株と比べて、事業規模が小さく安定せず、市場で取引される株式数が少なく流動性が低い傾向にあります。一度注目を集めると株価が大きく動き、短期間で大きな利益につながることもありますが、逆に大きな損失を被る恐れもあります。
<会社の成長性で選ぶ>
- グロース(成長)運用
グロース運用とは、企業の成長性や収益性に着目し、すでに市場では評価され価格が高くなり始めているものの、今後さらに成長が期待できる銘柄を選んで投資する手法です。成長性が高いと見込まれていることで、PER(※1)やPBR(※2)などの指標が高くなる傾向にあります。
※1 PER 株価収益率。株価と企業の収益力(利益)を見て、株価の割安感や割高感を相対的に判断する指標の一つ。株価を一株当たり当期純利益(EPS)で割った値。
※2 PBR 株価純資産倍率。会社の持つ純資産を見て、株価の割安感や割高感を判断する指標。株価を一株当たり純資産額(BPS)で割った値。
・バリュー(割安)運用 バリュー運用とは、株式の割安度を重視する手法です。企業の業績や保有資産など基本的な価値に対して、株価が割安だと思われる会社を選びます。PERやPBRは低くなる傾向にあります。
トップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチ
ファンドマネージャーの目利きが必要なアクティブ型の投信は、銘柄を選ぶプロセスが二通りあります。一つは「トップダウン・アプローチ」、もう一つは「ボトムアップ・アプローチ」です。
トップダウン・アプローチは、名前の通り上から調査していく方法です。まずは経済情勢や金利の動向などマクロ経済の分析を行い、投資する国や地域、業種などの比率を先に決め、その比率に沿って銘柄を決めるスタイルです。
一方、ボトムアップ・アプローチは、下から調査していく方法です。ファンドマネージャーやアナリストが投資の候補になりそうな会社の業績を調査したり分析したりし、利益を上げられそうな有望な銘柄を選び、その積み重ねによって投信の中身を決めていきます。 ボトムアップ・アプローチの場合、具体的には、個別の会社の業績を見るだけではなく、会社を訪問してトップにインタビューしたり、工場や研究所の見学を行ったりして、投資先の会社を決めます。国や業種は関係なく、あくまで個々の企業の収益性や成長性を重視しますが、商品ごとに一定の基準は設け、それをクリアした企業を組み入れていきます。
投信の中身がどのように決められているのかを知ると、より興味が湧き商品に対して理解が深まるのではないでしょうか。今回ご紹介した以外にも、投信には様々な種類があります。投資の目的やご自身のスタイルを確認しながら、色々な投信に目を向けてみてください。
筆者プロフィール: 武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。