「米国から逃げ出せ!(Get out of the US!)」「米国はもはやベストな選択ではない」
最近、ヘッジファンドたちと話していると、しきりに聞かれるコメントです。
具体例としては、カリスマ的存在のデビッド・アインホーン氏率いる大手ヘッジファンドのグリーンライト・キャピタルが米国株ショート(空売り)を増やしています。投資家向けレターの中で、「今年は米国企業の業績が縮む可能性が強い。米国株銘柄で売り対象は見つけやすいが、買い対象となると、限定的。あっても買いのタイミングが遅きに失する場合が多い」と述べているのです。
欧州中央銀行(ECB)量的緩和をテコに買われてきた欧州株に高値警戒感が強まり、ギリシャ不安で売られると、米国株も引きずられるという、共倒れリスクさえ意識され始めました。そこでマネーはどこに流れるのでしょうか。
足元で最も派手に上げているのが中国株ですが、なにせ、初心者個人投資家主導なので、一たび売りに走るときの集団行動パターンを考えると、やはり引いてしまいます。その点、日本株は、ROE重視・株主還元など質的向上が安心感を生んでいます。
今回のミニ調整局面でも、海外マネーはTOPIX指数中心にしっかり安値を拾っていました。日経平均2万円本格突破の推進力になったことは間違いありません。長期マネーの代表格米年金基金はTOPIX選好度がお好みです。例えば、運用規模3位のカルスターズ(カリフォルニア州教職員共済年金基金)は、昨年からCIO自身がTOPIX買いを明言するほどです。
そして、新興国株も、「米国株こう着状態が続く限り」という条件付きながら、買い直される傾向が見られます。米国出口戦略によるマネー引き揚げの悪影響を最も受けやすいセクターですが、既に売り切られ、買いの値ごろ感が生じています。
EMEという新語も最近はやり始めました。エマージング・マーケット・エコノミーの略語です。たまたま、NY連銀ダドリー総裁の20日の講演原文を読み込んでいたら(希望的ながら年内利上げあり、との見出しが市場で材料視された講演)、「EME」という単語が20回も使われていました。ちなみに、「FOMC」は12回しかありません。 。 ヘッジファンドのレベルでは、トルコ・ブラジル・韓国などの国名が、見直し対象として挙がっています。かくして、短期ホットマネーは、米欧日新興国と循環的に回遊しますが、長期米国年金マネーは、米国株の運用配分を減らし国際分散運用傾向を強めているのです。日本株が上がると、個人投資家に心理的余裕が出て、「株の儲けで金でも買ってみるか」という行動が目立っています。
著者プロフィール
●豊島逸夫
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。 三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。
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25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。