日経平均が2万円をつけたのは振り返ってみると、わずか2分間でした。やっぱり、あれはバブルだったのでしょうか。NYのヘッジファンドたちと議論しました。

日本株市場に共生するヘッジファンドと長期マネー

結論からいうと、バブルの象徴みたいな投機家集団のヘッジファンドと、とてもバブルとはいえない長期年金マネーが、今や、日本株市場に共生しています。

5月には、このバブル的なヘッジファンドの売りと、非バブルともいえる年金など長期マネーの買いが、ガチンコでぶつかり合うことになりそうです。今年のヘッジファンドは大儲けして余裕があります。欧州中央銀行(ECB)量的緩和をはやし立て、欧州株買い、欧州国債買い、ユーロ売り、そして原油売りで連戦連勝。この余勢を駆って、日本株や中国株・インド株に攻め込む機会をうかがっています。

彼らが連勝の勢いにのると、手が付けられません。既に、ユーロを対ドルでパリティー(1ドル=1ユーロ)が視野に入るまで売り込みました。欧州の国債にも買い攻勢をかけています。

スイス国債は遂に新発債でマイナス利回りになり、次はドイツ10年債り利回りまでマイナスに転じることが予想されるほどです。発行時点から国債を買うと、利息をもらうどころか、定期的に手数料を払わねばならないのです。それでも買われるのは、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に乗りだし買ってくれるという安心感があるからです。ドイツ株も高値更新しました。

新雪と根雪の境目こそ、バブルか否かの分かれ目

世界的金融緩和が生む過剰流動性バブルの象徴ともいえるヘッジファンドのインパクトは、市場の景色を変えています。日本株に入っているのは、まだ、そのほんの一部。買い余力を十分に残します。

1-3月は欧州、4-6月は日本。そんな彼らの視線を感じるのです。但し、5-6月にかけては、ポジションを手仕舞う意図が透けて見えます。6月FOMCでの利上げサプライズ、そして、ギリシャ救済延長期限も6月に切れるので、ギリシャ・ユーロ離脱の可能性が無視できないからです。

レバレッジをかけるヘッジファンドの短期的影響力に対して、年金などの長期マネーがどこまで下げを食い止められるか。先物売り対現物買いの構図になると、短期では前者のインパクトが強く出がちです。

バブル的な買いは新雪のドカ雪に似て表層雪崩をおこしがちなもの。いっぽう、非バブルの長期マネーは根雪に例えられるでしょう。この新雪と根雪の境目こそ、バブルか否かの分かれ目といえます。日経平均で瞬間的に1万8千円程度でしょうか。

ヘッジファンドが語る下値の目途の最大公約数的水準です。 年後半に関しては、再度、日本株を買い攻勢で揺さぶる可能性があります。その時の、彼らの上値の目途は2万2千円程度と、日本の市場関係者とさほど変わらりません。

不安定な市場で上がりはじめた「原油」と「金」

なお、読みにくいのは、外為市場です。昨年は圧倒的に円売り攻勢でしたが、今年は、円買いから入る相場観も聞かれます。日本のゴールデンウイーク期間中は、彼らが相場を動かしやすい時期。いまは膠着気味ですが、117円から123円程度のレンジで、ボラティリティーが一気に高まる可能性があります。13日の欧州時間帯で、浜田内閣官房参与が「ドル円は105円が妥当」とBSフジの番組で語ったことが、外電で世界に流れ、一瞬にして1円近く円高に振れる場面がありました。既に、「予告編」的な現象が起こりつつあります。

こういう極めて不安定な市場の中で、私が注目しているのは、原油と金の価格がジワリ上げ始めたことです。株を買うのだけれど、株が下がったときにも備えて、同時に金も少しづつ貯めてゆく、という発想です。アベノミクスの成功を信じて株を買うのだけれど、失敗したときに備えて金も買うという戦術ですね。

「嵐の夜に金は輝く」と言われます。

できれば、嵐には来てほしくないですが、備えだけは普段からコツコツ考えてゆきたいものです。

著者プロフィール

●豊島逸夫
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。 三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。