この連載をお読みいただいている方は、多かれ少なかれ「お金を増やすこと」に関心があると思います。これまでは、働き続ければ収入が入り、お金を増やすことができるということで、「働くこと」について主に考えてきました。

今回のテーマは、ちょっと趣向を変えて「節約」について。すなわち「出ていくお金」を考えます。家計や支出、節約について書くメディアはたくさんあります。月収10万円台でも、お弁当を作ったり、100円ショップを活用したりして支出を抑え、数百万の貯金をしている人の例を、みなさんも雑誌などで読んだことがあるのではないでしょうか。

ただし、今回は、25歳女性にとって等身大のアドバイスではありません。これまでとは少し違う節約のやり方・考え方を、ある本に沿ってご紹介します。『節約する人に貧しい人はいない。』(幻冬舎)という本です。

『節約する人に貧しい人はいない。』(幻冬舎)と、著者の中川淳一郎さん

この本の著者は中川淳一郎さんという42歳の男性。大学卒業後、大手広告代理店を経て独立し、今は自分の会社を持っています。職業はネットニュース編集者。読者の皆さんとは年齢も性別も違いますが、参考になるところが多い本です。

中川さんは本の中で「他人と比べないこと」「見栄を張らないこと」を繰り返し説いています。なぜなら、多くの無駄遣いは見栄や嫉妬から始まるからです。

自分が得るものは、その金額に見合うか?

中川さんが例として挙げるのは「どこに住むか」。妻の意向で高級住宅地に住むことを決めた高収入のサラリーマンを例に、見栄と無駄な出費の関係を分かりやすく説いていきます。「『家』という生活の基盤の価格が上がることが他のすべてを巻き添えにして、生活水準を高めてしまうのが、高収入なのに貯金ができない人の共通点だ」(同書30ページ)。

そんな中川さんは独自の価値観を持っています。服装は3パターンのみで「暑い時」「寒い時」「快適な時」。大学生になった時から今まで20数年で、衣服代は「30万円程度」(50ページ)だそうです。

そんな極端なことはできない、と思う方もいるかもしれません。ここで大事なのは、単純に支出全般を抑えることではありません。何かにお金を使う時、自分が得るものはその金額に見合うのか?という独自の価値基準を持つことです。

例えば、JR東海道本線や湘南新宿ラインに乗るとき、中川さんはグリーン車を積極的に利用します。グリーン料金を「1分あたり14.8円」(68ページ)と計算し、これは快適さに見合う金額と考えているからです。同じように1分あたりの金額を計算すると、エコノミークラスとの差が325円になるビジネスクラス(成田・バンコク間)には、価値を見出していません。このように「他人がどう見るか」ではなく「自分にとって意味があるのか」。自分の基準を持つことが大事なのです。

本書は他にも、コース料理やポイントカードなど、著者にとっては無駄と映るものとその理由が、金額・得られる主観的価値と一緒に記されています。皆さんも、日々「当たり前」にお金を使っていることが、本当に自分にとって必要なのか見直してみませんか。

高級な鰻をたまには食べに行ってみては?

最後に、著者の中川さんから、25歳前後の女性にこんなアドバイスをいただきました。

ちょっと高級な鰻

「ブランド物のバッグやアクセサリー等を無理して購入する必要はありません。別に男はそれらを見てそそられることもありませんし、女から見ても『あのコ無理してるわね…』程度にしか思われません。

それよりも、ちょっと高級な鰻をたまには食べに行く、とか遅刻しそうな時にタクシーを使ってしまうといったことにお金をかけた方が合理的だしトクすると思いますよ。あと、若いうちは、年上におごってもらうのも私はアリだと思っています。いずれ自分が年を取った時に若者にご馳走すればその礼は返せたといえるでしょう」

本書には仕事や恋愛とお金の関係についても、著者の考え方が示されています。特に「第5章・節約と恋愛・結婚~パートナーは金銭感覚の合う人がいちばん!~」は、これから結婚を考えたい方にぜひ読んでいただきたいです。

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著者プロフィール

●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。

【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座

25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫ウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。