JRでは、同じ日に新幹線と在来線の特急列車を乗り継ぐと割引制度が適用される場合がある。これを「乗り継ぎ割引」という。列車に乗るたびにきっぷを買うよりも、あらかじめ一括してきっぷを買ったほうが安くなる。今回は、意外と知られていない乗り継ぎ割引制度を紹介しよう。乗車距離によっては駅弁代が浮くくらいおトクだ。

例えば、東京から飛騨の高山へ旅をする場合を想定しよう。東京から新幹線で名古屋に行き、名古屋で名古屋城などを見物したあと、その日のうちに在来線の特急「ワイドビューひだ」で高山へ。この場合にきっぷを買うパターンは次のようになる。

  • A: 出発前に東京から名古屋までの乗車券と新幹線特急券を買う。名古屋で高山までの乗車券と「ワイドビューひだ」の特急券を買う。
  • B: 出発前に東京から名古屋経由で高山までの乗車券と新幹線特急券を買う。名古屋から高山までの「ワイドビューひだ」の特急券を買う。
  • C: 出発前に東京から名古屋経由で高山までの乗車券と新幹線特急券、さらに名古屋から高山までの「ワイドビューひだ」の特急券をまとめて買う。

Aのように、乗車するたびにきっぷを買うという方法がもっともわかりやすい。しかし、前回も説明したように、この方法はもっともきっぷの値段が高くなる。総額は16,650円だ。

次に、Bの場合。前回のように東京から高山まで通しの乗車券を買い、名古屋で途中下車を利用する。そして列車に乗るたびに特急券を買う。乗車券を通算した分だけ安くなる。総額は15,810円で、840円ほどトクした。

では、Cの場合はどうか。東京から高山までの乗車券はBと同じ。新幹線特急券と在来線特急券を同時に買う。このとき、新幹線と在来線特急の乗り継ぎ割引が適用されて、在来線特急料金が半額になる。合計は14,500円になる。Bの買い方よりも1,310円も安く、Aの買い方より2,000円も安くなった。

新幹線特急券と接続する在来線の特急券は、同時に買うと安くなる

新幹線と在来線特急の乗り継ぎ割引制度

上の例のように「新幹線と在来線特急の乗り継ぎ割引制度」を利用すると、新幹線と在来線特急を乗り継ぐときに、在来線特急料金が半額になる。新幹線から在来線特急へ乗り継ぐときも、在来線特急から新幹線に乗り継ぐときも適用される。在来線特急 - 新幹線 - 在来線特急のように、新幹線が挟まる場合は、在来線特急のうち、料金が高いほうが半額になる。

ただし、この割引制度には以下のような条件がある。

  1. 新幹線から在来線特急へはその日のうちに乗り継ぐ場合のみ適用となる。ただし、在来線特急から新幹線に乗り継ぐ場合は翌日でもよい。上の例では、行きは名古屋で1泊できないけれど、帰りは名古屋で1泊できる。

  2. 乗り継ぎ割引を利用できる駅は限られている。 乗り継ぎ割引を利用できる乗換駅は、東海道新幹線は東京駅・品川駅以外の駅、山陽新幹線の全駅、東北新幹線の八戸駅、上越新幹線の越後湯沢駅・長岡駅・新潟駅、長野新幹線の長野駅だ。九州新幹線には乗り継ぎ割引がない。

上の条件だと、東海道新幹線や東北新幹線で東京駅に着いて、房総方面、中央線方面、成田エクスプレスに乗り換えるときは適用されないことになっている。ちょっとがっかりだけれど、これは乗り継ぎ割引制度が誕生した経緯に関係している。原則として、新幹線の開業前に、乗り換えなしで行けた目的地に設定された制度である。

新幹線が開通する前は、東京・大阪・上野などから各方面に直通する特急列車が設定されていた。しかし、新幹線が開通すると、並行する区間の在来線特急は廃止されてしまった。支線に乗り入れる特急を利用していた人は、分岐する駅まで新幹線に乗り、在来線特急への乗り換えを強いられる。それに加えて、新幹線料金と在来線特急の料金が加算されるため、実質的に大幅な値上げとなってしまう。乗り換えさせられる上に特急料金が値上げでは、従来の乗客は納得できない。そこで、在来線特急料金を半額にすることで、料金格差を改善し、新幹線の利用を促したというわけだ。

※注: 本稿の特急料金はすべて通常期の料金で計算している