本連載は「25歳前後」の女性を中核読者に想定していますが、季節を鑑みて今回は女性の就職活動について書きたいと思います。

「女性が働きやすい」は本当?

この4月から施行される女性活躍推進法で、企業は自社の女性活躍度合い、つまり管理職に占める女性比率を公表したり、それを上げたりするための施策を検討しています。

多くの企業が「女性が働きやすい」ことをアピールするようになりました。法律を上回る長い育児休業や、活躍する女性社員のインタビュー記事など、企業の公式ウェブサイトには、女子学生の目に魅力的と映る情報があふれています。

これは女子学生にとって追い風に見えます。だから、あえて言いたいのは、企業が発信したい情報に惑わされないで欲しい、ということです。そこに書かれているのは事実ではあるけれど、企業にとって都合の良い情報であることが多いからです。

「制度ではなく風土」に注目する

色々な企業を取材したり、各社の制度や管理職女性比率などのデータに基づく調査をしたりしてきた経験から、本当に長く活躍したい女子学生には「制度でなく風土」に注目することを、お勧めしたいです。 というのも、ある程度の規模の企業は、業界横並びで制度をつくる傾向があるからです。つまり、良い制度が「ある」というだけでは女性が本当に活躍できるかどうか、分からないのです。

企業風土といっても、まだ働いたことがない方にはピンとこないかもしれません。例を挙げるなら、大学のテニスサークルが良いでしょう。どの大学にもテニスサークルはたくさんあり、活動はテニスとメンバーの交流です。ただ、中身をよく見ると、テニスの練習に時間を割いているところもあれば、テニスは口実で終了後の食事など親睦に力点があるところもあります。特定大学の男子学生と女子学生のみで構成されたサークルもあるでしょう。

自分の「感覚」を働かせよう

「なぜ、そのサークルを選んだの?」と聞くと、それぞれ、自分に合っていると思う理由が出てきます。会社の風土や文化もおよそ似たようなものと考えればよいでしょう。

そこで毎日8時間、10時間過ごすのが楽しそうか。厳しいけれど力がつきそうか。どうも自分は肌が合わないと感じるか。この人から学びたい、と思う先輩がいるか…。おおむね、サークルやゼミ選びの時と同じ「感覚」を働かせれば、判断できるのではないでしょうか。

私は独立するまで16年間、ある出版社で社員記者として働いていました。自分に会社勤めが合うとは思っていませんでしたが、予想以上長くいたと思います。

私にとって居心地の良さとは、仕事の割り振りが性別でなく能力や適性に基づいて行われることや、男女分け隔てなく育成してくれることであり、何より同じ職種なら男女で同じ賃金であることでした。

採用セミナーでは男性記者の話しぶりに感心して「私もあんな風になれたらいいな」と思い、面接でもそのように話して採用されました。

私が以前勤めていた会社は「女性が働きやすいこと」を謳い文句にしてはいませんでした。育児休業はきちんと取れましたが、様々な制度は法定より少し良いという程度。 それでも、現場の裁量で在宅勤務ができたり、人と違うことを思いつき提案することが奨励されたりする環境は、私にとって居心地がよかったのです。

今、独立して食べていける技能の大半を、会社員時代に身に着けた、と思っています。また、出産した後も働き続けられそう…と感じたのは今で言うイクボス(※1)の存在や、同期・後輩の女性がどんどん出産して復帰するのを見て「それが当たり前」と感じるようになったからです。

そういう経験から、男か女かではなく「個人」と「成果」を見てくれる環境を求める方が、制度に目を奪われるより、長期的なキャリア形成にプラスになる、と考えています。

後編では、そういう会社を見抜くポイントを具体的な事例と共にお伝えします。

(※1)男性従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司のこと

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著者プロフィール

●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。

【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座

25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫ウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。