前回、前々回は、新しい法律で日本の働く女性に追い風が吹いていること、チャンスをつかむために、一歩前に出ることが大事とお伝えしました。「なるほど、やってみよう」と思った方は、ぜひ今日から心がけてみて下さい。
今回は「言いたいことを言うのは、なかなか難しい」と思う女性に関するお話です。皆さんの中に、もしかしたら、こういう問題に直面している方がいるかもしれません。
WAW!から考える女性の抱える問題
8月28日、29日の2日間、日本政府主催で「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」が東京・品川で開かれました。英語では”World Assembly for Women in Tokyo”、略して「WAW!(ワウ)」と呼ばれています。
海外40カ国から、150名もの政治家、経営者、研究者など女性リーダーや女性を応援する男性リーダーが集まり、日本の有識者と議論をしました。「輝く女性」と言うと、文字通り、キラキラしたイメージだと思います。高い学歴を持ち、キャリアを築いている勝ち組といった具合にです。
ここから先が本題です。2日目の分科会には「困難を抱える女性たち」というセッションがあり、主に「シングルマザーの経済問題」や、「マタニティハラスメントの問題」を議論しました。私はこのセッションで司会をつとめまして、これは、全ての女性に関係がある……と思いました。
マタハラとシングルマザーの困難に共通するものとは
日本のシングルマザーについては、長年支援に携わってきた、しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子さんによる、こちらの記事がとても分かりやすいので参考にしてください。(http://www.nippon.com/ja/in-depth/a04603/)
この記事によると、日本のシングルマザーの数は123万世帯で1973年の2倍、平均年齢は40歳で、シングルマザーになった理由の8割は離婚です。就労率は8割を超えていますが、得られる収入は少なく、平均就労年収は181万円と低くなっています。
会議には、シングルマザー支援に関わる方が何人も出席していて、地方の場合は離婚したと言えない雰囲気があることや、都市部でも行政窓口に生活保護申請に行ったら、若い女性は水商売をすればいい、と言わんばかりの対応をされた、という事例を聞きました。
出席者の中にシングルマザーの方がいて、こんな風に話してくれたのが印象に残っています。
「シングルマザーと、マタニティハラスメントの問題はつながっています。女性は結婚したら仕事を辞めるのが当たり前という社会では、その家庭がうまくいかなくなった際、再就職するのは大変です。仕事が見つかっても、低収入ですからシングルマザーは貧困に陥ります」
確かにその通りです。NPOマタハラNet代表の小酒部さやかさんも、マタハラとシングルマザー問題には共通点があると言います。それは「自己責任で片づけられること」。
妊娠するのは自己責任。シングルマザーになるのも自己責任……。
そういう空気の中、本来なら使えるはずの制度(産休、育休、生活保護等々)を使いたいと言い出すことができず、追い込まれていく女性が、日本にはまだたくさんいます。この記事を読んで下さっている、元気に働いている皆さんにとっても、かなり身近な問題です。今から関心を持っておくと、いざという時に身を守れると思います。
著者プロフィール
●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。
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25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。