JRのほとんどの特急列車には「指定席」と「自由席」がある。指定席は確実に座れるから安心だ。お盆や年末年始は指定席のありがたみが身にしみる。自由席は座席が保証されないぶん安さが魅力。自由席は安いという認識が広まる一方で、指定席は高いと思いこむ人も多いらしい。

しかし実際の差額は710~300円と幅がある。家族4人で出かけるとなると、1人710円の差は大きいと感じる。しかし、1人300円なら、指定席のメリットを考えると割安に感じるかもしれない。では、どうすれば自由席プラス300円で指定席を利用できるのだろうか。今回はJRの特急料金のしくみを紹介しよう。

JRの「特急券」は原則として指定席だから、「指定席特急券」という名称はない。ただし、自由席の場合は「自由席特急券」と区別して呼んでいる。また、新幹線の特急券は「新幹線特急券」「新幹線自由席特急券」と呼ぶ。在来線は距離によって段階的に特急料金を設定しており、新幹線は距離ではなく、列車種別や区間ごとに個別の特急料金を設定しているからだ。

自由席か指定席か……。繁忙期以外の差額は500円以下だ

「閑散期」の指定席は「繁忙期」より400円おトク

特急料金は「通常期」「繁忙期」「閑散期」の3つに区分されている。通常期の料金を基準とすると、繁忙期は200円増し、閑散期は200円引きとなる。例えば新宿駅から松本駅まで特急「あずさ」に乗ると、通常期の特急料金は2,820円、繁忙期は3,020円、閑散期は2,620円となる。閑散期と繁忙期では400円の差になる。別の時期に同じ特急列車に乗って「前回とは値段が違う」と疑問に思った人は、まずここで納得できるだろう。

ちなみに特急券の「通常期」「繁忙期」「閑散期」は以下のようになっている。

A JR東日本、JR西日本、JR四国、JR東海とJR各社間をまたぐ特急料金
繁忙期 3月21日~4月5日、4月28日~5月6日、7月21日~8月31日、12月25日~1月10日
閑散期 1月16日~2月末日・6月・9月・11月1日~12月20日の各期間のうち、月曜から木曜まで。ただし、祝日と祝日の前日、振り替え休日を除く
通常期 上記以外の日
(注)特急「日光」「スペーシア日光」「きぬがわ」「スペーシアきぬがわ」は繁忙期と閑散期を適用せず、年間を通して通常期で計算する
B JR北海道管内のみの特急料金(JR東日本にまたがる場合はA)
繁忙期 7月20日~8月20日、12月23日~2月末日
閑散期 4月1日~28日、5月6日~6月30日、10月1日~11月30日の各期間のうち、月曜から金曜まで。ただし、祝日と振り替え休日を除く
通常期 上記以外の日
C JR九州のみの特急料金(JR西日本にまたがる場合はA)
繁忙期 設定なし
閑散期 1月16日~2月末日、6月1日~7月19日、9月1日~30日、11月1日~12月20日
通常期 上記以外の日
(注)九州新幹線、九州新幹線と鹿児島本線の直通特急券、特急「ゆふ」展望席は閑散期を適用しない

特急の指定席を利用するなら、閑散期のほうがおトクだといえる。

自由席特急券は「繁忙期」におトク感が増す

特急券の時期の区分はかなり複雑だ。しかし、自由席特急券はシンプルで「時期に関係なく、通常期の特急料金から510円(JR九州は500円)を差し引いた料金」である。これが、時期によって指定席と自由席の価格差が異なる理由だ。その結果、繁忙期は特急料金と自由席特急料金の差が710円になり、かなりおトク感が大きくなる。ただし、繁忙期は自由席特急券を買っても座れない可能性が高い。自由席に座ろうと思ったら、特急の始発駅で、発車時刻よりずっと前から並ぶ必要があるかもしれない。

閑散期は特急料金と自由席特急料金の差が310円(JR九州は300円)と小さい。このくらいの差なら、指定席で確実に座ったほうがトクかもしれない。もっとも、閑散期の自由席も空いていだろうから、指定席でひとつの席に縛られるより、自由席で座席を移動しつつ、左右の車窓の眺めを眺めたほうがトクだという人もいる。

特急券のルールはもっと複雑だ。地域によってA特急料金とB特急料金という2ランクがあり、B特急料金は短距離、あるいはローカル路線用の割安な設定になっている。例に挙げた新宿駅 - 松本駅間はA特急料金で計算している。しかし、同じ中央本線の特急でも新宿駅 - 甲府駅間はB特急料金で計算する。また、指定席が前提の特急券にも例外がある。それは寝台券やグリーン券を伴う場合だ。寝台券やグリーン券は座席(寝台)を指定するという意味もあるから、「特急券」に指定席の意味はない。料金計算上も特急料金から510円(JR九州は500円)を差し引き、自由席特急券と同じ料金となっている。

東海道・山陽新幹線の新幹線特急券は、「のぞみ」のほうが「ひかり」「こだま」より高い。しかし、新幹線自由席特急券は「のぞみ」も「ひかり」「こだま」も同額で、「ひかり」「こだま」の料金体系が適用される。差額に注目すれば、「のぞみ」の自由席もおトク感が大きい。そのせいか、のぞみの自由席はいつも混雑している。

特急料金は、列車や区間ごとに例外規定もある。もっとも、運賃計算ソフトや乗り換え案内サイトを見れば、各種の制度を考慮した上で指定席料金を算出してくれる。また、時刻表のピンクのページには列車ごとの早見表があるから、それらを活用すれば簡単に料金を調べられる。指定席と自由席の差額は時期によって変わることに注意して、料金の安さを取るか、ふだんより割安に指定席を利用するかを検討してみよう。