『産まなくてもいいですか?』(幻冬舎、小林裕美子著)と、作者の小林裕美子さん(自画像イラスト) |
実を言うと、本書を手に取った時「私とは違う世界の話かな」と思いました。主人公のチホは31歳、結婚2年目の女性です。お料理教室に通い、夫婦で趣味を楽しんでいます。
一方の私は41歳、7歳と4歳の子どもがいて、行動は基本的には親子か家族です。色々大変なことはあるけれど、子どもってホント可愛い…と思っている今の自分と、チホとの間に共通点は少ない感じがしたのです。
ところが、読み始めてびっくり。「これ、10年前の私だ…」と思うシーンがいくつもありました(前回のリンクはこちら)。仕事を頑張ろうと思っているところも、保育園に入るのが大変だから産むのは無理かなと思っているところも。チホが婦人科検診を受けるシーンでは、自分も10年ほど前、忙しすぎて生理が2カ月来なくなり、婦人科検診に行ったことを思い出しました。
「私の役割かなと思った」
いちばん引き込まれたのは、81ページです。周囲から子どもを産め、産め、というプレッシャーをかけられるチホが、年上の女性(横山さん)と一緒にお茶を飲むシーンがあります。横山さんもチホと同じく、結婚して子どもはいません。
チホと大きく違うのは、横山さんが「子どもは産まない」と決心していること。夫婦で話して合意しています。彼女と職場のワーキングマザーのやり取りはごく自然な感じです。お互い、相手の選択を認めている様子には、ほっとします。
「産まない選択」をした横山さんは言います。「同性として母親が安心して子育てできる世の中にするのが私の役割かなと思った」と。続くセリフもご紹介したいところですが、泣けてくるのでやめておきます。みなさん、ぜひ、読んでみてください。
あなたの周りにも「横山さん」が?
振り返ってみると、私が妊娠出産し、子育てしながら仕事を続ける中で、たくさんの「横山さん」に助けてもらいました。電車の中で席を譲ってくれた知らない人たち、つわりで体調が悪い時、私がやるべき仕事を代わってくれた人たち、子どもが熱を出して会議の日程を変えてほしいと言ったとき、嫌な顔ひとつせず「大丈夫ですか?」と言ってくれた人たち。
私にとっての「横山さん」は男性、女性、両方いました。職場の人が足りない中で、大変だったと思いますが「休んでいる間、みんなで頑張って、待ってるから」と言ってくれた上司や「今は身体を大事にしてください」と言ってくれた後輩たちのことを思い出し、本当にありがとう、という気持ちになります。
みなさんは、これから、結婚するかどうか、子どもを持つかどうか、仕事をどんな風にやっていくか、たくさんの選択肢があります。自分と違う選択をした人の気持ちを想像し、一緒に暮らしやすい社会や、立場が違う人がチームを組める職場を作っていって欲しいと思います。
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著者プロフィール
●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。
【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座
25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。