近年、女性の労働環境が劇的に改善されてきています。
そんな中、働く20代女性は今このような悩みを抱えているのです。
20代の働く女性の悩みは「先が見えない」?
つい先日、仕事仲間の女性に聞いた話です。彼女の周りにいる20代女性が「先が見えない」と悩んでいる、といいます。どういうことかと言いますと、男性が多い職場で働いていると、上司は男性か未婚の女性ばかり。自分が将来、結婚・出産した後も働き続けるイメージが持てない、というのです。
少し驚きました。このところ、企業で働く女性、特に20代の女性は急に展望が開けてきた感じがあったからです。
政府は「女性活躍推進」を重要な成長戦略として位置づけています。つい先月、8月28日には「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律」、いわゆる「女性活躍推進法」が与野党の賛成多数で可決したばかり。
法律の内容を簡単にいえば、20代女性の皆さんは、今後、企業内で出世の道が開けます。将来、皆さんが結婚・出産した際、ひとりで家事・育児を抱え込まなくてすむよう、男性の家庭参加をいっそう促すことも、法律には盛り込まれています。一定規模より大きな企業は、管理職の女性比率を公開することが義務付けられたのも、数年前には考えられなかったことです。
つまり、20代の女性が仕事と子育てを両立したいと思ったら、上の世代の女性より楽にできるような環境になるはず。あと数年で企業社会はガラガラと変わっていくので、希望を持っていいんですよ、とお伝えしたい。
お手本にすべきは「男性上司」
そうは言っても、自分の会社に総合職・専門職女性は少なくて……と心配になる方へ。ちょっと発想を変えて「お手本」を男性の中に探してみたらいかがでしょう。「あんな風になれたらいいな」と思う、カッコいい働きぶりの男性の先輩や上司はいませんか?
私が大学を卒業後に入社した出版社は、男性が多い職場でした。直属の上司や先輩はほとんど全部男性。あまり気にならなかったのは、私の性格が男っぽかったことに加え、就職セミナーで話をしてくれた男性記者が、すごくカッコよくて「あんな風になれたらいいな」と思ったためです。
カッコよかった、のは見た目のことではありません。セミナーには数千人の学生が参加していて、顔はほとんど見えませんでしたが、ニューヨーク支局での仕事について、実に楽しそうにリラックスして話す様子を見て「いいなあ、いつかあんなふうになれたらな」と思ったことを覚えています。
私が入社した1997年当時、子どもを持つ女性の上司は片手で数えるほどでした。皆、英語がペラペラで物凄く優秀で仕事が速くて「あんな風になるのはとても無理」と思ったものです。
優秀でも仕事が速くもなかった私は、目の前の仕事を必死でやって16年が過ぎました。ぼんやりした新入社員だった頃、「どんな仕事がしたいの?」と問い続けてくれたのも、皆さんと同じ26歳くらいの頃、「きみの意見は面白いね」と言ってくれたのも、30歳を過ぎた頃に、留学を勧めてくれたのも、初めて書いた本に手書きで感想を送って激励してくれたのも、すべて男性の上司でした。
そして、いつの間にか、出産後は会社に戻ってくるのが当たり前、仕事を続けるのは当たり前と思うようになったのです。その頃には、同世代の女性社員で仕事と育児を両立する人がぐんと増えました。
というわけで、みなさんはきっと大丈夫だと思います。今の仕事を面白い、と思えるくらい働いていたら、道はたぶん拓けます。し、そうでなかったら、きっと、良い転職口があると思います。労働市場はしばらく、皆さんの味方をするはず、だからです。
著者プロフィール
●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。
【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座
25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。