こんにちは、治部です。前回ご紹介した「産んでも働ける会社選び」について、読者の方からお便りをいただきました。

27歳、総合職ママのAさん。彼女の声は、20代の「優秀な女性」を代弁しているな、と思ったので、ご本人の許可を得て、お便りの内容をご紹介させていただきます。

課題は長時間労働

Aさんの勤務先はいわゆる大企業で女性社員が少ない業界です。会社は彼女に期待しており、将来、幹部候補として育成したい、と考えているようです。その期待は本人にも伝わっているようです。

「総合職でも子どもを犠牲にせずに働き続けることができる、という事例を作りたい」

この言葉から、自分がパイオニアになるんだ、お手本になるんだ、というやる気が伝わってきます。

いただいたお便りからは、今後予想される課題も見えています。

課題はやはり、長時間労働です。Aさんは出産前まで「残業や休日出勤が当たり前で、夫より帰りが遅いこともあった」と言います。辞めたいと思うことは多々あれど、頑張ってきた、というのがこれまでのAさんでした。

子育てしながら仕事をする場合、出産前のような働き方を続けることは、不可能です。私自身も経験しましたが、どれほど協力的な配偶者、どれほど信頼できるベビーシッターや家事外注先を見つけることができても(大抵の場合、それを見つけることも難しいのですが)、出産前と出産後で働き方が変わらない、ことはありえないのです。

大卒・産後女性が選ぶ3つの道とは?

大卒(大学院卒)総合職女性の多くは、育児休業復帰後にこの事実に初めて気が付き、ショックを受けます。多くの場合「こんなはずではなかった」とモヤモヤを抱えた後で、次の3つの道、どれかを選びます。

(1)あきらめて現実を受け入れ、今までより目標設定を低くして仕事を続ける (2)こんな働き方はおかしい、と会社上層部や人事に訴えて状況を変えていく (3)転職、退職、独立する

望ましいのは(2)であることは、言うまでもないでしょう。ただ、これが可能なのは、社内に仲間がいる場合です。私の友人の中で、少ないながら、こういう方向へ行っている女性は、社内で孤立しておらず、応援し、一緒に戦ってくれる仲間(必ずしも女性とは限りません)がいました。

(1)を選んだことが、周囲の目に見えて分かるようになると「ぶら下がり社員」とか、「手厚すぎる育児支援が女性のやる気をそぐ」などと会社側からは認識されてしまいます。

(3)は、広くとらえると私もその中に入るのかな、と思いますが「バリバリ働いている」と認識されていた女性が「もったいない」などと言われながら辞めていく背景に、こういうことがあります。

あきらめるのはまだ早い!

本連載の読者層である20代女性にお伝えしたいのは、(1)や(3)のようにあきらめてしまう前に、何とかして、社内で味方になってくれる人を探して、(2)の方策を探ってみてほしい、ということです。あなたに「期待している」と言ってくれる上司や人事担当者に、思い切って、本音を打ち明けてみて下さい。

「この働き方を、私は続けていくことは『しない』と思います」と。「できない」ではなくあなたの意思で「しない」、それを「選ばない」と伝えることが大事です。会社と個人はお互いに相手を選びあっている。あなたの勤め先が、本気で女性を活用したいと考えていたら、その声に真摯に耳を傾けるはずです。あきらめるのは「言ってもダメだった」と分かってからでも遅くありません。

著者プロフィール

●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。

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