JRのおトクきっぷ代表格である「青春18きっぷ」。1日あたり2,300円で普通列車に乗り放題。もっとも知名度の高い企画乗車券だ。しかし「価格の安さ」と「普通列車限定」という条件から、「時間がたっぷりある人のためのきっぷ」「節約旅行専用」というイメージもあるという。「のんびりと各駅停車の旅」に憧れていても、「目的地まで各駅停車で行く時間がない」「遅い列車では遠いところへ行けない」と、敬遠する人もいることだろう。しかし、他のきっぷや交通機関を組み合わせれば、使い方はグンと広がる。そこで今回は、このきっぷを使いこなすために基本的な仕組みを紹介する。次回は目からウロコが落ちそうな使い方を紹介しよう。

各駅停車で出かけよう

まずは青春18きっぷの基礎知識

まずは「青春18きっぷ」について簡単におさらいしておこう。「青春18きっぷ」はJRグループが発行する企画乗車券で、1枚で1日有効のきっぷ5回分として使える。1人で5回使ってもいいし、「2人で2回+1人で1回」といったようにグループでも使える。利用できる列車は、JR線の普通列車と宮島航路。普通列車扱いの列車代行バスも使える。普通列車とは、各駅停車、快速列車など、急行券や特急券が不要な列車である。ホームライナーは快速列車の一種だから、別途乗車整理券を購入すると乗れる。SL列車や「きらきらうえつ」などのリゾートトレインのうち、快速列車として運行される列車も指定券を購入すると乗車できる。

発売時期は学校の長期休みに合わせて、夏休みシーズン、冬休みシーズン、春休みシーズンのみ。だからといって学生専用ではなく、誰でも使用可能。ちなみに秋は、10月に「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」が販売される。「青春18きっぷ」と似ているが、価格はちょっと高めで1回あたり3,060円の3回分となる。

「青春18きっぷ」を紹介する雑誌や書籍での慣用句をここでも書いておこう。「18歳じゃなくても使えます。40歳や60歳でも大丈夫です」。ちなみに青春18きっぷという名前の由来は、高校生や大学生の青春時代に鉄道旅行に親しんでほしいという願いがあったかららしい。青春の象徴として18歳という数字がついたようだ。だからといって、このきっぷに年齢制限はない。ただし、こども料金の設定がないので、12歳以下のこどもが元を取るには、大人よりたくさん列車に乗らなくちゃいけない。前述の「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」はこども料金があるので、親子で旅をするならこの時期のほうがトクかもしれない。

「青春18きっぷ」の定番テクニック

夜行快速を活用する

青春18きっぷ期間に運行される臨時快速列車を使うと、遠くへ行ける。東京発大垣行きの「ムーンライトながら」、新宿発新潟行きの「ムーンライトえちご」、新宿発白馬行きの「ムーンライト信州」がある。「青春18きっぷ」の1回分の効力は0時から24時過ぎの最初の停車駅まで。したがって、0時から乗り始めると24時間まるごと使える。

例えば「ムーンライト信州」の場合は新宿23時59分発。「青春18きっぷ」を新宿から使うと1分で1回分を消費してしまう。しかし、0時を過ぎた最初の停車駅は立川なので、自宅の乗車駅から立川までのきっぷを別途購入し、立川から「青春18きっぷ」を使う。計算は停車駅基準なので、0時過ぎに通過する大久保までではなく、停車駅の立川まできっぷを買おう。

「青春18きっぷ」定番のムーンライト三兄弟。左から「ムーンライトながら」「ムーンライト信州」「ムーンライトえちご」

特急に乗れる区間がある

津軽海峡線の蟹田 - 木古内間は特急列車の自由席に乗れる。中小国 - 木古内間の青函トンネル区間は普通列車がないためだ。中小国は特急列車が停まらないので、隣の蟹田駅発着の特急に乗れる。ただし、この区間を越えた乗車はできないので、両駅を通過する列車は利用不可。同様に、石勝線の新夕張 - 新得も普通列車がないので特急列車の自由席に乗れる。日豊本線の宮崎から宮崎空港間は普通列車もあるが、特例として特急列車の乗車が認められている。これらの3区間は「青春18きっぷ」に限ったことではなく、普通乗車券全般の特例処置となっている。

蟹田 - 木古内ではスーパー白鳥の自由席に乗車可能

電車特定区間は終電まで有効

原則として「0時を過ぎた最初の停車駅まで有効」だ。しかし、東京、大阪の電車特定区間は終電まで有効となる。

列車本数の少ない区間は特急でワープ

別途乗車券や特急券が必要となるが、運行本数が極端に少ない区間だけ新幹線や在来線特急を使えば、全体的な日程がスムーズになる場合がある。有名なところでは日豊本線の佐伯 - 延岡間だ。普通列車が1日3往復だけ、早朝に1往復すると次は10時間以上も間隔が空いてしまう。ただし特急列車「にちりん」は、ほぼ1時間おきに走っている。乗車券+自由席特急券は2,000円だ。

片道なら141km以上、往復なら71km以上の目的地がトクになる

これは金額を計算すればわかること。1回1日2,300円で、JR本州3社の片道きっぷにすると、121km~140kmで2,210円、141km~160kmで2,520円となる。したがって141kmが損益分岐点になる。往復する場合は1回分の半額が1,150円だから、JR本州3社の片道きっぷにすると61km~70kmで1,110円、71km~80kmで1,280円で、71kmが損益分岐点だ。もっとも、この数字は途中下車しないで乗り続けた場合の話。途中下車すればその都度初乗り運賃が必要となるから、もっと短い距離でもモトが取れる。

次回からは、「青春18きっぷ」をおトクに使う10のアイデアを紹介しよう。