元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな脱税する業種は「クラブ・バー」です。
毎日、ツイッターを見ています。すると、時折、「財布を落としました。悲しい」「携帯を落としたので、見かけたら連絡をください」という投稿を見かけます。「落としたんですね、可愛そうなのでお金をあげます」「あたしiPhoneが余っているので、差し上げますね」といった返事を期待しているのでしょうか。
それとも、ただ、悲しい出来事を共有したいだけなのでしょうか。投稿する人、それぞれの理由と意図があるので、真意はわかりませんが、投稿すること自体は、あまりよろしいものではないと思います。
「財布を落とした」という投稿は、自分のミスを明らかにするものです。誰かに追求されたわけでもないのに、ミスを知らしめる必要があるのでしょうか。自分が物を落として金銭的に損をするだめな人間であることを周知して、メリットがあるのでしょうか。
ぼくだったら、大切な財布を落とす人には仕事を振るのを躊躇しています。もちろん、それだけでは判断しませんが、能力が同じ人が目の前にふたりいたら、財布を落とさない人の方を選びます。
財布を落とすことは誰にでも起こりうることです。それは仕方のないことでしょう。しかし、それをSNSで広めるのは話が異なります。落としたものはSNSで拡散したからといって見つかるものではありません。
ただ、唯一「犬が逃げました」の場合は、投稿しても良いと思います。犬は、マンパワーで探すのが一番です。みんなでリツイートしましょう。
この話をしたのは、ぼくも先日、カード入れを落としてしまったからです。一生の不覚です。まさか、自分が持ち物を落とす日が来るとは思っていませんでした。赤の他人に慰めてほしくて、ツイッターに投稿するという考えが頭を過りましたが、すぐに考えを改め、名刺入れを探すことにしました。
カード入れは、その日に立ち寄った繁華街にあるアイリッシュパブか靴屋で落としたと思いました。2日後、店舗に電話したところ、店員さんたちは親身になってくださり、電話を保留にして、数分探してくれていました。しかし、見つからない。ぼくのカード入れは何処に行ったのでしょうか。
途方に暮れたぼくは、昔、落し物を管理している警察署の会計課の人から聞いた話を思い出しました。
お店で落とした場合、電話して「ありません」と言われても諦めてはいけません。従業員同士の情報交換を信用してはいけない。3回電話してください。あなたの落し物はきっとそこにあります。
アルバイトの人が多い飲食店などは、毎日同じ顔ぶれになることが少なく、情報交換ができないことが多々あるようです。落としてから数日経っていても、勤務時間外の落とし物を把握していないことも少なくありません。それが分かっていたので、落とした日から2日後に電話しましたが、見つかりませんでした。
そこで、会計課の人の話を思い出し、10日間で、複数回電話したところ、4回目で「あります」という天使の囁きを聴くことができたのです。実は、この電話の間に、免許証を再発行し、4000円ほどの出費をしていました。金銭的な負担は少ないのですが、不要な支払いをしたことで、ぼくの心は大きく傷ついていました。そこへ「あります」です。天ほどではありませんが、2mくらいは昇る気持ちです。
しかし、出費は返ってきません。そこで、この体験をツイッターに投稿したところ、6万9千件のいいねと、複数の取材の連絡を得ることができました。取材費は、4000円を優に超え、利益を出すことができました。
「転んでも、ただでは起きない」というたとえがあります。芸人は、マイナスな容姿や出来事も、おもしろおかしく話し、芸の肥やしにします。失敗があったときに、それを使って利益を出すことができれば、すべて帳消しです。
不測の事態は誰にでも起こります。大切なのは、損失をまくれるように、その出来事をきっかけにどうやって収益を上げるかだと思います。
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