「青春18きっぷ」に関する基本的な仕組みを紹介後、前回は「普通列車しかないローカル線を選ぶ」「他のフリーきっぷが無いエリアで利用する」といったおトクな使用法5種について解説してきた。後編となる今回も、残る5つのアイデアを皆さんにお話ししよう。

他の企画乗車券と組み合わせて使う

前回紹介した「使用開始駅までは青春18きっぷを使わない」の使用法に関連して、「青春18きっぷ」を使い始める駅までの移動に他の企画乗車券を使う方法もオススメだ。往復に特急や寝台列車が使えるきっぷと組み合わせると、使用開始駅までラクに移動でき、現地でも「青春18きっぷ」をたっぷり使える。

例えば、東京発なら「北陸フリーきっぷ」が便利。東京から富山・金沢・加賀温泉・和倉温泉などを巡るきっぷで、東京からの往復は新幹線や寝台列車を利用できる。価格は21,400円で、東京 - 金沢・富山の往復だけでもモトが取れるきっぷだ。寝台特急「北陸」も乗車可能で、富山着は05:34、金沢着は06:26だ。富山から東はフリーきっぷのエリア外になるため、ここから「青春18きっぷ」を使う。西は加賀温泉までがフリーエリアなので、ここから「青春18きっぷ」を使って福井・敦賀・九頭竜湖方面へ足を伸ばせる。

同様に寝台列車を使えるフリーきっぷは、東京発の「庄内フリーきっぷ」「秋田・大館フリーきっぷ」「青森・函館フリーきっぷ」、仙台・盛岡・青森発の「札幌・小樽フリーきっぷ」などがある。

タイアップきっぷを利用する

JRに接続する鉄道会社の中には、「青春18きっぷ」の利用者向けに格安のフリーきっぷを販売する会社もある。三陸鉄道の「三鉄1日とく割フリーパス」は北リアス線用900円、南リアス線用530円。これは同社の一日乗車券の約半額で、「青春18きっぷ」または「北海道 & 東日本パス」を提示したとき限定で購入できる。肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ18フリーきっぷ」も「青春18きっぷ」利用者専用で2,000円。同社の一日乗車券より800円安い。また、過去に同種の「青春18きっぷ」連動きっぷを販売した会社や、時期を合わせて普段販売しない一日乗車券を販売した会社もある。念のため、立ち寄り先付近の鉄道会社のWebサイトなどをチェックしておくとよいだろう。

路線図を携帯する

「青春18きっぷ」で旅をするなら、書店などで販売している時刻表の使い方をマスターしたほうがいい……という話が雑誌でも書籍でもよく載っている。確かに時刻表は使いこなせたほうがいい。しかし、「青春18きっぷ」の旅に出る必要条件かというと、そんなことはない。時刻表の数字の羅列と細かい文字を見て「あんなの無理だ」と旅に出ないなんて、そっちのほうがもったいない。

旅の予定を立てるなら、インターネットで提供される無料の乗り換え検索サイトを活用しよう。オススメは「るるぶ.com」の「交通・経路検索」だ。「空路・空港連絡バス」「新幹線」「寝台列車」「特急・急行(有料)」「私鉄」の選択枝があるので、これらのチェックを外せばJRの普通列車のみのルートを探せる。

「市販の時刻表を扱えたほうがいい」という理由は、乗り換え検索の目的以外にもう1つ。万が一、現地で自然災害や事故などで行き先が不通になったときに、別のルートに変更する必要があるからだ。また、列車の遅れで乗り継ぎが間に合わなかったときも善後策が必要になる。ただし、この場合も携帯サイトの時刻表検索を使えばなんとかなる。

時刻表の読み方は、「青春18きっぷ」の旅を始めて「もっといろいろなルートで旅したい」と欲が出てから身につけても遅くはない。早くマスターしたいなら、とりあえず小型版を携帯して、乗車中の列車の時刻を指で追ってみるくらいから始めてみよう。きちんと会得としたいと思うなら、オススメのサイトは「時刻表サムライがゆく!」だ。JRグループと「JR時刻表」の発行元、交通新聞社が運営するサイト「トレたび」のコーナーで、初心者にも解りやすそうだ。

時刻表は持たなくてもいいが、必ず持っていてほしいアイテムは「路線図」だ。書店で入手できるジャバラ式の鉄道路線図を携帯しよう。自分の位置と乗換駅の場所が解れば、携帯サイトで乗り換え検索するときに重宝する。

帰りはグリーン車でラクをする

「青春18きっぷ」は別途料金を支払うと、普通列車のグリーン車自由席も利用できる。普通列車のグリーン車自由席は、JR東日本の東京近郊区間のみで運行されている。東京在住、あるいはその日の日程を終えて東京で宿泊する場合は、最後の列車はグリーン車をオススメする。なぜなら、東京近郊の普通列車は他の地域と違って混雑している上に、ロングシート車が多くて疲れやすいからだ。景色の見えない夜の列車で、都会の通勤電車のような座席で長距離移動すると、いかにも貧乏旅行っぽくて悲しい気分になり、疲れを明日に引きずってしまう。グリーン車で旅の余韻に浸ろう。

ちなみに、JR東日本の普通列車のグリーン車は平日よりも休日のほうが安く、乗車後に精算するよりも、事前に駅でグリーン券を購入したほうが安い。熱海 - 東京間のグリーン料金は平日の車内精算だと1,200円、休日の駅で購入する料金は750円となる。また、グリーン券は原則として1列車1枚だが、東海道線 - 総武快速線や、横須賀線 - 湘南新宿ライン - 高崎線のように、同一進行方向に乗り継ぐ場合は1枚のグリーン券で通算できる。

損得は5回分のトータルで考える

週末など公休日しか休めない人にとっては、「青春18きっぷ」を5回も消費できない場合もあるだろう。「3回しか使わないから5回分はいらない」という気持ちも解る。そんな人のために、金券ショップでは残回数の残った「青春18きっぷ」も取引されているようだ。ただし、売るにも買うにもタイミングの見極めが必要だ。有効期限末期になると買い取りは断られるし、欲しくても在庫がなかったりする。

精神衛生上、もっとも好ましい解決策は、1回分ごとの損得ではなく、5回分トータルでトクをすれば良しとすること。1回で4,000円分トクをしたら、1回は1,000円分損をしてもいい。筆者も余った1回分は都内の仕事回りや買い物で使った。それでも4回分で名古屋と静岡を往復して1万円以上もトクをしたから納得である。余った1回分を友人にプレゼントしたこともある。これは意外と喜ばれた。使ってもいいし、使わなくても「このきっぷがあれば遠くに行けるんだな」と思うだけで楽しい気分になるらしい。

リゾートトレインやSL列車も指定席料金を払えば乗車可能。こうした列車を訪ねる度に「青春18きっぷ」最適だ

「青春18きっぷ」を「時間があってお金が少ない学生向け」や「貧乏旅行用」と考えていたら大間違い。確かに苦行のような長距離乗車も楽しいけれど、そこまでしなくてもおトクで充実した旅を満喫できる。なにより、ゆっくり走る列車に揺られると、旅人は忙しい日常から解放される。「青春18きっぷ」は、旅の価値を解る人が、時間を贅沢に使うためのきっぷだともいえるだろう。