元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな資格は「ワインエキスパート」です。
新しい分野の仕事というのは、いつだって胸が踊ってしまいます。例え報酬が低くとも、勉強させていただく立場ですから喜んで受けてしまうかもしれません。たのしい仕事というのはお金と同じくらい価値があるので、その分を足りない報酬部分に割り当てるのです。
昨年、簿記の授業の講師をしませんか、と連絡をいただきました。ぼくは簿記2級を保有しています。国税局の研修中に取得しました。でも、そのことはWikipediaなどには書いてありません。簿記を持っているかいないかに関わらず依頼をしてくださったのか、はたまた、どこかで2級を持っていることを知ったのか。
また、資格を保有しているからといってと講師として教えられるかは別です。12年前に資格を取ったぼくが満足な授業をできるのでしょうか。その旨を伝えても、特に怯んだ様子はなく、条件や詳細を送ってくださいました。
どうやら、簿記以外も授業を行っている資格の学校のようです。授業は1時間4000円とのこと。時給にすると、中央線沿いのキャバ嬢くらいはいただけます。ぼくは、塾講師の仕事などはしたことがありませんが、授業以外の準備が大変で、その時間は賃金が発生しないと知っていました。そうすると、実質賃金は2000円くらいでしょうか。
通常の講演会と比べると圧倒的に低い金額です。でも、簿記の授業なので会うことにしました。ぼくが授業をすることが単純に面白いと思ったのです。講演会とは全く異なる新しい体験です。
面談の日程を聞かれたので、3日ほど提案しました。すると、すぐに返事があり、翌週の水曜日に会うことになりました。ここまで話が進んでいるのに決まっていないのは珍しいのですが、面談の場所をまだ提案されていません。こちらから、「場所はこちらのオフィスでよろしいでしょうか」と確認します。すると、一両日中に返事があったメールがぱたっとなくなってしまいました。
面談の予定日を過ぎても連絡はありません。こちらからは連絡せず様子を見ていると、翌週に「予定が合わず、再度調整させてください」とメールがありました。それから半年間、連絡がありません。
通常、講師をやりたいと求人に応募してきた人は、その学校に出向くでしょう。どんなアルバイトでも一緒です。ぼくの場合は、自身はフリーランスで、「働きませんか?」と連絡をもらったわけです。相手がどの程度本気かどうか判断できません。冷やかしかもしれない。そうすると、こちらから出向くというコストは可能であれば払いたくない。
向こうからすれば、自分たちが出向くことはないのでしょう。応募してきた人を呼びつけて、面接をして、テストなどを受けさせて、合否を判定する。典型的な買い手市場です。落としても、それが普通なので心が傷まない。呼びつけることも当然で、相手のコストに思いを馳せることはないでしょう。
ぼくのことも、ちょっと呼び出して話を聞いてみよう、と考えたのかもしれません。ぼくとしては、約の予定がない方と会うほど時間に余裕がないので、軽率に呼んで欲しくはないわけです。フリーランスは、女性が稀におっしゃる“都合の良い女”ではないのです。結婚してくれない異性のところに、ほいほい行きません。
今回は「こっちは行かないけど、そっちが来るならいいよ」と言ったら、「じゃあ、いいや」と振られてしまいました。深入りせずに良かった、行かなくて良かったと思います。あたしとのことは遊びだったのです。
もうずっと連絡はありません。きっと他に女ができたのよ、結婚したかもしれないわ、優しかったのは最初だけじゃない、あたしもっと良い人見つけて幸せになるんだから。さんきゅうは、マウスを濡らしながら、彼との思い出のメールを削除したのでした。
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