投資信託(以下、投信)は、自分の代わりに、プロに投資を任せられる金融商品です。そのため、投信には様々な手数料がかかります。長い目で見てみると、この手数料が運用の成果に大きな影響を与える恐れもありますので、甘く考えることはできません。
投信の手数料にはどのようなものがあるのか、できるだけ抑えるためにはどうすればいいのか確認してみましょう。
1.投資信託の購入にかかる「購入時手数料」
まず、投信を購入する際にかかる手数料として「購入時手数料」があります。これは、銀行や証券会社など投信を販売する会社に支払う手数料のことです。これから投信を利用していくための入会金といったイメージで、購入時手数料は販売会社の収入となります。
購入時手数料は、投信の「購入金額の〇%」といった形で支払います。投信の種類や販売会社によって異なりますが、1~3%(+消費税)が一般的です。
たとえば、投資する金額が10万円、購入時手数料が2%(2.16%)の投信を購入するなら、支払う購入時手数料は10万円×2.16%=2,160円となります。この時、購入時手数料は投資する金額とは別に支払うため、この投信を買うには10万円+2,160円=10万2,160円が必要です。
ただし、投信の中には「ノーロード」といって購入時手数料がかからないものもあります。また、同じ商品であっても、銀行や証券会社など購入する会社によって手数料が異なることがあります。たとえば、ある投信をA社で買うと購入時手数料が3.24%かかるのに、B社では無料(ノーロード)ということがあるのです。同じ商品なのであれば、なるべく購入時手数料の安いところで買いたいですよね。
どのような投信を選ぶかも大切ですが、どこで買うかによって支払う手数料に差が出てしまいますので、しっかり比較するようにしましょう。
ちなみに、購入時手数料は、銀行や証券会社の窓口よりネット証券のほうが安い傾向にあり、ノーロードもネット証券で多く販売されています。いくら購入時手数料が無料だからといって自分の望まない投信を買うのは本末転倒ですが、本当に欲しいと思う投信であれば、購入時手数料が無料や少しでも安い販売会社がないかチェックしてみましょう。
2.投資信託の保有にかかる「信託報酬」
投信にかかるもう一つの手数料が、信託報酬です。信託報酬は、運用管理費用と呼ばれることもあります。購入時手数料が入会金だとすれば、信託報酬は投信を利用するための「会費」といったところで、投信を保有している間、ずっと払い続けるものになります。
信託報酬は、投信に関わる運用会社、販売会社、信託銀行の3社にそれぞれ分割して支払われます。信託報酬は、投信の資産規模を示す「純資産総額」に一定の割合を掛けた金額が、毎日資産から差し引かれています。投信の種類や販売会社によって異なりますが、年0.5~2%(+消費税)というところが一般的です。
信託報酬は、一度だけ支払えばいい購入時手数料と違い、投信を持っている期間中は支払い続ける必要があるため、信託報酬が高いと運用成績を押し下げる要因ともなります。特に、投信を長期保有した場合には、信託報酬が与える影響は予想以上に大きくなります。信託報酬はできるだけ安いものを選びたいものです。
3.投資信託の解約時にかかる「信託財産留保額」
信託財産留保額は、投信を解約する時にかかる手数料です。投信は、様々な株式や債券に投資していますが、投信を解約してそれらを換金する際には費用がかかります。その手数料を、投信を保有する人たちが負担するのは不公平だということで、解約する人が信託財産留保額という形で支払うのです。
この留保額は、基準価額や分配金に反映されます。なお、信託財産留保額は運用会社や販売会社に支払うものはなく、高いものでも0.5%程度で消費税はかかりません。
信託財産留保額を設けるのは、信託財産留保額が無料の投信で頻繁に購入や解約を繰り返されると資金の流出入が激しくなり、安定的な運用ができなくなるため、そうしたことを防ぐ意味合いもあります。投信の保有者が不利にならないようにするためのものであると、他の手数料とは区別して考えましょう。
投信で運用を成功させるには、購入手数料と信託報酬をどれだけ抑えられるかは重要なポイントの一つとなります。欲しいと思う投信を見つけたら、手数料の比較は必ず行うようにしましょう。
筆者プロフィール: 武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。